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Playing favourites: Peter Van Hoesen
Playing favourites: Peter Van Hoesen

Todd L. Burnsがベルギーのテクノアーティストのレコードコレクションを本人と一緒に楽しんだある午後。

Peter Van Hoesenの作品は全て何か更に大きな存在から抽出したようなものに思える。例えば最新のアルバム『Perceiver』は、元々2倍以上の長さがあった作品群から選んだ作品だ(収録されなかった素材はライブセットに用いられる)。また、彼の研ぎ澄まされた音楽性は、ベルギーニューウェーブ、80年代ポストパンク、インダストリアル、アヴァンギャルドなどの多種多様な音楽から影響から成り立っているもので、これらはPeterの音楽的歴史においてテクノと同様に大きな位置を占めている。そしてこのインタビュー自体も長時間に渡って行われた野放図のようなものから削り出された。RAのTodd L.BurnsがPeterの自宅を訪れ、午後を丸々使ってレコードやその他一般的な話を楽しんだのだが、以下は全体の会話の15%程度にしか過ぎない。





Cocteau Twins
Wax and Wane
1982


あなたが選んだThe Cocteau Twinsのこの曲は、ヴォーカルが何を歌っているかを聴き取れるという意味でこのバンドとしては非常にレアな楽曲なので、面白いチョイスだなと思いました。

これは彼女たちのファーストアルバム『Garlands』からの1曲だけど、アルバム自体は凄く空間的で、使われているのはドラムマシーンとベース、ギター、ヴォーカルだけだ。でも凄くオリジナルだ。ギターのディレイが原因で、全体の音像は凄くぼんやりと広大に感じられる。このアルバムは16歳か17歳の頃に初めて聴いて、それ以降数えきれない程聴いた。今でも大好きな1枚だね。

当時からレーベルを意識していましたか?4ADは他にも沢山の面白いバンドを輩出していますよね。

当時は意識していなかった。最初は確か図書館で見つけたんだと思う。当時はアントワープに住んでいたけれど、あそこでは図書館に行けばレコードが借りられたから、3カ所の図書館に登録していたんだ!定期的に図書館に行って、音楽を借りたら、今度は他の図書館に行くって感じで、気に入った曲は全て録音していた。Cocteau Twinsは後期の作品から聴き始めた。だから後期の作品も好きだけれど、『Garlands』、特にこの“Wax and Wane”は凄くピュアなサウンドだから好きなんだ。



TC Matic
If You Wanna Dance, Dance, If You Don't, Don't
1983


TC Maticは80年代のベルギーで最も影響力のあったバンドの1つだった。ファンクとニューウェイブのクロスオーバー的なサウンドで、メンバー全員が優れたミュージシャンだった。最初に興味を持ったのは、彼らのトラックの殆どが奇妙なリズム感で成り立っていると思ったからだね。ドラマーとベーシストは鬼のようにタイトなんだ。あとは歌詞がアルバムを通して5、6カ国語を使われているという部分だね。しかも1曲の間でフランス語からフランドル語、英語と頻繁に入れ替わっていく。まさにベルギー人という感じで、全てを混ぜ合わせているんだ。解散したことが全国放送のラジオでニュースになる位ベルギーでは本当に大きな存在だったけれど、このサウンドなのに有名だったのかと、常に驚いていたよ。



Front 242
U-Men
1982


Front 242のライブは観たことがありますか?

ああ、3、4回あるかな。

どうでした?

最後に観た彼らのライブは僕の人生の中で未だに最高のライブの1つと言える出来だったよ。ブリュッセルのトップクラスのコンサート会場がソールドアウトでね。彼らにとってはホームだったから。確か連続3公演の全てソールドアウトで、僕はそのうちの2公演に行った。

大ファンなんですね。

大ファンだ。

最初に聴いた時のことを憶えていますか?

