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Machine love: Ulrich Schnauss
Machine love: Ulrich Schnauss

Ulrich SchnaussとVoyetra 8やHartmann Neuronなど、様々なシンセについて語る。

Ulrich Schnaussの音楽は「美しい」。聴いていると心の琴線が切れてしまいそうになる。少なくとも私たちは彼の音楽をそう捉えている。現在ロンドンに拠点を構えるドイツ人Ulrichは、2007年以降アルバムを発表していないが、Ben Oliverが行った今回のインタビューの中で、次作はこれまでとは明確に違う作品になることを明らかにした(Ulrich曰く、「自分の音楽の趣向は8年から10年周期で変わる」らしい)。果たしてどういう作品になるのかは誰にも想像がつかないが、とにかくUlrichのスタジオを訪れ、制作方法やASCとのコラボレーション、そして膨大な数のシンセについて話を聞いた。(Todd L. Burns)






何かしっかりとした音楽教育を受けたことがありますか?

ああ、ピアノを8年間習っていた。でもあまり良い生徒とは言えなかった。だから普通の生徒よりも学べていないと思う。ただし、コードを使いながら、メロディーを作りたいという人には(ピアノを習うことは)非常に有益だと思うよ。

今も当時習ったことを活かして音楽を作っていますか?

作曲のプロセスは全くの別物だと言えるだろうね。というのは、普段はピアノの即興から始める。全体のアレンジにヒントを与えるようなコード進行が見つかるまで弾くよ。勿論僕がピアノを学んでいなかったら、全く違った方法で作曲していたはずだけど。

ではキーボードの前に座って、即興で弾くことから始めるんですね。

キーボードというよりは、ピアノだね。シンセでは曲を作れない。ピアノを30分か1時間程度即興で弾いて、調子が良ければ「今のは良いコード進行だ。シーケンスとして落とし込もう」ということになる。大量のコード進行やメロディーのアイディアを取ってあるんだ。

MIDI経由でDAW環境に落とし込むんですよね?

ああ。ピアノを直接オーディオとして取り込むこともあるけれど、最終的にはそれを消して、シンセで置き換えてしまうね。



「ポップミュージックはありきたりのメロディーばかりだ。15年前にヨーロッパから
消えたことを嬉しく思う」




ヴォーカルを起用した曲もありますが、明瞭である必要性は感じていないようですね。トラックにはどのタイミングで盛り込むのでしょうか。作業的には最後の方でしょうか?

実はもうヴォーカルは使っていない。最近制作を終えた作品は完全なインストゥルメンタルアルバムだ。過去の3作品では、90年代初期のシューゲイザーの雰囲気をエレクトロニックミュージックで表現しようというのがアイディアだった。シューゲイザーの素晴らしいアイディアは、ヴォーカルを楽器として使って、テクスチャを作り出すという点だった。僕の場合は(ヴォーカルで)謎めいた、少し間接的な雰囲気を生み出したかったんだ。

ヴォーカルはもう使っていないと言いましたが、その理由は何でしょう?

僕の音楽的趣向は8年から10年周期で変わるみたいで、今は少し飽きてしまったというところだ。2007年にリリースしたアルバム『Goodbye』で、やりきった感覚に達してしまった。だからまた違った角度から見直さなければならなかったというのも理由の1つだ。あとは僕の音楽に対して「80年代を彷彿とさせる」みたいな評価がありとあらゆるところで言われ始めたことについて少し納得がいかなかったというのもある。僕の狙いは80年代の音楽に対する当てつけだった。Junoシリーズのようなサウンドに対するね。シンセがいかに優秀に色々なことがこなせる楽器なのかということを少し披露するようなアルバムを作るのはどうだろうと思っていたから。

90年代、そして10年前位までは音楽はもっと未来に進んでいたと思う。でもインディーや80年代の復活があった。分かりやすいJunoのシンセサウンドがどうしようもないインディーサウンドの上で鳴っているような音楽だ。あの音楽でシンセのイメージが悪くなった。当時はアメリカがヨーロッパのディスコミュージックを面白いと思うようになって、世界中のポップミュージックはあからさまなシンセのリード音が鳴っているような音楽になってしまったしね。本音を言えば、15年前にあの手の音楽が廃れていく様子を見ているのは気分が良かった。

これはあくまで僕の個人的な意見だから、間違っているかもしれない。でもここ3、4年の間に凄く面白いエレクトロニック・アンダーグラウンドミュージックが生まれてきている。非常に洗練された音楽を生み出す人がまた増えてきている。例えば見事なドラムンベース作品が沢山生まれているね。

あなたが今のドラムンベースを聴いているという発言は面白いですね。

Autonomic、Instra:mentalからリリースされている音楽は大好きだ。ASCも気に入っているし、今一緒にEPを制作している。今年の終わりにはリリースされるだろう。HospitalのサブレーベルMed SchoolからリリースされているBopのようなロシアのプロデューサーも素晴らしい音楽を作っている。







スタジオの機材リストを送ってもらいましたが、まず私が興味を持ったのは、膨大な数のOberheimでした。Oberheimの魅力は何でしょう?

