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Seahawks: シンセサイザーの海からディスコの宇宙へ
Seahawks: シンセサイザーの海からディスコの宇宙へ

英国人2人によるユニットが、音とヴィジュアルの探求について語る

Super Furry Animals、The Horrorsのヴィジュアル・ワークや田名網敬一や水木しげるとのコラボレーション、人間界のパラレルワールドとして存在するモンスターの世界をテーマにしたMonsterismの作者でもあるヴィジュアル・アーティスト、Pete Fauler。そして、レイヴ世代のベテラン・クリエイターにして、Thirston MooreやBlack Devil Disco Club、Grimesといったアーティストをリリースしてきた老舗レーベル、Lo RecordingsのオーナーでもあるJon Tye。英国人である彼ら2人が2010年に素性を伏せてスタートさせたプロジェクト、Seahawksが6作目となるアルバム『Aqua Disco』を携えて、XLAND 2012で初の来日を果たす。新世代のドローン、シンセサイザー・ミュージックやニューディスコ/バレアリック、エキゾチカ、サイケデリック・ロックなど、広範なジャンルを横断して広がる音の海にSeahawksは果たして何を見るのか?



Artwork



Super Furry AnimalsやThe Horrorsのビジュアル、田名網敬一氏、水木しげる氏とのコラボレーションを通じて、ビジュアル・アーティストとしてのPeteの活躍は日本でもよく知られていますが、どのような音楽を聴き親しみ、音楽制作に向かうようになったんですか?

Pete: 僕は音楽がずっと好きだったし、自分のビジュアル作品も音楽自体はもちろん、機材や楽器からも影響を受けてきた。音楽制作に関して、僕はハンドメイド、または小ロットしか生産されていないようなユニークな機材を買うことから始めたんだ。例えば、エフェクトペダル、人形の腕で作られたマイク、自作オシレーターなんかだね。僕はそういった機材の音と同じ位ルックスにも惹かれた。僕がコンパイルしてLo RecordingsからリリースされたMonsterismシリーズ(2009年にリリースされた『A Psychedelic Guide To Monsterism Island』、『Monsterism Day』、『Monsterism Night』)にはそういった機材を色々試行錯誤しながら初めて自分で制作した作品が収録されているよ。それまでは自分の作った曲をリリースするなんて考えたこともなかったんだけどね!

Jonは80年代末のレイヴ期から様々な名義で作品をリリースしてきたエレクトロニック・ミュージックのクリエイターですが、Peteは彼とどのように出会い、Seahawksとして活動を始めるに至ったんでしょうか?

Pete: Jonに会ったのは数年前のことで、彼がCornwallに移る前だね。彼がオーナーを務めるLo Recordingsのオフィスが僕のスタジオと同じ建物の中にあったんだ。音楽を含めて色々共通点があったから、まずは一緒にDJすることから始めたんだ。Seahawksというのは、その前に2人で始めたSpace Weather Sounds(以降S.W.S)というプロジェクトが前身なんだ。S.W.Sはもっとアブストラクトで、アナログシンセやエフェクター、短波ラジオ、フィールドレコーディング、それに自分たちの作品(主にカセットとしてリリースした作品)なんかをミックスして、マイク1本でリハーサルなしでライブをしていた。DJとしては、当初、サイケやエキゾチカ、それにインクレディブル・ストレンジ・ミュージックをプレイしていたんだけど、そのうち、お互い70年代中盤の西海岸のAORが好きだってことが分かって、そこから僕たちはスムースなヨット・ロックをプレイするようになった。それで僕がDon Henleyのトラックをエディットして、JonがそこにOneohtrix Point Neverを組み合わせたら、スムースなコズミックサウンドが生まれたんだ。ちなみにSeahawksという名前は、僕たちが海系のアクセサリーを付けて歩いていた時に見ず知らずの人がいきなり僕たちを見て、「Seahawks!」って叫んだことが由来なんだ。その時に僕たちはお互い顔を見合わせて、「これだ!」って思ったのさ。