ああ。また図書館さ。確か『Geography』だったと思う。まだこれ以外はリリースされていなかったと思う。当時僕は『Being There』という本を読んでいた。この本は凄く変な本で、自分が誰だかわからない男が主人公の話なんだ。彼は庭師の仕事を与えられる。彼は庭師としてのスキルしか持っていないのに、どういう訳か常に比喩を使う話術のせいで、最終的にはアメリカの大統領の側近になる。この本は凄くシンプルでミニマルなんだけど、『Geography』も同じだ。8トラックのレコーダーで制作された凄く冷涼としている作品だからね。聴いた時には「何だこれ!」って思ったよ。その後に彼らがベルギー出身だということを知った。

聴いた時は特にベルギーらしさは感じられなかったと。

当時は音楽を聴くだけで何かそういう繋がりを見つけられるような知識は無かった。彼らを聴くことで他のベルギーのエレクトロニックなバンドを知ることになって、The Neon Judgementとか他の沢山のバンドを知った。かなりの数がいる。

ベルギーからこのような音楽が生まれた理由は何でしょう?

ベルギーではパンクが大きな影響を与えたと思うけれど、音楽のスタイルをそのままという訳でもなかったと思う。というのは、ベルギーのバンドはイギリスやアメリカの巨大なロック産業に入ることができなかったしね。ベルギー人ならこれを理解できる。たとえベルギー人のバンドで、完ぺきな英語の完ぺきなポップを作ったとしても、例えばEMIベルギーやその他の小さな世界に身を置くことになる。

80年代を通じて2、3回認知された時もあったけれど、ベルギー人は「これは我々のものじゃない。入り込めない」ってことは理解していた。だから少し冒険的な音楽にシフトしたんじゃないかな。これはあくまで個人的な意見だけど。

あとはベルギー人が色々混ぜ合わせるのが得意だということも理由として考えられるかも知れない。The Neon Judgementはエレクトロニックミュージックとギターを組み合わせた。そしてFront 242は音楽を独特のグラフィックと組み合わせた存在だった。彼らに出会うまで、グラフィックに意識的に取り組んで組み合わせようとしているバンドには出会ったことがなかった。あとは基本的にベルギーというのは島国みたいな部分があるからだと思う。



Mike Parker
Geophone 17
2011


Mikeは大学の講師で、自分でスリーブのデザインを手掛けている。Geophoneは凄く綺麗なスリーブのレーベルだと思う。そして音楽はまさにMike Parker独自のものだ。

Mike ParkerをPrologue系のアーティストとして考える人は多いと思いますし、実際リリースもしていますね。彼らとはどこが違うと思いますか?

Mikeのサウンドはもっと音数を減らした感じだと思う。彼のサウンドはPrologueのような長尺のドローンでもない。殆どの場合、彼の作品はキック、そして他のパーカッションが鳴っていて、その中の1つのサウンドから得られるだけのサウンドを得ようとするような曲調だ。あとはダイレクトなサウンドというのも特徴だ。ライブテイクが多いということを本人が僕に話してくれたことがある。機材を走らせて、それをライブで変化させながら録音するらしい。Donato DozzyがLabyrinthでMikeの“Forward”のリミックスをプレイしていたのを聴いた時、僕はフロアで何かエレクトリックな音が空から降ってきて、フロアの全員にその音が降り注いでいたように感じたのを憶えているよ。キックの音だけだったんだ。1つの音だけ。ハイハットさえ鳴っていなかった。キックとノイズ。これがMikeのサウンドを全て物語っていると思う。





Aybee
11:11
2011


彼はハウスミュージックのプロデューサーです。面白いチョイスですね。

これは去年Panorama Barでレーベルナイトをやった時に関係しているトラックなんだ。大抵の人はTime To ExpressはBerghain向きだと思うと思うけれど、Panorama Barでやらないかと誘われた。だから僕やSamuli、Donatoにとっては、ハウスをかける絶好のチャンスだった。僕は自分の今の立ち位置に満足しているけれど、僕の持っているハウスのレコードをかけるチャンスが中々ないのがちょっとした不満でね。このトラックはドリーミーで、ぼんやりとした音像なんだけど、非常に洗練された感じもある。だからある意味僕の好きな音楽と変わらないというか、僕の好きなトランシーでサイケデリックなレコードの延長上に位置しているんだ。



Dead Kennedys
Holiday in Cambodia
1980


パンクはかなり好きなのでしょうか?