どの楽器でも同じだと思うけれど、特定のサウンドを求めていくと、自分の好みみたいなものが出来上がる。商業的に成功しているポリフォニックのシンセサイザーには大きく2つのサウンドがあると僕は考えている。ひとつはRolandの日本的なサウンド、そしてもうひとつはOberheimやSequential Circuitのアメリカ的なサウンドだ。Rolandの音は合成されていて人口的だから僕の音楽には向いていない。アメリカのシンセはもっと暖かいオーガニックなサウンドだ。勿論フィルターによって決まってしまう部分もあるけれど、非常にクリーミーで暖かいサウンドを生み出してくれる。このサウンドはアグレッシブなダンスミュージックにはあまり向いていない。でも暖かみのあるサウンドが好きというのであれば、Oberheimは最適だろうね。

スタジオのキーボードスタンドにはOB8がありますが、偶然ここに置いてあるのですか? それともメイン機材として使っているからなのでしょうか?

良く使うんだ。最初に買ったシンセだからね。1998年だったと思う。それ以前は中古市場で100マルク(当時の日本円で7000円前後)を払えば買えるような安物ばかり買っていた。このシンセが僕にとって初めて高価でしっかりとしたシンセだった。今でも安心して使えるし、弾くのが楽しいシンセだ。インスピレーションも与えてくれる。非常にリッチなサウンドで、あまりエディットする必要がない。

かなり長い間所有していることになりますが、メンテナンスは大変なのでしょうか?

ああ。色々問題が起きるよ。電源部に問題があって、完全に壊れそうになったこともあった。でもこういう音楽をやっていると、メンテナンスをやってくれる人とコネクションができる。でも不思議なものだよ。全く問題なく動作する時があるかと思えば、次から次へと色々問題が生じる時もある。僕のスタジオの機材は全て動作するけれど、2年前は7、8台が修理中の状態だった。

修理しなければならないというのは、クラシックなシンセの厄介な特徴のひとつだと思うのですが。

かなり高くつくことになるし、面倒くさくて嫌だと言う人の考えも理解できる。いつでも使えるプラグインの方が楽だからね。

あと私が気になったのは、中々見かけないHartmann Neuronです。これは今日初めて見ました。

シンセの歴史の少し悲しい話になるけれど、昔はシンセを演奏するということは、プログラミングも含めてのものだと考えられていた。だから新しいサウンドの合成方法を生み出すのにみんな躍起になっていた。でも90年代半ばに所謂「グルーブボックス」と呼ばれるような1時間でダンスミュージックを作れてしまうような機材が流行り出した。Hartmann Neuronはそういう時代の流れに飲み込まれてしまった機材のひとつだと思う。

僕がこの機材でプログラミングした時、最初にDX7を鳴らした時はみんなこう感じたに違いないと思った。というのは、これは伝統的な減算方式や加算方式ではないから、他のシンセとは全く違うサウンドが生まれたからだ。このシンセは新しい合成方法を使っていて、どんなサウンドが出てくるか予想するのが難しい。だから当然商業的には失敗した。どういうシステムになっているのかを理解するのにかなりの時間がかかるシンセでね。単純にノコギリ波を選んでフィルターを通せばいいという訳じゃない。もっと丁寧に作り込む必要がある。





他にこのシンセに似たシンセを持っていますか?

持っているよ。有名な機材よりもこういう機材の方に興味がある。僕の一番好きなシンセVoyetra 8が僕の趣向を代弁してくれている。このシンセについて知っている人は少ないけれど、最初から他の人とは違うサウンドを使える訳だから、ある意味僕にとってはアドバンテージと言えるだろう。僕が気に入っている理由は、上位機種のシンセの中でこのシンセだけがSSMフィルターを使っているからだ。通常のシンセはPolysixのように安物のフィルターを使っている。あとはモジュレーションの機能も豊富だし、サウンドも独特だ。

ウェーブテーブルシンセが好きなようですね。どういう風に使いますか?

簡単に色々な動きを持ったサウンドを生み出せる点が気に入っている。だから基本的に殆ど全てのサウンドはLFOや他のモジュレーション機能をウェーブテーブルにルーティングして、常時変化が加わるようにしている。アナログシンセにパルス幅変調を加えても同じような効果が得られるけれど、ウェーブテーブルシンセはもっと急激な変化が生まれるシンセだ。激しいモジュレーションを加えたり、ウェーブを変化させたりすると非常に面白いサウンドが生まれる。

FMシンセはかなりの台数を持っていますか?

