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Kangding Ray: Techno (version)
先日自身のキャリアの中で最もフィジカルな作品をリリースしたモダンテクノの異端児にRAのTodd L. Burnsが迫る。
Kangding Rayは典型的なRaster-Notonのアーティストだ。全身を黒でコーディネートし、自分の言葉を持った落ち着いた人物であることからもそれは明らかだろう。しかし、実験的なレーベルからの作品群は、このレーベルの拡張性を指し示しており、2011年に発表された現時点での最新アルバム『Or』は、ダンスフロア向けと言っても差し支えないだろう(実際多くのDJがプレイしている)。Kangding RayことDavid LetellierはRaster-Notonのフォーマットに則したアーティストであると同時に、その作品によってレーベルのイメージを変えてきた人物でもある。複雑な構造を持つ彼の作品は、Raster-Notonのイメージである、典型的な「デジタルな構造物」ではあるが、同時に「楽曲」としての側面を持ち合わせている。これはこの挑戦的なレーベルにとってはタブーと思われていた側面だ。David Latellierの音楽にインテリジェンスが求められるコンセプトが備わっていることは確かだが、彼の音楽はコンセプトが無くても十分に成り立つものと言えよう。
以前は建築家だったそうですが、何を建築していたのですか?
ベルリンで建築家としてのキャリアをスタートさせた時は、基本的には学校などの様々な建物のコンペに参加していた。その後はパリ・フィルハーモニーホールのデザインチームに参加した。彼らが音響技師と建築家の間に立てるような人を探していたから参加したんだ。
音響技師側からの要望とデザイン側からの要望はどのようなものだったのですか?
凄く抽象的なものだった。フィルハーモニー用のコンサートホールだから、基本的には形状や音量、反響、それからホール内で音がどう拡散するかの計算が全てなんだ。音響技師たちは吸音材と反響材の数と重さ、そしてテクスチャを正確に求めてきた。そしてデザイナーは当然見た目の美しさを求めてきた。だから色々やることがあったよ。妥協という名の元にね。
そのような仕事には音楽に持ち込める部分はあるのでしょうか? あなたは以前インタビューで、このことについて何回も訊かれるけれど、はっきりとした答えは持っていないと話していましたね。
そうだね。普段はこのことについてはあまり話さないから。勿論そういう(持ち込める)部分はあるよ。ここから得た知識は常に使っているし、僕というカルチャーの一部だからね。でもそれを僕の音楽の中に直接見出すことはできないと思う。こういう事実を知っていれば、僕の音楽を違う方向から聴くことができるかも知れないけれど、僕が今行っていることを理解するためにそれを知っている必要はないと思う。
「苦しみながらトラックのテーマを探っていく」
しかしRaster-Notonは、高尚な理論と結びついた音楽という印象があります。そこをあなたは重視しているのでしょうか? それとも別物として考えていますか?
僕は分けて考えたいと思っているけれど、制作の前後を問わず、特定の方向へ導くためにしっかりとしたコンセプトを設定するのも嫌いじゃない。
「前後」と言いましたが、作品を作った後にコンセプトを設定するのは可能なのですか? コンセプトは作品を作る前、もしくは作っている最中に設定するものだと思うのですが。
基本的に行ったり来たりしながら制作するんだ。アルバムかシングルかは問わず、コンセプトは制作中に生まれるものだけど、そこから一旦最初に戻って、改めてコンセプトと照らし合わせながら作業していく。一方通行的な作業じゃないのさ。
あなたはトラック1つに対して何個もバージョンを作るそうですね。そういう意味では、コンセプトを設定して作品の方向付けを済ませた方が、トラックを全体像に馴染ませる作業が簡単になるのではないでしょうか?
まさに君が言った通りだよ。Carlsten Nicolai(Raster-Notonのレーベルオーナー)はいつもバージョンを作り過ぎないで、ダイレクトに制作するように言ってくる。彼は最初のバージョンというかラフなアイディアを好む傾向にあるんだ。僕はバージョン38位まで作るわけだけど、彼はバージョン2の作品を好むというわけさ。でもこういう(バージョンを多く作る)制作方法だと、トラックの中に何が潜んでいるのかが理解できるようになる。トラックのエッセンスみたいなものをね。僕は苦しみながらそのトラックのテーマを探っていく。そこから君の言うような馴染ませる作業が始まるんだ。
「苦しみながら」という言葉を使いましたが。
そうだね。時に痛みを伴う作業なんだ。でも最初から気楽に作業できる時もある。
以前あなたのインタビューを読んだのですが、ライブをやるために音楽をやっていると言っても過言ではないそうですね。
そうだね。
ライブをしている時は考えすぎないで良いからではないですか?
