RA
RA Japan
RA
Global
Local
Music
Interact
フォーラム 最新
Search RA
Machine love: Marc Houle
Machine love: Marc Houle

Items & Thingsのボスがお気に入りのシンセサイザー5台について語る。

「女の子を好きになった過程に似ているね。女の子のことは小さい時はそんなに気にしない。でもある時からそれだけを考えるようになるだろ」シンセサイザーについて興味を持ち始めた経緯について訊ねられたMarc Houleはこう答えたが、自分が最初に好きになったシンセサイザーがRoland JX-3Pだったことははっきりと記憶している。Depeche Mode、PiL、New Orderなどエレクトロニックなテイストを持つバンドが好きだったMarcだが、生まれ育ったカナダのウィンザーの隣に位置するデトロイトから届くサウンド(特にWJLBで流れていたJeff MillsのThe Wizard名義でのセット)も彼の音楽性趣向に大きな影響を与えていた。つまりMarcは、若い頃からシンセサイザーの可能性に興味を持つ環境に置かれていたのだ。

Marcのシンセサイザーへの興味はその後M_nusにおけるミニマルハウス、テクノへの制作へとシフトしている。00年代を通じて所属したM_nusでは2006年のヒット“Bay of Figs”などを含む4枚のアルバムと数々のシングルを発表。自らのキャリアを築いていった。そして近年になって長年の友人であるMagda、Troy Pierceと独立。3人の共同運営という形でニューレーベルItems & Thingsを立ち上げた。このレーベルから今年初めに発売された本人5枚目のアルバム『Undercover』は、80年台のシンセポップとニューウェーブの影響がはっきりと聴き取れる。彼の作品は徐々にダンスフロア直結型の音楽からは離れつつあるが、過去から一貫して作品の中にはハードウェアシンセサイザーの鼓動が脈打っている。ベルリンのスタジオには数多くのシンセサイザーが置かれているが、今回は、その中からお気に入りの5台について語ってもらうことにした。





まずはJuno-60ですね。入手した経緯を覚えていますか?

確か何かと交換して手に入れたんだ。当時は友人が持っていたJuno-106を凄く良いシンセだなと思っていたんだけど、Juno-60を手に入れて最初に鳴らした時、「ワォ、これは(106より)20倍はいいぞ!」って思ったよね。Juno-106よりシンプルで、サウンドの変化の幅も狭いけれど、サウンド自体が凄く柔らかいし、個性があると思った。初めてプレイした時は鳥肌が立ったよ。僕はニューウェーブ、それにデトロイトやシカゴが好きだったんだけど、ニューウェーブ向きの美しいパッドや、デトロイトやシカゴ向きの素晴らしいベースラインも鳴らせた。ベースラインなんかは簡単に作れた。一瞬で納得のいくサウンドが生み出せるシンセだったんだ。僕にとっては完ぺきなシンセだったよ。

自分でサウンドをプログラミングしていましたか? それともプリセットを使っていました?

Juno-60のサウンドはそんなに変化させることができないんだ。いじれるパラメーターの数は30から35程度しかないから、すぐに自分のサウンドを作れた。だから初心者用としては完ぺきなシンセだったね。凄く柔らかくてリッチなサウンドが生み出せる。

長年に渡って使い続けているのでしょうか?

アルバムの制作だろうと、ただのトラックの制作だろうと、いつもJuno-60に立ち返って、色々サウンドを足してみるんだ。もう何十年も経っているけれど、使わずにはいられない機材だね。今でも惚れ込んでいるよ。



「僕は本当に中域が嫌いなんだ」




どうしてそんなに好きなのか考えたことはありますか?

あるよ。まずコーラスが素晴らしいんだ。すべてのサウンドが綺麗にワイドに、そして個性的に鳴るんだ。例えばパッドをプレイすれば凄く豊かに響く。中域の音は芯が強くないんだけど、僕はそこが気に入っているんだ。僕は中域が嫌いだからね。このシンセは素晴らしい低域と、独特の高域で、それが組み合わさっている感じが好きなんだ。僕の好きな音楽のエッセンスがこのシンセに全て詰まっているようなものだね。

中域を削るというのは、あなたにとってのテーマのようなものでしょうか?