2010年の最初の作品からリリースされたばかりの最新アルバム『Aqua Disco』まで、この2年半の間にアルバムが6枚、そして多数のシングルをかなりのハイ・ペースでリリースしていますね。そのほとんどが限定盤だったり、自作のファンジンが付けられていたり、はたまた、パッケージが凝った特殊仕様の作品になっていますが、Seahawksの作品リリースや活動のスタンスについて教えてください。

Pete: デジタルリリースについては別に何の異議もないけれど、僕とJonはフィジカルリリースが好きなんだ。お互いレコードで育ってきたし、レコードには思い出や感触、それに物としての愛着があるんだと思う。僕たちはかなりの作品をリリースしているし、制作スピードも比較的速くて、常に次のリリースが控えている状態だけど、クオリティを高く保つことが重要だと思っている。現時点でアルバム2枚分程度のストックがあるんだけれど、今はそれを横に置いておいて、夏を楽しんでいるところさ。

僕はイラストレーションやアート、デザインがバックボーンにあるから、パッケージングにはもちろんすごく興味があるよ。Super Furry Animalsと長期に渡って仕事をした経験を経て、Seahawksとして自分の作品をリリースするにあたっては、今までのビジュアルとは違ったものが作れること、そしてビジュアル面での個性を生み出せることが嬉しかったよ。僕は、自分が関わっているグループとしてではなく、Seahawksそのものとしての作品、順番としては後から僕が関わっていることを知るような作品を生み出したかったんだ。自分でスプレーした最初の12インチシリーズや他の手作りのリリース、ピクチャーディスク、ファンジン、バッジやステッカーなんかは、音楽のコンセプトを面白い形で補強してくれたと思う。

Seahawksの作品においては、“海”が象徴的に扱われているように思います。お二人にとって、“海”が意味するものとは?


Jon: 僕たちにとって、海とは、広くて未開で、可能性に満ち溢れている場所、宇宙みたいな存在だ。危機、ロマンス、そして未知の存在の可能性。素晴らしい冒険に必要な全てが揃っている場所さ。

Pete: 僕は長年海岸沿いに住んでいたし、海の街としての伝統が強く残っているCornwallのFalmouthという街にあるアートスクールに通っていたんだ。それから小さな造船会社で仕事をするためにシシリー島に住んでいたこともあるしね。海には奇妙な魅力がある。僕たちの肉体の半分以上が水分でできていることに関係があるのかもしれない。Jonの「宇宙のような場所」という言葉にも賛成だ。海は自分の想像力を投影できる場所で、神秘なる世界に身を委ねることができる場所だね。

シンセサイザーの海にサンプリング・ピースを溶かし込むアプローチをして、「Seahawksの作品は、The OrbのファーストやKLF『Chill Out』を彷彿とさせる」とも形容されています。アンビエント~アンビエント・ハウス~チルアウトの発想は、Seahawksにとってどのような意味を持つものですか?

Jon: 多分KLFやThe Orbと同じような音楽を聴いてきて、同じ感覚で音楽を探求しているからだと思う。スペースロックやStockhausen、ジャーマン・ロック、ダブ、サイケデリック・ミュージックなんかをね。だから、似ていたとしても不思議じゃないな。

Pete: 同じ影響を受けてきたという意見には賛成だね。僕は肉体的な音楽と同時に、脳に影響を与える音楽にも興味がある。だから、僕たちがアンビエントだと言われるのは理解できるね。ここ数年はニューエイジを聴いているし、その影響も間違いなくあるだろうな。

最新作『Aqua Disco』のタイトルに象徴されているように、水のように揺らめくシンセサイザーとディスコが様々な音楽を溶かす溶剤となっている点がSeahawksの大きな特徴であるように思います。長年運営しているLo Recordingsのレーベル・オーナーでもあるJonは、ここ最近だと新世代のシンセ・ポップ・アーティストとして注目を集めているGrimesの作品をリリースしましたが、2人はシンセ・ウェイヴやチル・ウェイヴといったジャンルが次々に生まれている近年のシンセサイザー・ミュージックについてどう思われますか?

