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Label of the month: Silent Season
カナダの森の奥深くから鳴り響くダブテクノ
Jamie McCueはカナダのブリティッシュコロンビア州にあるコートネーに住んでいる。知らない人のために説明すると、コートネーとはバンクーバー島のコーモックスバレーに位置する自然に囲まれた人口25000程の小さな街で、最も冒険的で筋の通ったダブテクノレーベルを輩出している街だとはまず誰も思わないだろう。McCueは現在コートネーの森の中に居を構えているが、うっそうとした森林、見事な川、そして太古の木々は非常に背が高く、自力で俯瞰することは不可能に近い大きさを誇る。この景色には、苔に覆われたような重厚なダブテクノが最適な音楽と言えよう。
しかし、州都ビクトリアから移り住みレーベルをスタートさせたMcCueは、別にそう考えてはいなかったようだ。「(音楽は)基本的には小さな街に住んでいる僕にとって、ヒマをしないための存在だった。ビクトリアに住んでいた時は、音楽的な意味では常に色々起こっていたし、僕自身もかなりの数のDJをこなしていた。でも生活が落ち着いてくるにつれ、クラブやDJに直接関わることなく音楽と関わっていくのが自然な流れに思えたんだ」と本人は説明する。
コートネーの南にあるユニオンベイに自分の店を構えているMcCueは、周辺の景色から大きなインスピレーションを受けたとし、「移った当初はかなりの時間を外で過ごしていた。釣りをしたり、ハイキングをしたり、あとは僕が今やっているような音楽を聴いて朝日が昇るのを楽しんだりね。音楽が凄く自然にフィットしているように感じられた。柔らかいオーガニックなコードが延々と鳴っているような感じで、『乾いた』感じは全く無い。しっとりとしていて、艶があって柔らかい。まさにこの森林のような感じさ。ここの自然とそういった音楽の間には共通する何かがあると思ったんだ」と語る。
最近は誰もがレーベルの運営は簡単ではないと口にするが、ましてや北米大陸西海岸で最も辺鄙な街の1つと言える、人口わずか1200人の街に住んでいるならば、その難しさは尚更のことだ。つまり、想像できる人もいるだろうが、McCueの当時のコネクションの大半はオンラインからスタートした。「最初はフォーラムを通じて数人のアーティストと知り合った。どうしていきたいのかも良く分かってなかった。でも、Silent Seasonの設立には、当時存在していたThinnerやAutoplate、Realaudioといったネットレーベルが影響を与えたね。新しい小さなレーベルに関わろうと興味を持ってくれたアーティストや僕の音楽を聴いてくれるような人が関わってくれた人達の大半だった。
こうしてSilent Seasonは2007年、256kbpsのMP3を配信するネットレーベルとしてひっそりとスタートした。当時ネット上は数多くのネットレーベルで溢れ返っていた(今もそうだが)が、フィンランド人のプロデューサー、Rasmus Hedlud(McCueはmnml.nlを通じてRasmusと知り合った)のリリースがSilent Seasonを他のスペーシーなダブテクノレーベルと一線を画すことに貢献した。彼の作品“Dubpression”は、底なしのディープさを持ちつつも動きがあり、セクシーな印象さえ与えるトラックで、このトラックの持つ液体的な動きは大半のテクノが持つ機械的なグルーヴから遠くかけ離れていた。
パーティーから遠く離れた森の中の音、そして
森の中で反響して柔らかく音が鳴る感じ…。
「最初は難しかった。でも自分はついていたと思う。大変だったのは最初の数枚をリリースするまでだったから。2枚目をリリースしてからは全てが上手く回り始めた」とMcCueは説明する。「僕は昔ほどパーティーに顔を出していなかった。でも、パーティーから遠く離れた森の中の音、そして森の中で反響して柔らかく音が鳴る感じ…。冷えた朝、音楽が森の中で完ぺきに響いていたあの瞬間は、今でも覚えているよ」と当時を振り返る。
無名に近いアーティスト、Segue、Organon、Ohrwertたちを中心とした初期リリース群は、Silent Seasonのウェブサイトから無料でダウンロードすることが出来るため、McCueはこれらを通じて似たような音楽ファンやアーティストとのコネクションを作ることに成功したが、やがて見て触れる「作品」の制作へ向かっていく。「限定盤のハンドメイドのCDを作って、ファンのみんなに聴いてもらうのは楽しいんじゃないかと思った。オフラインという形で音楽に関われるような作品を作ろうとしたんだ」そう説明するMcCueは典型的な環境保護主義者であり、作品はリサイクルされた素材で作られ、自宅にて手作業でパッケージングされた。
「CDの中には集めたいと思わせるような作品があるよね。ただ段ボール箱に放り込んで終わっちゃうような作品じゃなくてね。僕のレーベルの場合は、段ボールとリサイクル素材が『集めたい』と思わせてくれるんだ」と、作品群に一定の価値があることを語るMcCueだが、同時に、「CDは生産物だから、その過程で多くの廃棄物を生み出している。僕がやっていること、そして顧客としての消費行動の中に自分の環境主義者的な考えが存在しているのは確かだ。でも結局のところ、僕は自分たちが地球を守るとか大きく構えて言うつもりはない」と付け加えている。
最初のCDでのリリースは、謎めいたアメリカ人アーティストSubmersionによるアルバムだった。このアルバムに収められた非常に開放的なサウンドは、もはやリズムを捉えることが不可能に近い。しかし100枚限定販売はすぐに売り切れ、McCueはフィジカルリリースの続行を決める。そしてそれ以降、茶色の再生紙、そしてそこへ糊付けされたブリティッシュコロンビア州の風景が写された写真を手作業でパッケージングしたCDは、Silent Seasonのトレードマークとなった。
そしてしばらくすると、McCueはテクノレーベルを運営している人の次のステップ、つまりヴァイナルのリリースへと動き出した。本人は、「ヴァイナルはやりたかったことの1つなんだ」と典型的な回答をし、「長年ヴァイナルを集めていたけれど、僕には手の届かない存在だったし、やり方がよく理解できなかった。Silent Seasonが育っていくにつれ、僕は音質やマスタリングに拘るようになっていったんだ」と説明した。