そうだね。でも初期パンクはあまり良く知らない。76年、77年以降のバンドから聴き始めたんだ。今でもたまに聴くし、実はメタルバンドも聴く時がある。Dead Kennedysのようなバンドが持っているパワーとダイレクトな感じが好きなんだ。あと、彼らにはユーモアのセンスもあるよね。陰鬱な政治的なテーマについて歌っている時でも、常に何となく面白い感じや強烈な皮肉が感じられた。そこが好きだったんだ。

あなたの音楽にはあまりユーモアは感じられませんね。それとも内輪ネタが入っているのでしょうか?

いや、僕の作品にはユーモアは入っていないよ。制作には2つの方法があると思う。僕は全体をじっくりとリサーチして掘り下げていくような形、Dead Kennedysはもっと直感的なアプローチだよね。

あなたは1曲を仕上げるのにどの位かかりますか?

かなり時間がかかる。制作を始めたら2、3日かかりっきりになる。そしてその後は、フレッシュな視点で扱えるように4週間から5週間程度放っておくんだ。その後でもう一度取り掛かって、上手く行けばそれから数日で終わらせることができる。でも3カ月かかる時もあるね。リミックスはいつも時間がかかるし。面白いのは、大抵の人が僕を知るきっかけになったトラック、Ostgut Tonの“Axis Mundi”は、ベルリンからアムステルダムに向かう電車の中でヘッドフォンを使って5時間で作って、その後数日スタジオで調整して完成させた。でもこのトラックは例外だよ。普通は凄く時間がかかるし、トラックのことを忘れてしまう時もある。作ってから1カ月半後にもう一度取り掛かろうと思っていても、結局新しいトラックを作り始めてしまうから、そのトラックのことはすっかり忘れてしまう。だから今スタジオには200から300程度のストックがあるけれど、それがどんなサウンドなのか全然理解できていないね。




Outer Space
Memory Bomb
2010


去年のLabyrinthはこのトラックで終えた。東京の友人たちがこのトラックを教えてくれた。僕が東京にいる時に、彼らと長時間レコードを聴いてね。その時に聴かせてもらって、すぐにDiscogsにアクセスして、30ユーロか40ユーロ位で買ったよ。素晴らしいトラックだ。このレコードは全曲良いと思う。

Outer Spaceは今年のLabyrinthに出演しますよね? LabyrinthがPsy-Tranceのパーティーから始まって今に辿り着いた流れは凄く面白いと思います。数年前にはScubaが出演しましたし、昨年はAtom TMが出演しました。どんどんアブストラクトな方向に進んでいますね。

オーガナイザーの好みの変化が影響していると思う。でもLabyrinthの流れには一貫したものを感じるよ。今年のOuter Space、Petar Dundov、そして過去のLabyrinthの間には明確な繋がりがあるね。彼らが試行錯誤しながら積み上げてきたこの部分の強度と独自性がフェスティバル全体を上手く回しているんだと思う。僕が2008年に初めてこのフェスティバルでDJして以来、このフェスティバルにフィットしなかったDJは1人もいないと思う。個人的にあまりはまれないと思う瞬間もあったけれど、それは好みの問題だしね。完全にフィットしなかったようなタイミングは一度もなかった。これは簡単に成し遂げられることではないね。リサーチに膨大な労力を割くことが求められる。



