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RA Roundtable: Clone, Delsin, Rush Hour
RA Roundtable: Clone, Delsin, Rush Hour

オランダを代表する3レーベルが、ADEやレコードビジネスの将来について語る。

オランダはアンダーグラウンド、オーバーグラウンド問わず、ダンスミュージックのマーケットにおいて大きな位置を占めてきた。そして、アンダーグラウンドのシーンですぐに頭に思い浮かぶのは、CloneDelsinRush Hourというレーベル名だろう。彼らのリリースした優れた作品群はわざわざ説明する必要がなく(3レーベル共にRAの昨年度のトップレーベル20に入っている)CloneとRush Hourについては長年に渡りディストリビューションも行っている。

この3レーベルが一堂に会するのはかなりレアな機会だが、彼らは今回のAmsterdam Dance Event(ADE)の一環として、Trouwで大規模なショーケースを開催する。これを踏まえ、我々はRAの新企画RoundtableとしてSerge Verschuur(Clone)、Marsel van der Wielen(Delsin)、そしてChristiaan Macdonald(Rush Hour)を招き、各レーベル、ADE、そしてレコードビジネスの将来について語ってもらった。



From left to right: Serge Verschuur, Clone; Marsel van der Wielen, Delsin; Christiaan Macdonald, Rush Hour


レコード業界は4~5年前のかなり不安定だった時に比べ、今は落ち着いたと感じているのですが、あなたたちもそう感じていますか?

Christiaan Macdonald: 数年前に数多くの人達が消えた。そして、残った人たちはこの業界を良く知っている人達なんだ。だから状況が少しマシに見えるのかも知れない。

Marsel van der Wielen: そうだね。別に良くも悪くもなっていないよ。業界を知っている人が残り、知らない人達がいなくなったという訳さ。

Serge Verschuur: そうだね。今のトレンドは、アーティストが自分たちでレーベルをスタートして、中間マージンをカットし始めている。個人的にはこの傾向が強くなっていると思う。今レーベルをスタートさせている人達は他に仕事を持ちながら趣味でやっているのかも。

あなたたちのレーベルは、アーティストのために存在するレーベルであり、人々がリリースできたらと希望するレーベルです。趣味としてレーベルを始める人たちがいる中で、あなたたちのような大きなレーベルは残っています。

Christiaan Macdonald: ああ、アーティストの中には全部自分でやりたいタイプがいる一方、自分ではわからないことや、自分がやりたいことをレーベルの助けを借りて実現するタイプもいるからね。僕たち3人のレーベルは継続的に成長を続けてきたし、自分たちの立場をよく理解していると思う。だから、僕たちはアーティストをマーケットに送り出す助けができるんだ。





Sergeはどう思いますか?

Serge Verschuur: Christianの意見にある意味賛成だね。レーベルが仕事をしてあげれば、アーティストにはプラスになると思う。でも今はハイプが簡単に生み出せてしまう。その意味ではもう大きなレーベルは必要ないんだ。優れたアーティストであれば、自分たちの力で何とかすることができるというわけさ。ただ、少し難解な音楽や、ダンスフロア向けではない音楽をやっているという場合は、CloneやDelsinでアルバムをリリースするのが助けになるかも知れないね。

アルバムのリリースは多いですか?

Serge Verschuur: いや。

それは意図的なものでしょうか?

Serge Verschuur: いや、自然な流れだよ。僕はアルバムの制作があまり好きじゃなかったから、数年前にレーベルの構造を変えた時に、もうやらないことにした。ディストリビューターとのやりとりやマーケティング、プロモーションなんかがどうも楽しめなくて。でもアルバム制作をやめて2年経ったけど、今はまたその方向に少しずつ戻っていると言えるね。Legoweltのアルバムが控えているし、他にも数枚予定がある。アルバム制作の面倒な部分を忘れてしまったというか。子供のようなものだね。1年経てば子育ての辛さを忘れて、また作りたくなるだろ。

アルバム制作は辛いものですか、Marsel?