Jon: ここ数年音楽は凄く面白くなっていると思う。Grimes、OPN、Emeralds、Ducktailsなんかだね。常にレフトフィールドな音楽に興味を持っているし、そういった音楽が好調なのは素晴らしいね。嬉しい驚きだよ。

Pete: 音楽は素晴らしい時を迎えていると思う。全部を追いかけるのは大変だけどね! 沢山の小さなレーベルが音楽を生み出していて、ブロガーは大変だと思うよ。細かなジャンルは移り変わりがあると思うけれど、過去数年を振り返ってみると、音楽全体は素晴らしかったと思う。衰退しているようには思えないね。

また、SeahawksはシングルのリミキサーにDr.DunksやCos/Mes、Time & Space Machine、Gatto Fritto、Rune Lindbaekらを起用していますが、DJ HarveyやIdjut Boysに象徴される90年代のNU HOUSEシーンを土台とする2000年代後半以降のニュー・ディスコやバレアリック・リヴァイヴァルの流れはSeahawksにどのようなインスピレーションを与えていると思いますか?

Jon: 自分たちは特定のシーンに関わっているとは思っていなかったから、自分たちがバレアリックのシーンに受け入れられたのはちょっとした驚きだった。でもバレアリックは常にオープンマインドなシーンだったし、自分たちがそこに当てはまるのは理解できる。でも自分たちはもっとアブストラクトな音楽にも興味があるんだ。Laurel Haloがリミックスをしてくれたし、The HorrorsのTomも今リミックスをしてくれている。Autre Ne Veutとも共同作業をしたし、Tim Burgess、Born Blonde、The Horrorsのリミックスもやった。だからディープなサイケデリック・ミュージックやジャーマン・ロックも僕たちの中には存在するんだ。自由に色々試したいんだよ。

Pete: 僕たちは色々な音楽も聴いているから、そこにドップリというわけではないんだけど、バレアリックというのは元々物凄く幅広い音楽が関わっているシーンだと思うし、地中海でDJをするのもウェルカムさ! 僕自身、今挙がったようなバレアリックのアーティストの作品をかなり買っているし、素晴らしい音楽が沢山あるのも知っている。「音楽」という食を構成する味の1つと言えるだろうね。

Seahawksの作品はカセットテープをマスターソースとしてマスタリングしているそうですが、現在の音楽環境においては、インディーズ・シーンでリヴァイヴァルしているカセットテープやヴァイナルを含めたアナログサウンドからCDの音質を超える24bit/96kHzの高音質デジタルデータまで、様々なメディアがチョイス出来ますし、シンセサイザーを使うにあたっても、アナログシンセサイザーとデジタルシンセサイザー、ソフト・シンセサイザーが選べる状況下において、音の質感が作品そのものにより深く関わるようになっていると思うのですが、Seahawksの音質やプロダクションについての考え方とは?

Jon: 僕たちは全てを少しずつ使ってる。狙っているヴァイブが得られるなら何を使っても良いと考えているんだ。でもある程度のアナログ機材は必要不可欠だ。最終的な作品はのめり込むことができるものじゃなければならないし、ソフトでディープなサウンドが僕たちの好みだからね。

Pete: 何を選ぶかと言うよりは、それで何をするかということだよね。僕たちは2人ともアナログ機材が好きだけれど、マーケットで4ポンドで買ったシンセみたいな、安い機材に素晴らしいサウンドが詰まっている。また、今年はiPadのAnimoogというアプリを使っているんだけど、これも気に入っている。ヴァイヴやムードに合う物ならば何でもいいんだ。


「僕たちは自分たちのことを、音とヴィジュアルの探検家だと思っている」




その一方で、サウンドスケープの移ろいがリスナーをどこか遠いところへ誘っていくような作風をして、Seahawksの作品にはエキゾチカの側面もありますが、2人の頭の中ではどんな風景やストーリーが浮かんでいるんでしょう?