そうだね。僕はいつもできる限り中域を削る。トラックを整える時は中域を削るし、ギターを弾く時もアンプの中域は下げる。ドラムだって中域が鳴る感じではなくて、全体的におとなしい感じになる。僕は本当に中域が嫌いなんだ。Black Sabbathのようなメタルだろうと、Smashing Pumpkinsのようなロックだろうと、初期Depeche Modeのようなニューウェーブだろうと、僕の好きな音楽は、とにかく中域がないんだ。面白いよね。

Juno-60が明確に使われているトラックを教えてもらえますか?

全部だね。色々シンセを買っているのに、結局これを今でも使い続けているのは変な話だよ。この前リリースしたアルバム(Undercover)には“Juno 6660”というタイトルのトラックが収録されているけれど、このトラックはシンセ1台でトラックを作るという実験の一貫だった。でもアルバムを準備している時に一番気に入ったトラックだったから、そのまま収録することにした。僕がこのシンセをどの位好きかをこのトラックが物語っているよね。

コンセプチャルという言葉を使うのには抵抗がありますが、音楽制作でそういったルールのようなものを設ける時はよくありますか?

ああ。音楽制作は凄く面白い。ゲームのようなものさ。だから僕はスタジオに入って、「よし曲を作るぞ!」なんて考えることはない。その代わりに、「10台のシンセサイザーで同時に同じアルペジエーターを鳴らしたらどうなるんだろう?」とか、「8/9拍子でトラックを作ったらどうなるんだろう」みたいに考えるんだ。そう考えた方が楽しいんだ。

スタジオでは常にそのような「楽しさ」を失わないように努力してきたのでしょうか?

そうだね。20代の頃はグラフィックデザインにも興味があって、インターネットが無かった頃は図書館に行って、自分のハンドスキャナーでフォントをスキャンして色々なフォントを集めていた。その後プロのグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートさせたんだけど、会社勤めをするようになって「楽しさ」を失っていった。だから最終的にその道は諦めて、音楽だけをやることにしたんだ。でも、他人のために音楽を作ることなんてできないってことに気が付いた。「楽しさ」が徐々に失われていくことになるからね。だから僕は自分のためだけに音楽を作って、ゲームのような「楽しさ」をキープしようとしたんだ。僕の身に一番起きて欲しくないことは、音楽への興味を失うことだよ。





Korg Mono/Polyに話を移しましょう。入手した時のことを覚えていますか?

90年台半ばにデジタルの機材のサウンドに飽きて、そういう機材を全て手放そうとしたんだ。その流れでいくつか売って、その代わりにMono/Polyを手に入れた。これもJuno-60と同様、鳴らすまではどんなサウンドなのか知らなかった機材のひとつだね。当時は例えば質屋でシンセを手に入れても、周りの友人が誰も知らなかったり、一度も触ったことがなかったり、試せるような場所がなかったり、ましてやインターネットで調べたりすることができないなんて普通の話だった。だから「これは見た目がいいな、多分サウンドも良いんだろう」みたいな感じで手に入れたんだ。だから最初にプレイする時はいつも凄く楽しみだったよ。

Mono/Polyにはすぐに慣れましたか?

そうだね。殆どのシンセは似たようなものだからね。フィルターやエンベロープのセクションは似たような見た目だし、ADSRなんかは全てのシンセに付いているから理解できる。でも各シンセには独特の機能も付いていて、Mono/Polyには特殊なX-Modという機能とエフェクト用のボタンが付いていた。だからどういうシステムなのか理解するのに半年位かかったよ。

X-Modとは何ですか?

僕にも上手く説明できないんだ。クロスモジュレーションだと思う。これを使うと… とにかくサウンドが鳴る。でも長年いじってきたお陰で、今はMono/Polyを立ち上げれば、すぐに自分の欲しいサウンドが生み出せるよ。

Mono/Polyを気に入った理由は何でしょう?

Juno-60はベースラインとパッドに向いているけれど、Mono/Polyはリードに向いていると思う。Minimoogに凄く近いサウンドで、凄く細いサウンドを鳴らせる反面、太いサウンドも鳴らせる。自分の望んだ周波数帯のサウンドが生み出せるんだ。古いシンセだけど、新鮮でモダンなサウンドだしね。本当に素晴らしいと思うよ。





ARP2600についてはどうでしょう?

手に入れたときは、全然動かなかった。どこかのノブを動かしたら変なサウンドが鳴り始めるような感じだったよ。でも、何回か修理したら、徐々にまともに動くようになって、ナイスなサウンドが鳴るようになってきたんだ。素晴らしいシンセだし、音楽史上、Minimoogの次に重要なシンセと言えるだろうね。

MinimoogとARP2600は発売当時ライバル同士でしたが、MinimoogではなくARPを選んだのには特別な理由があったのでしょうか?