Marsel van der Wielen: 僕の意見は逆だね。僕は大きなプロジェクトが好きなんだ。Rush Hourが僕のディストリビューターだから、僕はアルバムのディストリビューションやお客とのやりとりに関わっていないし。シングルの場合は内容の良いシングルと良いディストリビューターがいれば大丈夫だけど、アルバムの場合はもっと多くの仕事をこなさなければならない。でも、僕はそこが好きなんだ。大きなチャレンジだからね。

Serge Verschuur: 言わせてもらえれば、マーケティングや数カ月前からのプランニング、インタビューなんかが、まさに僕がアルバム制作で嫌だと思う部分なんだ。アーティストにとっては、しっかりとしたプロフィールが作れるし、ギグも取れるから良いと思うけれど、僕がレーベルを始めた目的はアルバム制作じゃないからね。僕がレーベルを始めたのは、人に聴かせるべき音楽をリリースするのが楽しいからだ。この先2枚のアルバムが控えているけれど、僕はシングルのリリースと同じスタンスで関わっている。みんなには、「アルバムのリリースを復活させるし、色々なプロジェクトもこなすけれど、プロモーションを4、5カ月前から始めるのは嫌だ」と伝えた。音楽の内容について時間をかけて話し合って、入るべき曲を入れて、アートワークを決めて、しっかりとマスタリングをしてアルバムを作るだけさ。プロモーションもするけれど、通常の12インチと変わらないスタンスでやるだろうね。

Christiaan Macdonald: じゃあリリースに先駆けてのプロモーションはどうでもいいって思っているの?

Serge Verschuur: そういうことになるかな。僕はどうでもいいと思っている。アルバムを作る時はそれがいつも悩みの種なんだ。(プロモーションなどは)やった方がいいのは知っているし、やるならきちんとやるべきだということも知っている。でも、僕は音楽そのものにもっと力を注ぎたいんだ。今のご時世じゃあまり売れないかも知れないけれど、それでも時間をかけて売れるアルバムをリリースしようとしている。2ヵ月じゃ結果が出ないけれど、10年のスパンでみるようなアルバムをね。まぁ、どうなるかはわからない。僕のレーベルはアルバム向きのレーベルではないから。僕自身アルバムを買う人じゃないし。僕はDJだし、シングルを買う。僕が音楽を買うということは、曲を買うということなんだ。だからフルアルバムを買うのは稀だよ。特にエレクトロニックミュージックではね。



「オランダのマーケットだけに頼っていたら、
多分僕たち3人のレーベルは
どれも生き残っていなかっただろう」




オランダのメディアについて話を伺いたかったのですが、ダンスミュージックのメディアとしては何がありますか?

Marsel van der Wielen: 『DJ Broadcast』という雑誌があって、これが多分ダンスミュージックでは一番規模が大きいものだろうね。オランダには公営のラジオ局もあって、かなりの聴取者がいるけれど、これは基本的にはドメスティックな番組だ。ただ、オランダ人は全員が英語を話せるし、住んでいるのは小さな国だから、ある意味世界に目を向けている人達と言えるよね。誰もがRAやFactを読んでいる。ファンはTwitterやFacebookもやっているし。

オランダ人はインターナショナルなマインドを持っているということなのでしょうか?

Marsel van der Wielen: 僕たち3人のレーベルはどれもインターナショナルだと思うよ。

Christiaan Macdonald: オランダの歴史を見ればわかると思う。オランダは輸出入が中心となっている国だ。凄く小さな国だけど、オランダの経済レベルで何かをやろうとするならば、大きなスケールでやらなければならない。この国の経済はかなりスケールが大きいからね。僕たちの世界のやり方も同じなんだ。僕たちはインターナショナルにA&Rや販売をしている。僕たちがただオランダ国内のマーケットに頼っていたら、多分全員生き残れていなかっただろうね。

Marsel van der Wielen: 僕たち3人がまだ活動できているのは、ローカルを気にしていないからだと思う。僕たちと同時期、つまり90年代中頃に立ち上がったレーベルの多くは、ローカルのクラブシーンだけをターゲットにしていた。これが大きな間違いだったんだ。クラブシーンはレーベルよりも早い周期で変化していたからね。

Christiaan Macdonald: その通り。それでもオランダはクラブシーンという意味では大きなマーケットがある国だと思う。この国では色々起こっている。例えばロッテルダムには今かなりの数のパーティーがあって、若い世代が育っている。メディアについても、長年に渡って存在していたメディアについて語ることができる一方、今は数多くのブログが立ち上がっている。25歳以下の若者はそういうメディアをチェックしているし、音楽もその中で大きな位置を占めている。今はファッションやライフスタイルも込みになっているというか、先に挙げたような音楽メディアだけではないんだよね。

Serge Verschuur: そうだね。でもローカルシーンについて言うと、例えばロッテルダムは絶え間なく変化している。今は多くの若者がレコードを買ったり、僕たちがプレイするパーティーに遊びに来たりするようになっているけれど、5年前のローカルシーンは寂しい状況だった。みんな子育てをしたり、家を買ったり、IT関係の仕事に就いたりしてね。





ロッテルダムが盛り上がってきているという話では、少し前にPerronがオープンしましたね。他にはTofflerもあります。あなたもロッテルダムが盛り上がってきていると感じていますか?

