ブルックリンの中心地や東地区を歩いていると、古い修繕前の建物や安売りのアパートが立ち並ぶ中、小さなスーパー、コインランドリーや空き地に挟まれるように建っている「Divine Guidance Tabernacle of Faith Church」、 「So Great A Salvation Ministries」、 「Deeper Life Deliverance Church」などといった手書きの看板を掲げた、ずんぐりむっくりな佇まいの小さな教会に出くわすだろう。
Fort GreeneとBed Stuyに囲まれた、Clinton Hillの北東に位置するMyrtle Avenueは、Walt WhitmanやBiggie Smallsなどの地元として有名である。そしてここにひっそりと建っているお店は一見、そのような小さな教会に見間違えられるかもしれない。しかし、黒塗りの店内からこぼれ出るハウスのビートや、緑色のドアから漂うお香の香りは、その建物がただの教会ではないことを物語っている。
「当時はトップにいたStrictly Rhythmや
King Street Soundsなんかが
すっかり変わり果ててしまった。
最近、ユーロダンス物なんて出してるんだぜ?」
最近、彼等の矛先はニューヨークの重鎮ハウスレーベル、King Street Soundsに向けられた。「90年代半ばごろは、あのレーベルは最高だった」。Nickersonがメールにて語る。「Strictly RhythmやNervousと並ぶ、3大ニューヨークレーベルの1つだった。あの頃、King Streetのリリースなら視聴しなくても、買って間違いなかった」
しかしNickersonとEnglehardtにとっては、King Streetのバックカタログのリイシューの仕方や、出す新しいアーティストなどで、毎回期待を裏切ってしまうレーベルに成り下がってしまったと言う。「ニューヨークのダンスシーンの不思議なところは、当時はトップにいたStrictly RhythmやKing Street Soundsなんかが、すっかり変わり果ててしまったということだ。最近、ユーロダンス物なんて出してるんだぜ?理解できないよ」Englehardtは嘆いた。
「『Mix The Vibe』シリーズは、毎回残念だった」。King Street Soundの過去音源をミックスしたシリーズについて、Nickersonが言う。「King Streetはヤバイ音源をいっぱい出していたんだから、どうして良質なミックスを作るのがこんなにも難しかったのか、まったく解らなかったね。そのうち、『Mix The Vibe』シリーズの文句ばっかり言ってないで、自分たちでやっちゃえ、と思うようになった」。『Classic House Grooves: Dope Jams』という名前がつけられたそのミックスは、Ananda Project、 Kerri Chandlerや、Nickersonに言わせればKing StreetのベストであるTears Of Velvaの“The Way I Feel”といった名曲をコンパイルした作品であった。頼まれてもいないミックスだったが、良い出来だと感じた彼等はレーベルに提出してみたという。「奴等のところへ持っていって、“おい、これ出せよ”って渡した」。そして、実際に発売されたその作品はDope Jamsにとって初の正規リリースのミックスとなった。
コンテンポラリーダンスミュージックで育った私としては、Cormac McCarthyの作品など、彼に強く反論したくなってしまったが、『Classic House Grooves』を聴いているとクラシックハウスの魅力に引き込まれてしまうのも確かだ。彼等にこの盤をもらった時は、パソコンで作業する際のBGMにだけは使用するなという条件つきだった。確かに、多くのPodcastダウンロードには欠けている、感情をゆさぶる何かがあったように感じた。そして、彼等の店で月一で行われているCelebrate LIFEというイベントほど、ハウスで踊っていて興奮できるパーティーはニューヨークには中々無い。(最近このパーティーに行った時、酷暑にやられた私と友達のためにバーテンダーにお水を頼み、金を渡そうとしたところ、「水を有料にするには酷すぎる」と言われ、お金を返された。そして、こう付け加えた。「マンハッタンではこんなこと言うやつ居ないだろう?」)