Jon: 僕たちは旅が好きだけれど、別に自分の体で旅をする必要はないんだ。詩人のサミュエル・テイラー・コールリッジは南極に行かずして「老水夫行」を書いたし、音の探求は宇宙旅行と一緒だ。僕たちは自分たちのことを音とヴィジュアルの探検家だと思っている。

Pete: 個人的にはエキゾチカは好きだよ。音楽は勿論だけど、そしてポリネシアとは実際何も関係なく生み出されたカルチャーとしても好きなんだ。エキゾチカのようなカルチャーを生み出すことに凄く興味があって、僕のアートワークにインスピレーションを与えている。想像上の「どこか遠く」、自分の住んでいる現実から遠く離れた世界という感覚を与えてくれる。そういうある種の旅、そして想像から生まれたカルチャーとヴィジョンを僕たちは凄く面白いと感じているんだ。


©Pete Fowler/Seahawks 2011
では、Seahawksのアートワークは、どのようなコンセプト、アプローチで作られているんでしょうか? また、あなたの中で音楽とアートワークはどのような相関関係にあると思いますか?

Pete: 僕たちが最初にS.W.Sとしてリリースしようと決めた時、自分のイラストは使いたくなかったんだ。バンドとか様々な形で発表されていたからね。だから違う形でやりたかった。当時の僕はデジタルコラージュの作風で個人的なプロジェクトを進めていたんだけど、これがピッタリだと思った。音楽とビジュアルは尊敬し合うような関係にしたかったし、僕たちは少なくともそういうアプローチを取っている。僕たちの音楽がイメージを生み出すから、僕が写真を沢山集めてコラージュする。これは音楽の制作方法と一緒なんだ。僕たちは沢山の音を集めて、それを最終的にまとめ上げるのさ。仕事中は常に音楽を聴いているし、音楽は少なくともここ5年は僕のアートワークにとって凄く自然な存在であると同時に、大きな影響を与えてくれる存在だ。

ここ最近では、作品で用いる生楽器の比重を増しながら、本国イギリスでライブも行っているようですが、どんな形態のパフォーマンスなんでしょうか? また、今後の活動についてのアイディアやプランは?

Jon: 他のミュージシャンと一緒に制作をするのが好きなんだ。ここ最近では、Hot ChipのメンバーのMaria MinervaやLCD Soundsystem、それにKT Tunstallのバンドなんかと制作しているよ。そうした作品制作を通じて、自分たちの美学を広げたいし、本物のコズミックなオーディオ/ビジュアル体験として披露したいね。

Pete: ライブパフォーマンス面についてはまだ始めたばかりだし、形態は時と場所によって変わるね。ちなみにXLAND 2012では新しいこと、テクノロジーの力を借りながら、今までの作品で行ったセッションやリミックスを披露しようと思っているよ。XLANDではDJもやらせてもらうんだけど、今まで僕たちの音楽や僕たち自身に影響を与えてきたレコードを沢山かけられるから楽しみだね。ロンドンではBig Chill Barのレジデントも務めているし、イギリス国内のフェスティバルにも出演したけれど、Seahawksとして海外に行くのは今回が初めてだ。将来的にはフルバンドでやりたいと思っているよ。素晴らしいアーティストと一緒にレコーディングする機会に恵まれているし、それをステージに持ち込めたらスムースでコスミックな音楽が披露できるだろうね。もっとも、僕たちの音楽には沢山の楽器やセッションが盛り込まれているから、全てをライブで再現するのは難しいだろうね。まとめ上げる作業自体もかなりの大仕事になるだろうけれど、大丈夫さ。Jonと僕は必要最低限の形でライブをこなした経験もあるし、自分たちの機材は持ち運びが簡単だしね。

作品に関しては、現在制作中のアルバムが何枚かあるし、Praawander名義でStatic Caravanからソロ作品をソノシートでリリースしたところなんだ。リスニングやニューエイジ寄りの作品なんだけど、この方向の制作を今進めているところさ。あとは新しいオンラインショップで限定盤のカセットをリリースする予定だし、他のアイテムも制作中だ。僕たちは「限定盤」という考え方が好きなんだよ。別に姿を隠していたいというわけじゃなくて、コストを抑えて音楽をリリースすることができるからね。まぁ、でも、それ以前に最新作『Aqua Disco』はかなり時間がかかったから、まずはこの作品をしっかりとバックアップしたい。2人とも今までで最高の作品だと思っているんだ。

Words / Yu Onoda
Published / Tuesday, 28 August 2012


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