2台だ。DX7はスタジオの外に出していて、あともう1台持っている。もうこのスタジオにはDX7を置く場所がない。僕にはDX7のプログラマーがいるから、本当に感謝している。DX7のプログラミングは悪夢だからね。

あなたの音楽にはベルやチャイムなどのFMサウンドがかなり深く関わっていると思います。そういうサウンドはDX7のような機材から?

ああ。僕の音楽と強い関係性を見いだせるようなサウンドがDX7には沢山詰まっている。例えばギターのように聴こえるサウンドもそうだね。あれもDX7で作っている。

アコースティックなサウンドをエレクトロニックな手法で再現していると。DX7の素晴らしい点は、アコースティックな楽器を再現しようとしてもその音とは全然違う音に聴こえるという点だと思います。

アコースティックな楽器を再現しようとしているというのは少し違う。僕が目指しているのはアコースティックなサウンドと同じようなダイナミクスを持った、同じような感覚で演奏できるサウンドをプログラムしようということだ。ギターを使わず、ギターとは全く関係性がない形でギターを弾いているような感覚で演奏できるのは凄く面白い。個人的にはシンセはもっとニュートラルな存在になれると思っている。そうすれば楽器の特性に振り回されることなく、作曲だけに集中できるようになる。良い例ではないけれど、シンガーソングライターがいて素晴らしい曲を演奏していても、誰かがたき火でソーセージを焼いている姿が頭に浮かんできたりする。ここがシンセの素晴らしいところだ。一般的なハーモニーを使いながら、そのイメージに囚われることがない。



「ライブがやりたいから音楽を作っていた
わけじゃない。ライブは一種の必要悪と言える」




将来的にはシンセサイザーの音も何かに結び付けられるようになると思いますか?

既にそういう状況にあると思う。クラシックなシンセサイザーのサウンドは70年代には未来を感じさせるサウンドだった訳だけれど、今はレトロでありがちなサウンドに聴こえてしまう。たまに70年代にTangerine Dreamを聴いた人達はどう感じていたんだろうと思う。というのは、彼らの作品は未だに未来を感じさせるし、今の時代にも合っている感じがある。当時の人にとっては圧倒的な存在だったんじゃないかと思う。

Tangerine Dreamからは大きな影響を受けましたか?

多分彼らから一番影響を受けているだろうね。彼らに出会わなかったらエレクトロニックミュージックをやる必要性を感じなかっただろう。

ドラムのプログラミングはどのように行っていますか?

色々変えているんだ。僕は90年代にドラムンベースを作ることから音楽制作を始めたから、あまりドラムマシーンを使わずに、サンプルを使用していた。長年に渡って沢山のキックやスネアのサンプルを集めていたよ。でも今回の新しいアルバムでは所謂一般的なドラムサウンドを使わないようにした。レコードなどに入っているちょっとした自然音、例えばマイクに人がぶつかった音とかを拾って、それをキックに使うような感じだ。

昔の作品ではブレイクスのようなドラムスが多用されています。ドラムのサウンドはかなり歪める方ですか?

ああ。昔の作品はE-MUのサンプラーを使って基本的なリズムパターンを組んで、それをコンピューターに取り込んでからかなりの量のプラグイン、それにマルチバンドのディストーションを加えた。今もその手法は変わらないけれど、元になる音を変えた。





ソフトシンセは良く使いますか?

あまり使わない。CM用の音楽など、直ぐに仕上げなきゃいけない作品に使う時があるかもという程度だね。自分の名義で作品をリリースする時にはまず使わない。自分の作品は95%ハードウェアだ。

ソフトは何を使っていますか?

シーケンスにはLogic。ライブをやる時はAbleton Liveだ。

ライブセットはどのような設定で?

あまり大がかりではないね。基本的には1人で運べる大きさだ。ラップトップにコントローラー2台、ミキサー、エフェクト、それにキーボード。曲が完成したら、それを一回ばらして、パーカッションのループやコードなど、12から16程度のパーツに分ける。だからライブは新たに曲をアレンジしなおすような形になる。

ライブは好きですか?

このセットアップにしてから以前より楽しめているね。昔はハードディスクでバックトラックをかけてそれにキーボードの演奏を乗せるだけだったから、なんか騙しているような気がしていた。でもこのセットアップなら「ライブ」だと胸を張って言えるし、聴く価値があるよとも言える。ただ、僕はライブがしたいから音楽を作っている訳ではない。ライブは必要悪みたいなものさ。できることならライブはやりたくない。でも今の時代はやらなきゃ生きていけない。

Words / Ben Oliver
Translation / Tokuto Denda
Published / Friday, 31 August 2012

Photo credits /
Paul Clement


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