La Muerte
Lucifer Sam
1986


YouTubeでこの曲を聴きましたが、ヴォーカルがカウボーイハットをかぶっているのが印象的でした。

彼らには独自のスタイルがある。彼らもブリュッセル出身だ。ヴォーカルは映画監督だから、ビジュアルについてはよく考えられていたよね。君もそうやってカウボーイハットのことを憶えているし。ライブは凄かったよ。バンドは強烈なノイズを鳴らす中、半裸の女性がステージで踊っていて、ヴォーカルはフロアを転がりながらマイクに向かって叫んでいた。ブリュッセルにはこういうパンクでアンダーグラウンドなガレージバンドのシーンがあったけど、あのライブは強烈な印象を僕に残してくれた。凄く暴力的だったよ。

SendaiとしてMutekでプレイした時、照明が全くありませんでした。あれは意図的にそうしたのですか?

Sendaiのライブの時は必ず照明無しで行うことにしているんだ。

どうしてですか?

理由は2つあって、まずはエレクトロニックのバンドがスポットライトを浴びている姿があまり好きじゃないということ。何故なら別に観るべきものはないからね。だから僕たちの場合は、サウンドがメインなわけだから、スポットライトを浴びないようにしようと思ったんだ。あとは僕たちがやっているビジュアルが理由だね。照明が無ければ、ビジュアルが目立つ。それが2つ目の理由だ。

個人的にはフロアは暗くあるべきだと思う。知っての通りSendaiはダンスミュージックではないけれど、同じルールを適用している。ダンスフロアは暗くあるべきだ。何故ならお互いの顔を見なくていいし、他の人達が誰と一緒なのか、誰を見ているのか、どこにいるのかなどが把握できなくなるからね。つまり自意識が弱くなることで、ダンスフロアでの音楽体験が豊かになるんだ。

全員がDJを見るのは意味がないと思う。ロックコンサートをやっているわけじゃない。僕が若い頃に行ったブリュッセルのレイブは、照明があったとは思うけれど、別にみんなDJを見ていたわけじゃなかった。ただフロアで踊っていただけさ。でも何故か今は変わってしまって、ビッグネームのDJはまるでロックスターみたいだ。別に僕は構わないけれど、ダンスミュージックではないと思う。ダンスミュージックはサウンドだけじゃなくて、どこでどうやってそのサウンドを経験したのかという部分も大きく関わってくると思う。僕は大抵の場合プロモーターに照明を落としてくれって頼む。暗ければ暗い程パーティーは良くなることが多いのが理由だ。たまに数人がプレイの後に「君は正しかった」と言ってくれるけれど、別に難しい話をしているわけじゃない。手元が見えるように多少の証明は必要だけど、スポットライトを浴びせる必要はないってことだ。みんなが音楽をどう聴いているのかという部分に意識に向けて、彼らがダンスフロアでどうしているかに気を配るだけ。携帯をいじっているのではなくて踊ってくれているのが理想だよ。



Photek
Form and Function
1998


ドラムンベースにのめり込んだ時期はありましたか?

短期間だね。8カ月位かな。実はドラムンベースのDJをしたこともあった。1999年、2000年頃のテクノの盛り上がりには飽きてしまった。だから面白そうだと思える他のジャンルに手を出した。ドラムンベース、そしてこのPhotekを結構買ったよ。彼はドラムンベースというフォーマットを使っていたのではなくて、彼がこのフォーマットを生み出したんだと思う。彼の作品は今でも定期的に聴いている。特に初期作品については、聴いて楽しむだけじゃなくて、どうやっているのかを理解しようとしている。サウンドは凄く空間的だけど、最高に非人間的なプログラミングが施されている。机に向かって全ての音符をプログラムしたみたいに感じるね。角張った音像のシンコペーションを多用したグルーヴだけど、そこには流れもある。10年前よりも彼の音楽を理解できるようになったと思うけれど、未だに興味深い音楽だよ。

