その夜、TobinはFlying LotusやGaslamp Killerなどモダンビートの雄を輩出したことで知られる、LAで毎週行われているパーティー、Low End TheoryにシークレットゲストDJとして出演した。高い精度、度重なるリハーサル、そしてアーティストとオーディエンスの距離感が生まれてしまうツアーを送っているTobinに対し、Low End Theoryは小さな場所でプレイするというレアなチャンスを与えると同時に、よりダンサブルなTwo Fingers名義でのトラックを披露するチャンスもTobinに与えることになった。しかし、Low End Theoryのオーディエンスと彼の音楽はマッチするのだろうか? その疑問に対し、Tobinは確信を持った顔で、「僕は気にしないね。今までそれについて心配したことはない。好きな事をやるだけさ。フロアを盛り上げようとしたら僕は失敗するね」と返答した。そう返したTobinだが、LAのビートシーンはリスペクトしており、実際今回のツアーではLow End TheoryのレギュラーであるPure Filthと共に回っている。
私たちがLow End TheoryのヴェニューであるAirlinerに到着したのは午後11時頃だったが、Airlinerは水曜日の夜の早い時間としてはそれなりの混み方を見せていた。しかしオーディエンスの大半は大学生程度の年齢であり、しかも全員が腕組みをしながら時々頷いているような感じだったため、直前に自分の音楽がオーディエンスと噛み合うかどうかは関係ないと断言していたTobinだが、やや気力を削がれたかのように見えた。しかし、MC NocandoがTobinをシークレットゲストとして紹介すると、オーディエンスは明らかに盛り上がりを見せたように思えた。Tobinはブースに上がると、凶暴なTwo Fingersのトラックをプレイ。勢いづくオーディエンスの緊張感を徐々に解きほぐしていく。そして凶悪なドラムンベースがプレイされる頃には、オーディエンスは驚きの表情と共に喜びの表情も見せるようになっており、踊リ出すまではいかなかったものの、彼らの拳は宙へ突き出されていた。こうしてTobinは簡潔ではあったが激しさに溢れたプレイを終えた。本人はオーディエンスの反応に完全に満足してはいなかったが、ショックを受けたわけでもなかった。というのは、オーディエンスは時に厄介だからだ。また本人は、ファンや友人と自分の間に自虐的な冗談を飛ばしたかのように、「ファッショナブルではない」音楽をプレイしたことを誇りに思っているように見えた。