Serge Verschuur: 良い内容のクラブは今君が言った2つだけだけどね。僕たちはレーベルナイトをPerronで開催して、今度Tofflerでも何かやろうと話している。ビッグネームを呼ぶことも当然大事だけれど、僕はローカルで小さなパーティーをやっているオーガナイザーと一緒に仕事をすることにより多くの力を注いでいるんだ。Tofflerの雰囲気は面白い。オーガナイザーはアートスクールの学生や、自分たちでレーベルをやっている友人同士なんだ。Perronも良くやっているけれど、客が入るのはMarcel DettmanやJoy Orbisonのようなアーティストが出る夜だけなんだよ。

あなたたちはアムステルダムのTrouwでパーティーを開催しますが、同じように成功させるためにビッグネームを出演させなければならないのでしょうか?

Christiaan Macdonald: 僕たちは長年パーティーをやっているけれど、常に音楽的な視点を大事にしている。ただし、僕たちは歳を重ねてきているし、もうシーンの中で最高のプロモーターという立場ではない。だからビッグネームを連れてくることが大きな助けになるのは確かだ。でもAmsterdam Dance Eventでのイベントについては、意図的にビッグネームを外して、自分たちのアーティストを選んだよ。

多数のアーティストが出演するようですが、いつもこういう形で開催するのですか?それともADEだけのスペシャルなラインアップなのでしょうか?

Marsel van der Wielen: 今回はTrouwと一緒に企画した1回限りのスペシャルなイベントなんだ。ショーケースみたいなものだね。全員が1時間ずつプレイする。だから海外のメディアやお客さんにレーベル全体をさっと見てもらうような感じだね。





ADEはあなたたちにとってどのような位置づけなのでしょう?ビジネス面で大事と考えているのでしょうか?友人や仲間に会う場所なのでしょうか?もしくは全くそんなことは考えていないのですか?

Marsel van der Wielen: 正直に言うと、僕は何も気にしていないんだ。ADEは僕の中ではプログレッシブトランスのパーティーとして始まったものだからね。参加するのは楽しいけれど、ビジネス面としてはあまり意味がない。いい宣伝にはなるかもしれないけれど…。

Serge Verschuur: Marselと同意見だよ。ADEがスタートした時、僕は別に何とも思わなかった。良いイベントだとは思うけれど、僕たちはそこに頼っているわけじゃない。ADEで注目を集めるアーティストは、コマーシャルなダンスミュージックやトランスのアーティストたちだしね。

ADEの開催中はロッテルダムのあなたのショップにも多くのお客さんが訪れるのでしょうか?アムステルダムからは多少離れていますが、お客さんが訪れることはありますか?

Serge Verschuur: いやいや。結局はアムステルダムのイベントだからね。僕たちはロッテルダム。確かに遠くはないけれど、アムステルダムに住んでいる人たちに最後にロッテルダムに行ったのはいつか訊いてごらんよ。例えばChrisなんか…。

Christiaan Macdonald: Serge、僕は2週間前に行ったよ!と言ってもかなりレアだけど(笑)。

Rush Hourにとっては、開催期間中は多くのお客さんがお店を訪れる時期なのでしょうね。

Serge Verschuur: 1年で一番お客さんが来る時期なのかい?

Christiaan Macdonald: 僕たちは助かっているよね。開催期間中は会場へ行って数人に会うけれど、Sergeの言う通り、ビジネスで来ている人たちの60%はスーツを着ているような別の人種だから僕たちには関係ないし、僕たちもそこで商売する気はないんだ。Rush Hourに興味がある人達の大半は、会場からわざわざ500メートル歩いてお店に来るような人達だけだよ。

Serge Verschuur: ネガティブになり過ぎる必要はないよね。Marselも言っていたように、ここ数年はよい方向に変わってきているから…。

Christiaan Macdonald: 勿論そうだね!

Serge Verschuur: 期間中の1週間は街全体が活気づくし、良いアーティストが来て、良いパーティーが開催される。良いことだと思うよ。僕たちにとっては助けになる。数多くのアーティストが挨拶に立ち寄ってくれるわけだからね。ロッテルダムにも寄りたいんだってメールを送ってくれる人たちも中にはいるし。

Christiaan Macdonald: ADEが1カ所での開催をやめたのが大きかったね。今は50のクラブが関わっているし、音楽も昔よりバラエティ豊かになった。





Serge、あなたのレーベルの音楽性は長年の運営を通じて変化しましたか?

Serge Verschuur: いや、全く変わっていないね。

ということは、常に同じものをリリースしていると?

