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Shed: (不)完全なキラー
現代テクノ界において最も注目すべきプロデューサーのひとりであり、同時に最もインタビューしづらい人物にRAのTodd L. Burnsがインタビューを試みた
Shedとして知られるRené Pawlowitzについて語れることは、現時点ではほとんどない。正直なところ、彼は自分について語られることを好んでいないのだ。彼は我々がここ数年出会ったなかでも指折りのインタビュー嫌いとして知られており、会話の中でこちらが訊きたい質問をするチャンスさえ容易に与えさせない。そもそも、彼が作る音楽が平凡なものであればこちらもこんな苦労をしなくても済むのだが。しかし、彼がこれまでに発表して来た3枚のアルバム(『Shedding the Past』、『The Traveller』そして『The Killer』)を耳にした者ならば、彼が現在他の誰よりもパワフルかつカラフルなテクノを作り上げていることは否定しようもない事実だろう。
Pawlowitzのレコーディング・アーティストとしてのキャリアはHardwaxをきっかけに始まった。この有名なベルリンのレコードショップは、彼が立ち上げたSoloactionレーベルに対し最初にチャンスを与えた。それ以来、彼は音楽的にも実質的にもHardwaxへ敬意を払い続けている。Hardwax同様、彼は初期レイヴやハードコアに対し臆面も無く傾倒しつつ、彼が手掛けるダンスフロアー向けの斬新なトラック群—EQDやWAX、そしてHead High—はことごとく話題を独占し、ひとたびソールドアウトとなるとDiscogsなどにおいてはあり得ないほどの高額で取引されるのだ。すでにアルバム・フォーマットでの成功を収めているShed名義では、今回Modeselektorのレーベル50 Weaponsから新作アルバム『The Killer』が届けられた。このアルバムは彼独自のノスタルジックなサウンドをとびきりモダンに仕立て上げたものであり、そのすべての収録トラックはどれをとっても完璧な(そして未完の)キラー・トラックが目白押しだ。
今回のアルバム・タイトル『The Killer』のそもそもの由来は?
単純に、Hardwaxでの社内用語というか。それほど悪くないレコードに対して使われる表現が"The Killer"ってこと。
私は"TIP!"がそれほど悪くないレコードに与えられる表現かと思ってましたが。
"Tip"とか"highly recommended"、そして"killer"は特別なレコードだけに用いる言葉だ。
"Tip"の最上級の表現が"The Killer"ということ?
そういうことでいいんじゃない。別に、今回の俺のアルバムが"The Killer"と付くべきレコードってわけじゃない。ただ、なにかHardwaxの社内用語にまつわるタイトルをつけようと思っただけのこと。
あなたのレコードとHardwaxは常に縁が深いように思えますが。
まあ、俺の活動拠点でもあるし。我が家みたいなもんだよね。
音楽の知識を積んだのもHardwaxで?
いや、違う。俺が音楽の知識を積んだのは90年代前半さ。Hardwaxで働きはじめたのは2007年になってからだし。俺が最も多くを学んだ人物はBerghainのレジデントDJ、Fiedelだ。当時俺はベルリンから北東に70kmぐらい離れたところにあるシュウエートって街に住んでた。俺がレコードを買いはじめてテクノを聴きはじめた頃、Fiedelはいちばんクールなレコードをかけてた。USやUKのクールなレコードをね。めちゃくちゃ格好良かったな。
いまリリースされているレコードの中でも、当時と同じようにクールだと思えるものはありますか?
いま出ているレコードの中にはそういうクールなものはないな。テクノがクールだったのは90年代初期だろ。その時代に匹敵するクールなレコードを今の時代に作るのはなかなか難しい。だから、俺はある意味テクノは終わったとも思ってる。俺にとってテクノがクールだったのはティーンエイジャー時代にテクノと出会ったころまでってこと。
ティーンエイジャーの頃から音楽は作っていたのですか?
いや、自分で作るようになったのはもっと後になってから。10年ぐらいあとの話。
最初に作品をリリースしたのはいつだったんですか?
2003年だな。友だちと一緒に作ってはみたけど、何て言うか・・・とにかく、プレスから上がってきたサウンドはかなり悪くて、決して満足いくものじゃなかった。CDのために作る音楽と、ヴァイナルのために作る音楽の違いでさえ当時は分かってなかったんだな。プレス工場での工程になにかミスがあったんだろうとか思いこんでたからな。プレスした500枚のレコードはしばらく半年ぐらいのあいだ自宅の地下室に押し込んだままだったんだけど、やがてベルリン中のレコードショップへ売り込みに行った。ほとんどのショップは興味も示してくれなかったけど、唯一Hardwaxだけは興味を示してくれた。それが最初のSoloactionのレコードになったってわけ。
「いまじゃ随分ヴァイナルを買う量は
減ってしまったよ」
あなたのキャリアにおいて、アマチュアとプロフェッショナルを分けるターニングポイントになったのはいつごろだったのでしょう?