彼のインタビューを最近読みましたが、彼はこのレーベルから大金を得たことで、1年間に渡ってこのアルバムのサウンドをどう聴かせたいのかをひたすら考え抜くことが出来たと言っていました。このような形での制作はもうできないのではないかと思います。

難しいだろうね。僕も自分の音楽については凄く考えるけれど、そこまで時間を与えられるのは僕にはあまり向いていないだろう。僕は目標を設定して制作したい。昔ダンスパフォーマンスのために音楽を作っていた時は、6週間で音楽を仕上げてその後4週間リハーサルするみたいにスケジュールがきっちり決まっていたし。



Robert Hood
Museum
1994


これは僕が一番好きなRobert Hoodのトラックだ。彼は数多くの素晴らしいトラックをリリースしているけれど、僕にとっては未だにこのトラックが一番だね。少し楽しい感じで、独特のメロディーラインがこのトラックに個性を与えている。人間的にすら感じるね。でもこの2枚組の他のトラックにはそこまで人間的ではなくて、外宇宙的なサウンドで、ミニマルの傑作が集まっている。でもこのトラックには少しファンクの要素が入っている。

あなたのニューアルバムにもこのように少し「はみ出ている」と感じるようなトラックがありますか?

An outlier? No, I don't think so. For this one, the original idea was to have two はみ出ている?そういうトラックはないな。当初は2枚のアルバムにしようと思っていた。1枚目はダンスフロアを意識していない4、5曲入りのアルバムで、テクノだけどあまり踊れないような作品、そして2枚目はフロア向けの8曲入りにしようと思っていた。でも制作を終えて、iTunesのプレイリストを2つに分けて聴いてみると、どちらのアルバムも意味があるようには聞こえなかった。そこでプレイリストを1つにまとめてみたら、「お!」と思えた。だから1つのアルバムにするというアイディアに変えた。でも最初のアイディアの外殻みたいな部分は残っているね。前半はリサーチを重ねたような…

「リサーチ」という言葉を良く使いますね。

そうだね。このアルバムには「リサーチ」がとても重要だった。より深いところへ向かって、未知の繋がりを見つけるためにね。アルバムに収録されなかったトラックの大半は、収録されたトラックよりも実験的なトラックだけど、何故か何かが欠けているような気がした。

どこかでプレイしたりリリースしたりする可能性があるストックが沢山あるというわけですね?

実は大半のトラックについてはリリースしないことにした。その代りライブセットに組み込んで、ライブセットをオリジナルな存在にしようと思っている。当然、以前作ったトラックの別バージョンをプレイするような時もあると思うけれど、今度はライブセットの最低半分を今まで披露したことがないもので構成しようと思っているよ。



Population One
Transition
2012


Terrence Dixonは非常に面白い存在だと思います。

彼は凄くオリジナルだと思わない?彼は通常のフォーマットを使用しない。ひたすらビルドアップされていくというか。非常に空間的でドリーミーなトラックだよ。Labyrinth用に買った。彼はひたすらディープに自分の音楽を求めているけれど、このレコードではそれが際立っている。

彼は明らかにデトロイトのサウンドですよね。あなたは彼が通常のフォーマットを使用しないと言っていましたが、それは彼がヨーロッパの流れにあまり左右されていないからだと思います。もし彼のような人物がベルリンに来て毎週Berghainでプレイするようなことがあれば、変わるのではないかと思います。

それは自分が今どの段階にいるかによって変わってくると思う。自分の音楽が何かと問いを続けているような多くの人には、ベルリンは色々な音楽が聴けるし、凄く面白い街だと思う。でも僕は90年代の終わりに音楽的に大きな変化を迎えたから、僕自身はそれ以降あまり変わっていない。

一時期テクノから離れたと言っていましたが、戻ってきた理由は何だったのでしょう?

「エレクトロではないし、ドラムンベースも違う。ブレイクビーツでもない。さてどうしよう?」と座って考えた結果さ。Object名義で実験音楽もやっていたけれど、どうにもならなかったしね。

本当に座って考えたのですか?