Minimoogを聴いたことがある人ならば分かると思うけれど、凄く太くて丸いサウンドだから、トラックの大部分を占領してしまう。僕はそれがあまり好きじゃないんだ。上手く言えないけれどちょっとやり過ぎな感じに思えるんだよ。Minimoogは素晴らしいベースサウンドを生み出せるけれど、リードにはちょっと強力過ぎる。Emerson Lake and Palmerの“Lucky Man”のキーボードソロみたいな感じはちょっとキツいよね。その点、ARP 2600はもっとコントロール出来るんだ。波形は4種類もあって、素晴らしいサイン波が備わっているから本当に深くて柔らかいサウンドが生み出せる一方、ノコギリ波を使ったアグレッシブなサウンドも生み出せるし、矩形波を使えば1976年のPong(世界初のTVゲーム)のようなサウンドも生み出せる。あとはセミモジュラーシンセだから、ちょっと変わった接続をすれば、奇妙なサウンドも生み出せるんだ。

モジュラーシンセはあまり気に入らなかったのでしょうか?

好きになりたかったんだけど、僕にはちょっと荷が重い。色々なモジュラーを買って、自分のシステムを組み上げるのを楽しんでいる人も確かにいるけれど、僕はスタジオに入った時にどのシンセがどんなサウンドを生み出せるのか理解できている方が好きだね。何か欲しい音があれば、例えばDX7をいじって試せばいいわけだし。モジュラーシステムは、プレイすると、しばらくのめり込んでしまう。素晴らしいと思うけれど、僕はもっと瞬間的にサウンドを手に入れたいんだ。



「(ARPは)古い車のようなものだよ。
乗るには修理が付き物ってわけさ」




ARPのメンテナンスには長年悩まされている感じでしょうか?

当然だね。いつもさ。常にどこかが調子悪い。古い車のようなものだよ。乗るには修理が付き物ってわけさ。

古い機材を使っていて、フラストレーションが爆発したような時はありましたか? 「新しい機材に変えてやる!」なんて思ったことは?

数週間ぶりにスタジオに帰って、トラックを作ろうと思った時があったんだ。TR-808を立ち上げたら、ビーッという音がしてね。直そうと思ってオンオフを繰り返していたら、今度はとんでもないサウンドが鳴り始めた。本当にがっかりしたよ。それで頭に来たから、本体を叩いたら、また動くようになった。Mono/Polyでもそういうことがあったよ。でも、こういう古い機材のアクシデントから生まれるグリッチーなサウンドは、トラックで使う時が結構多いよ。2度と生み出せないサウンドだからね。まぁでも、そういうアクシデントはウェルカムだけれど、大抵の場合はフラストレーションが溜まるだけだね。だから、誰かに今度機材を買おうと思っているから、どのシンセを買えばいいか教えてくれって今訊かれたら、「何も買っちゃダメだ。VSTとラップトップでやった方がいい。その方が幸せだよ」って返すだろうな。





SH-101はどこが気に入っているのでしょう?

SH-101は優れた万能型シンセだね。僕は安価で購入したけれど、本当に色々なことが出来る。初心者にとっては必要な全てが揃っているシンセと言えるね。素晴らしいよ。

他の機材より優れていると思える部分はありますか?

ライブ用のシンセとして持ち運んで、ベースとして使えるシンセだし、あとはシンセサイザーとしてはもちろん、ドラムやノイズも生み出せるシンセだ。本当に望みどおりのサウンドが生み出せるよ。ライブでキックを鳴らしている時にこのシンセを入れれば、テクノショーの始まりさ。適当に3つ鍵盤を叩けば、クールなベースラインが生み出せる。インスタントデトロイト/シカゴサウンドってところだね。

ツアーに自分のスタジオ機材を持ち運ぶことについてはどう考えていますか?

毎年持ち運ぼうとしているんだけれど、やっぱり不可能なんだ。というのは、大抵の場合は小さなDJブースの中でプレイすることになるし、セットアップまで5分しかないような時間的な制約がある中で、自分1人でサウンドを生み出すように準備するのはちょっと無理がある。ライブの時は、ラップトップとサウンドカード、それにコントローラーだけで、アナログ機材は使わない。確かにアナログ機材を持ち込めばサウンドが良くなるし、スタジオと同じように太く柔らかいサウンドが出せるから、常にそうしようとチャレンジはするけれど不可能だね。僕が必要なサウンドを完ぺきに表現してくれるような携行性に優れた機材にはまだ出会っていないんだ。いつの日かそういう機材に出会って、ライブが出来ればいいなと願っているよ。

今、自分のシンセのスキルはどのレベルにあると感じていますか? ライブでシンセを自分の思い通りにプレイする自信がありますか?