Soloactionを立ち上げて最初の3年はまさしく暗中模索って感じだった。まあ、別に有名になってやろうとかひと儲けしてやろうと思って始めたことじゃないし、実際儲けは無かったしな。400枚のレコードを売り切るってのは、そりゃ並大抵のことじゃないんだ。2007年に最初のEQDのレコードを出した頃、それまでのアマチュアレベルを抜け出して、ちょっとはプロフェッショナルにやらなきゃいけないかなと思いはじめた。
DJのための音楽を作るということについて、重要性は感じていますか?アルバム・フォーマットでは12インチほどDJフレンドリーな内容にはなっていないようですが。
だからこそ、EQDとかWaxみたいなサイド・プロジェクトをやってるんだけどな。EQDやWaxのレコードはDJ向けだろ。
Panamax Projectも同様にDJのためのレコードなのでしょうか?
あのレコードは俺が過去に作ったレコードの中でも一番売れなかったやつなんだ(笑)。Hardwaxにもまだ在庫が残ってる。俺はかなり気に入ってるから、なおさら理解できないんだけど。たしかに、Panamax ProjectもDJのためのレコードのつもりで作ったんだけど。
あなたはここ最近DJはしていないのですか?
いや、やらない。
自分でもうDJはやらないと決めたからなのか、それとも単純にDJとしてブックされないから?
その両方じゃねえの(笑)。よくわかんねえけどさ。
ライブの際はどういう内容なのでしょう?
ライブはごくシンプルなセットアップで、Abletonにいくつかのコントローラーとドラムマシンって構成。たくさんのファイルを再生するために、こういうシンプルなセットアップをあえてキープしてる。Abletonにフルでトラックを立ち上げて、playボタンを押すだけってライブはしたくなくて、もっと即興的な内容にしたいと常に思ってる。いかんせん手は2本しかないし、やりたいことがすべて出来てるってわけじゃないんだけど。たまにサウンドがこんがらがってしまうこともあるけど、そういうことも含めてのライブだと思ってるし。
ライブではもっと多くの要素を盛り込んでいきたいと考えているのでしょうか?
そうだな。ライブにはもっといろいろ盛り込みたいと思ってる。コンピューターをもう一台用意して、映像をコントロールするってのもやってみたい。オーディオ・サンプルの再生とヴィデオ・サンプルの再生を同時にシンクしたり。まだ実験段階だけどな。
いま、どういう映画を好んでいますか?
映画だって?おいおい、風呂敷広げすぎじゃねえの(笑)?
最近見たなかで良いと思った映画は?
映画はそんなに見ないし、映画館に行ったりもしないしな。
じゃあ、ライブ中に映像を流すとしたらどんなものになるのでしょう?あなた自身の音楽と何か関連づけられたものになるのでしょうか?
コンピューター的とか、アニメ的なものにはしたくないと思ってる。俺の音楽はいわゆる典型的な8ビット・サウンドみたいなもんじゃないし、実際のリアルな映像がいいんじゃないかな。リアルな映像のほうが、俺の音楽には合ってると思う。
映像の素材はもういくつか録りためてるのでしょうか?
ああ、けっこうたまってきてる。あとはそれらを音楽とどう組み合わせるかって段階。
なぜ、ニューアルバムを50 Weaponsからリリースしようと考えたのですか?
理由は自分自身がより楽しめるように、ってとこかな。自分のレーベルじゃないどこかからリリースするには良いタイミングだったし。良いとか悪いとかって基準で決めたわけじゃない。Ostgut TonはBerghainと常に直結したレーベルだから、そこからリリースするのも悪くはない判断だったかもしれないけど。DJするにしろライブをするにしろ、フライヤーには自分の名前よりもでっかくBerghainやOstgutのロゴが載るし、人々が期待するのはそのアーティストのDJなりライブなりではなく、あくまでもBerghainのサウンドだからな。俺にはそういうのは向いてない。俺の音楽だって、毎週末Berghainで鳴ってるようなタイプのものじゃないしな。
GernotとSzaryの2人(Modeselektor)にはどうやって出会ったのですか?
おもしろいことに、1993年に彼らのパーティでプレイしたことがあったんだ。彼らと90年代のリューダースドルフのシーンについて話しているとき、当時Szaryが別の名義でDJしてたのを思い出してさ。でも、彼らとちゃんと話すようになったのは俺がHardwaxで働いてる時に彼らが買い物しにきたりするようになってからだな。
特にアメリカの人々にとってはそうですが、Modeselektorという名前とテクノという単語はすぐには結びつかないように思います。あなたやMarcel Dettmannが彼らのレーベルから作品をリリースするというのは非常に興味深いことに思えるのですが?
まあ、俺らはみんな同じ地元の出身だからさ。ベルリンの東側のな。
ここ最近リリースされている音楽のなかで、とくに気になるものはありますか?