しかし、フィジカルリリースは、田舎にあるレーベルに対し、今まで気にする必要がなかった問題を提示することになった。「僕の住んでいるカナダではもうレコードをプレスする場所がなくて、アメリカでやらなければならなかった。でも僕は手作業でやりたかった。再生紙やスクリーン印刷を使ってきたのはそれが理由だしね。アメリカの会社を使うことは別に嫌じゃなかったけど、大変だったよ。アメリカで制作してからカナダへ送るから200枚のヴァイナルの輸送費はとんでもなく高くついたし、そしてその後で今度は全部自分の手でパッケージングして、それから再度郵送した。12インチ1枚にブリティッシュコロンビア州から送る郵送費が上乗せされることで、価格は消費者の買う気を損なうに十分なものになった。だから売り切ることができたのはラッキーだった。こんなことがあったから、2枚目では方法を変えることしたんだ」そう語るMcCueは、2枚目以降はヨーロッパのディストリビューターに任せることにし、これによって大量のヴァイナルを無駄に地球半周させることなく、ファンの大半が住むヨーロッパで販売することが可能になった。
Silent Seasonのヴァイナルでのリリースはレーベルのカタログ上最も刺激的な作品として認知され、日本のIori、ドイツのSTLなども顔を並べている。特にSTLの“Beats of Spirit”はレーベルのクライマックス的なトラックと言えるだろう。しかし、2012年のSilent SeasonはCDやデジタルでのリリースも変わらずに行っており、ASCによる非常に繊細なアンビエントアルバム、メタリックでオカルトな音像を持つDjorvin Clainの作品、そしてASCの別名義Mindspanによるテクノよりの作品、そしてEdanticonfのアルバム『Forest Echo』がリリースされている。この『Forest Echo』というタイトルと音像ほどMcCueのレーベルの作品であることを表している作品は他にはないだろう。この作品は、様々な方向性を持ったスモーキーなビートが鳴り、ステレオという名のフィールドを自然音のノイズで覆いつくし、朝露に濡れる葉に反射された日光のように輝いているアルバムだ。
Silent Season label owner Jamie McCue
森の中からレーベルを運営することは簡単ではない。McCueは郵送費以外にも問題があることを指摘する。「レーベルは趣味として立ち上げた。まぁ、今もそうなんだけど、仕事もあるし、子供が2人、妻と犬とニワトリを抱えているから、その合間を縫ってレーベルを運営するのは難しいよ。だから夜と週末にレーベルの作業をしようとしているんだ。昼間の仕事をしている時はミックスやデモ、とにかく音楽をずっと聴いている。ただ、音楽をサーバーにアップしたり、プロモーションをしたり、プレスリリースを書いたりしないだけさ。全ては音楽のためなんだ。それしか時間を使うことがないからね。
堅調なペースで活動していくSilent Seasonの次のリリースは、サンディエゴに住む器用なアーティストASCの別名義、Mindspanの作品で、2008年以来のリリースとなる。このアルバム『The Second Cycle』は、レーベルの境界線を更に押し広げるもので、人々の予想をはるかに上回るスケールのサウンドスケープが、典型的なASCスタイルでありつつも、レーベルのソフトな方向性をより正確に指し示している作品だ。また、その後はレーベル最古参アーティストの1人、バンクーバー出身のSegueのCD、そしてCV313、Loscil、STLなどの作品が詰まった2枚組のCDがリリースされる予定だ。
McCueは儲けているわけではない。しかし、クリシェに聴こえるかも知れないが、本人はレーベルを運営することで得られる満足がその分を十分にカバーしているとしている。「デモを受け取って、聴いて、トラックをマスタリングして、ステッカーやラベルを整理してCDにする。そしてそれを今度は持ち帰って、ワインを飲みながらパッケージングする。送り出すまでは本当に大仕事だから、全てのリリースは特別な作品に思えるし、各リリースが自分にとっての節目に感じられるんだ」
Silent Season Mix Jamie McCueが今月のLabels Of The Monthのミックスを担当した。ゆっくりとレーベルの特徴であるスペーシーなダブテクノへと進んでいくこのミックスは、Silent Seasonの美学を見事に表現している。
Download: RA Label of the Month 1209 Mix: Silent Season
(right click + save target as)
Filesize: 151.3 MB
Length: 01:02:48
Tracklist
01. Djorvin Clain - Intro [SSCD12]
02. Djorvin Clain - Dark Storm [SSCD12]
03. Mindspan - Dying Embers
04. Inanitas - DeepHZ
05. Purl - Sargyll
06. Axs - Edge of the Chasm
07. Purl - Sus
08. Axs - Compass
09. Sonitus Eco - Ascention to Nowhere
10. Michael Mantra - D/A (A.Ps Nocturnal Radiance Mix)
11. Skyscaper - Noctilucent Clouds (Mindspan Mix)
12. Edanticonf - Planet - (Abdulla Rashims Inca Edit)
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Published / Tuesday, 02 October 2012
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