僕の作る音楽は、スタジオでライブしながら生み出したものなんだよ。僕の音楽は凄くシンプルで、Blue Oyster Cultのような複雑な音楽をやっているわけじゃない。彼らのようなレベルにはいないけれど、音楽をプレイすることはできると思う。僕の頭に思いついた物はプレイで再現できるよ。





DX7について教えてください。入手する前はどういう印象を持っていましたか?

酷いシンセだと思っていた。DX7は大嫌いだったよ。80年代前半のふざけたデジタルポップや出来の悪いR&B、くだらないメタル、全ての音楽に使われていた。とにかく最悪のシンセだった。ラジオでかかる全ての曲にDX7が使われていたね。確かにそれだけ革命的ではあったけれど、いかんせん使い過ぎだった。僕は4年前にこのシンセを手に入れた。その理由は、このシンセはある意味僕の人生の一部だと思えたからなんだ。嫌いである反面、ある意味好きでもあるということさ。1985年頃のPrinceサウンドというか、安いデジタル音はちょっと面白いね。

中域が強調されているシンセでもあります。

そうだね。DX7は僕の持っている他のシンセでは出せない周波数帯のサウンドが生み出せる。どのトラックでもDX7を使うと、そのサウンドが前面に出てくるんだ。凄く存在感があるんだよね。だから酷いサウンドを使わないようにすれば、本当に面白いシンセになり得るんだ。DX7は長年シーンに存在していたから、かなりの数のパッチが出回っているし、それを使っているよ。デジタルパッチは簡単に手に入るからね。

自分でプログラムしようと思ったことはありませんか?

ないね。ちょっと難しくて理解できない。勿論、AからBに入って、それからFに入って分岐して…といったダイアグラムの最初の部分は理解できる。でもそこまで使い込むわけじゃないから、理解する必要がないと思っているんだ。可愛がっている他のシンセとはちょっと違う。他のシンセは僕にとって友人みたいな存在だけど、DX7は、ベタな面白いサウンドが生み出せるからクールだと思っているシンセというだけなんだ。

DX7のようなシンセを他にも使った時がありますか?

勿論。DX7が上手くハマらない時は他のデジタルシンセがその代わりを務めるんだ。Kawai K3m、K4、K1などのKシリーズや、Yamaha DX100だね。DX100はTB-303を除けば、デトロイトサウンドに最も深く関わっているシンセだと思う。デトロイトなスタブやベースが入っているし、元々のサウンドが凄くデトロイトっぽいんだ。だからDX100を買って、プリセットを使うだけで、「このサウンド知っているぞ。デトロイトのトラックだ!」って思うだろうね。

ソフトシンセは使いますか?

ソフトシンセはコンピューターと一緒に持ち歩ける点が気に入っているよ。例えば自宅でアイディアをすぐに録音したいと思った時に、コンピューターを立ち上げるだけでさっとノートを入力できる。その後、スタジオでハードウェアのシンセに振り分けるんだ。だからソフトシンセはスタジオのシンセとは違って愛情を注いでいる感じはないね。スタジオのシンセは僕の友人みたいな存在だ。何年も一緒にいるし、そのキャラクターを理解しているからね。

Words / Ryan Keeling
Translation / Tokuto Denda
Published / Tuesday, 23 October 2012


Share this article



Features















Other features
Genius of Timeを擁するドリーミーでメロディたっぷりのスウェーデン発の注目レーベル
Genius of Timeを擁するドリーミーでメロディたっぷりのスウェーデン発の注目レーベル
11月に開催が迫るelectraglideへの出演を前に、トップDJ/プロデューサーであるAmon TobinのISAMツアー最終目的地LAで、RAが本人と行動を共にした。
11月に開催が迫るelectraglideへの出演を前に、トップDJ/プロデューサーであるAmon TobinのISAMツアー最終目的地LAで、RAが本人と行動を共にした。
DJが選ぶフェイバリットDJ、今回はUK篇
DJが選ぶフェイバリットDJ、今回はUK篇



RAについて  
スタッフ  
モバイル (beta)  
イベント投稿  
Copyright © 2013 Resident Advisor Ltd.
All rights reserved. 利用規約 & プライバシー.