ああ。僕は既に音楽で食べていくことは決めていた。当時は音楽でギリギリの生活をしていたけれど、その時僕の心の中に、もっと音楽を作る時間が欲しいという声が聞こえた。でも僕は、「音楽が作る時間が欲しいというのは分かった。でもどんな音楽が作りたいのかをしっかりと考えるべきだ。それができれば、もっと良い音楽が作れるだろうし、ちゃんと音楽で食べていけるだろう」と考えた。僕は自分がテクノを作りたいということは分かっていた。自分に対して本当に正直になったよ。確かにテクノを作るなんてクールじゃないなと思った時期もあった。でもその考えはどういうわけか捨てることができた。

当時はテクノがクールじゃなかったのでしょうか?

個人的にそう思っていた時期があったという話さ。もっと実験的な音楽にはまっていて、「テクノ?数年前に経験済みだよ」なんて思っていた。でもテクノはかなり実験的なことができることに後で気付いた。




Tipper
Sable Taco
2001


彼がどんなアーティストなのか全然知りませんでした。トラックを聴いて、「ちょっとダブステップな感じがあるけれど、ちょっと違うな」と思いましたが、ちゃんと聴いてみると納得がいきました。

本人が手掛けているFuelからリリースされている作品の殆どは、ベースで何ができるかという典型的な作品だと言える。ちゃんとしたサウンドシステムで聴けば最高だ。最初に彼のプレイを聴いたのはベルギーのフェスティバルだったけれど、僕は「彼はドラムンベースのレコードを33回転でかけているのかな?」と思った。凄いインパクトだった。空間の使い方というか、ちゃんと周波数を使ってプレイすることができるアーティストだ。このレコードには3分程度のトラックも入っているけれど、それは60Hz位の低いベースがウーン、ウーンと鳴っているだけだ。でも大きなサウンドシステムでかければ、ちゃんと機能する。

あなたが持っている音楽で、しっかりとしたサウンドシステムで聴かなければ楽しめないような音楽があれば教えてほしいのですが?

正直言うと、僕の音楽は安いサウンドシステムじゃ楽しめないと思う。僕の音楽をしっかり楽しむためにはちゃんとしたサウンドシステムが必要だ。勿論、これは僕の作品に限ったことじゃない。最近RAに僕が手掛けたリミックスの1つに対するレビューが掲載されたんだけど、納得のいく内容じゃなかった。レビューにはベースが殆ど入っていないと書かれていたけれど、僕は「どうやって聴いたんだ?ラップトップのスピーカーか安いサウンドシステムなんじゃないか?」と思った。勿論そうやって聴く時もあるだろうけれど、それは僕のレコードのレビューをする時の方法じゃない。その音楽が作られた環境で聴かなければならない。それは例えばきちんとしたクラブだったりする。その音楽はそういう場所向けに作られた訳だから。僕の作った実験的な音楽なんかはそれよりもしっかりした環境が必要だ。

当然この実験音楽はラップトップのスピーカーで聴くために作られたわけじゃない。巨大なサウンドシステムと、巨大なクラブ、そして四隅にスピーカーが設置された空間で、座るなり横になるなり、リラックスした状態で聴くために作ったんだ。FotonからリリースしたUltraphonistというバンドがいるんだけど、彼らのライブの最後にはボーイング747が飛ぶ音が流れたのだけれど、みんな何が起きているのか理解できなかった。彼らのライブは40分間で、クライマックスは1回だけ。600Hz以上の音は鳴らなくて、殆どがベース音だけだけど、その音に完全にやられるんだ。そして40分経つと音が消えて、虚無の空間、突然の静寂に放り込まれる。あれは今までで最高の体験の1つだったよ。でも彼らのCDを普通のサウンドシステムで聴いても、そういう体験はできない。そういうエクストリームな音楽なんだ。

Translation / Tokuto Denda
Published / Wednesday, 19 September 2012


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