難しい質問だな。ラジオはいまでも聴く機会が多いけど、レコードは以前ほど買わなくなった。その理由のひとつには、俺がもうほとんどDJをやってないからっていうのもあるけど。レコードを買うとしてもアルバムばかりだし、それにしたって買う量はめっきり少なくなった。
では、気になるバンドなどは?
去年はThe DrumsとかWhite Liesをよく聴いたな。いわゆるインディー・ミュージックってやつ。ギター・ミュージックは基本的に嫌いなんだけど、この2つは大丈夫だった。
どうしてギターがそんなに嫌いなんですか?
100年以上もの歴史があって、すでに使い古された楽器だから。もう充分だろって感じ(笑)。まあ、そこまで嫌いってわけじゃないけど。
テクノも同様に使い古された音楽だと思いますか?
そうだな、20年もそこにある音楽なんだし、そろそろ終わらせてみてもいいんじゃないのとは思う。
じゃあ、すでに終わっているはずの音楽をあなたはやっている、と?
そんなこと俺があんたに言ってどうすんだよ。俺がやってる音楽はあくまでオールドスクールなもので、決して新しいものじゃない。20年以上もそこにある音楽ってだけ。
私が思うに、人々があなたの音楽について話す時、彼らは過去だけじゃない新しい何かがあなたの音楽には存在すると考えていると思うのですが?
俺の音楽にあるのは過去だけだよ(笑)。完全なオールドスクールだ。他の誰かさんにとっては新しいサウンドなのかもしれないけど、少なくとも俺にとっちゃ過去のサウンドでしかない。Power Houseのレコードにしたって、あれはオールドスクールな90年代ハウスやUKハードコアのサウンドだ。15年以上前からあるサウンドだよ。
それならば、なぜ人々はあなたの音楽についてあれほど熱っぽく語るのでしょう?
知るかよ(笑)。
「俺は自分自身の音楽をそれほどシリアスには
捉えていない」
ニューアルバムではサンプリングなどは使っているのですか?
いや、今回は使ってない。たまにオールドスクールなフィーリングが欲しいとき、ドラムループのサンプルを使ったりすることはあるけど、ピアノやメロディのサンプルを使うことは無い。
ちょっとしたことなのですが、アルバムの冒頭にはあなた自身のヴォイスが入ってますね。これはジョークなのか、それとも一種の警告なのか、それともその両方なのでしょうか?
単なる楽しみのためだよ。そんなシリアスに捉えるものじゃないだろ。
人々が考えているよりも、あなたはユーモアのセンスがあるようですね。
俺は自分自身の音楽をそれほどシリアスには捉えていない。この音楽業界にしたって、俺はそれほどシリアスには捉えていない。
音楽以外に何か仕事は持っているのですか?
俺はフルタイムの専業ミュージシャンだよ。とはいえ、音楽ばっかりやっているわけじゃないけど。
前作のアルバムをリリースした際、あなたは「これだ」というアイデアが浮かんだときにスタジオに入ると語っていましたが。
そのとおり。それは今回のアルバムでも一緒さ。
そのアイデアはどういうものなのでしょう?メロディ的なもの?
いや、あくまでもサウンドのイメージってとこかな。それが俺のインスピレーションなんだ。俺が欲しかったのはすごく生々しくてすごくノイジーな感触で、そうした感覚はアルバム全体を通底してる。歪んだままだったり、ノイズが混じったままでね。
それはあなたが作る音楽全体にも通じる感覚ですよね?
俺はノイズが好きなんだ(笑)。いまどきのレコードってどれもクリーンすぎて・・・要するに面白くないんだよな。パーフェクトじゃないものが俺は好きなんだ。
音楽を作ってるとき以外は、何をして過ごしているんですか?
何にも。
何にも、ですか。ただ近所をぶらついて、一日中壁を見つめているとでも?
そう、それだけ(笑)。何にもしない時間を作るために、俺は音楽を作ってるんだ。
外出はしないのですか?ベルリンでパーティに出かけたり、とかは?前回インタビューした際、ベルリンにはブレイクビーツなどが聴けるパーティが無いとあなたは言っていましたが、そうした状況は改善されているのでしょうか?
正直なところ、俺にはよくわかんない。というのも、そうしょっちょう外出してるわけでもないし。週末にライブで出演することはあっても、金曜と土曜に連日でライブすることは稀だから、ほとんどの場合は家でのんびりしてたり、ベルリンから離れた田舎に行ったりしてるし。自分がライブしたりしない限り、パーティやコンサートに出かけたりしないし、いまは音楽に対して必要以上に興味を持っているわけじゃないんだよね。
Words /
Todd L. Burns
Translation /
Kohei Terazono
Published / Thursday, 23 August 2012
Photo credits /
Portraits -
Will Bankhead
With Marcel Dettmann and Modeselektor - Modeselektor Instagram
Live - Alec Luhn
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