Serge Verschuur: そうだね。でも売り方を変えているんだ。

売り方を変えているとは?

Serge Verschuur: 最初に話したけれど、レーベルの構造を変えた。今は6つ程のサブレーベルが存在している。結局元となるレーベルは1つだから、サブレーベルというより、シリーズと呼んだ方がいいかなと思っているんだ。とにかく、Cloneの名の元で全部リリースしてしまうよりは、色々な形でリリースしたいと思ったんだ。僕が一緒に仕事をしているアーティストの違った面や、僕の個人的な趣向の部分を出してね。だから今はかなり幅広くなっている。今までも勿論自分の趣向でリリースしてきたけれど、ヴァイナルを買うような人たちや、僕たちのような音楽を聴いている人たちは、音楽的な歴史を個人レベルで築きあげていきながら、自分たちのルーツや新しいスタイルを見つけていく。僕も過去15年に渡ってそうやってきた。

でも、これが理解できない人も多いんだ。例えば、低俗でゲイ風に聴こえるようなイタロディスコとDrexciyaの両方を好きになることを拒否するのさ。こういう聴き方は、例えばミニマルテクノやミニマルハウス、または巨大なレイブでビッグネームのDJがかけるような音楽を聴いているような人たちには理解が難しいんだ。彼らがCloneのリリースを気に入って買ったとしても、次のリリースが完全に違う内容だったら彼らは困ってしまう。彼らは違った音楽も楽しめるということが理解できないんだ。シリーズでのリリースは、そういう人達を混乱させないようにというアイディアが元になっている。

Christiaanも同じ問題を抱えたことがありますか?

Christiaan Macdonald: 勿論。みんな混乱してしまうんだよ。僕たちはレーベルを個人でA&Rしているようなものだから、個人的な音楽的趣向がレーベルにどうしても反映されてしまうのさ。

あなたもサブレーベルを持っていますよね。分けようと思った理由は何ですか?

Christiaan Macdonald: 僕たちにはDirect Currentという、ベースミュージックやポスト・ダブステップみたいな音楽をリリースしていたサブレーベルがあった。でもリスナーの大半がハウスやテクノへとシフトしていったから、もう分けておく必要がなくなって、メインレーベルでリリースし始めたんだ。Direct Currentは時代を表していて、それがもう過ぎたということさ。

あなたたちがDirect Currentでリリースしていたような音楽をメインレーベルへ移したというのは非常に面白い話だと思います。リスナーたちが変化してきているということでしょうか? 特定のレーベルがバラエティ豊かなリリースをしても受け容れられるような状況になってきているのでしょうか?

Serge Verschuur: 僕たちの音楽を聴いているリスナーや僕たちが音楽を届けている相手に対して、勝手にこちらで判断するのはやめた方がいいね。シングルをヒットさせた時なんかは特にだけど、レーベルに対してはある種のプレッシャーや期待がかかる。リスナーはたとえ僕たちが気に入っていない方向だとしても、その方向へプッシュしてくるんだよ。それがあって、僕は数年前にレーベルの構造を変えたんだ。上手く行っているよ。僕は以前よりも自由を感じることができているし、リリースごとに冒険できるからね。別にインパクトの弱いリリースでもいい。全員が気に入るようなリリースじゃなくてもいいんだ。僕は「別にいいじゃないか」と思うだけさ。リスナーが勝手に自分の好きなリリースかどうかを判断するから。

Christiaan Macdonald: シリーズは全て問題なくやれているのかい?

Serge Verschuur: たまに問題はあるけれどね。でもまぁ、それも込みで楽しめているよ。

Clone、Delsin、Rush Hourの5年後はどうなっていると思いますか?

Marsel van der Wielen: 最初の方で君が言ったと思うけれど、ここ2、3年は状況が落ち着いてきていると思うし、若者が良い音楽とヴァイナルにのめり込んでいる姿を見るのは本当に嬉しいね。彼らはコレクションをしたいわけで、その行為がこの先無くなっていく理由は特に見当たらないな。この先は安定すると思うけれど、確かではないね。2年以内にまた新しいテクノロジーが登場して、シーンを変えてしまうかもしれない。レーベルとしてはそこまで先を見ていないよ。何が起こるかわからないからね。

Christiaan Macdonald: 全く同じ質問を5年前にされたけれど、僕たちはその時と同じことを5年経った今でもやっている。流行に乗る時があれば、厳しい時期を過ごす時もある。でも好きなことをやっている限り、続いていくと思うよ。

Translation / Tokuto Denda
Published / Friday, 12 October 2012

Photo credits /
Rushhour/Clone Stores - Jam Stacks
Perron - Party Flock


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