トラックの制作に比べると、ライブは純粋に楽しいからね。ただでドリンクが飲めるし、人前で演奏して、お金ももらえるわけだから、最高さ。自分をラッキーだと思うよ。
最近はどこでプレイしていますか?
アルバムをリリースしてからは、クラブやテクノ系のフェスティバルでのプレイが多い。アルバムはテクノシーンで良い評価を得られたと思うから嬉しいよ。アルバムはテクノシーンの人達に届けたかったんだ。勿論僕は100%テクノという訳じゃないし、僕の音楽は壊れていてノイジーだから、いつも「変わり種」的な位置にいるけれど、上手く行っていると思う。
『Or』ですが、制作を始める前からビートを重視しようと思っていたのでしょうか?
制作を始めた時はそれがゴールだった。重いビートとダークな雰囲気を使って僕たちの今の時代/社会の状態をアブストラクトな形で表現した作品になるだろうと思っていたんだ。
あなたは今の社会の状態をどのように捉えていますか?
「どうなってるんだ?」って思うような、流動的な時代を迎えていると思う。僕たちは自然、経済、全てを滅茶苦茶にしてしまった。世界の奇妙な終焉を見届けているような感覚だね。再生する希望はあるけれど、それはテクノロジーを通じてではないだろう…。上手く説明できないけれど、テクノロジーに頼った明るい未来という希望は以前に比べて縮小したと思う。
つまり、私たちがテクノロジーを通じての未来がないということを意識しないと未来はないと…。
そうだね。勿論テクノロジーだけの問題ではないかも知れないし、自分たちの社会の形成方法に問題があるのかもしれない。『Or』には「もしくは(or)」という意味が込められている。少し違う方向から物事を考えられないだろうか? 発展させる別の方法はないだろうか? 多くの人がこう考えている。僕は答えを持っていない。僕自身のことすら分かっていないからね。
「答えを知っていたら、
音楽はやっていなかっただろう」
『Or』はフランス語で「金」も意味します。このダブルミーニングは気に入っているのではないですか?
そうしたかったからね。金は何千年にも渡って、価値が変わっていない唯一の金属なんだ。この不安定な世の中のある種の安定を意味している。
(世の中は)どうしてこうなってしまったのでしょう?
わからないな。
あなたは答えを持っていないようですね。あるのは疑問、または「もしくは」ですね。
そうだね。その通りだ。僕に明確な答えがあったのならば、音楽はやっていなかったかもしれない。他のことをやっていただろうね。
DJをすることはありますか?
いや、DJのやり方を知らないんだ。2つのトラックのビートを合わせることができないんだよ。勿論たまに遊び程度でやることはあるけれど、プロのレベルではないよ。
DJができないという部分は、あなたがダンスフロア向けのトラックを制作する上で助けになりますか? それとも逆に不利に働きますか?
DJの友人の数人は、DJではないプロデューサーが作ったトラックが好きだと言っていた。その理由は僕たちのようなプロデューサーは「ルール」を知らないからさ。イントロが必要かどうかも僕たちは分かっていないし、DJに何が必要なのかも知らない。彼らに何が必要なのか訊いたこともないし。
知りたくないように聞こえますね…。
知りたくないよ。ミステリアスな世界だから。僕はDJツールじゃなくてトラックを作っているしね。他人が僕のトラックをクラブでプレイしているのを聴くのは嬉しいけれど、彼らにとって僕のトラックがチャレンジであること、または意図しないとプレイできない存在であることは知っているよ。
Stroboscopic Artefactsから先日リリースした“Monad XI”について教えてください。彼らは非常にオープンマインドなレーベルですが、基本的にはテクノレーベルです。あなたにとっては新しいチャレンジだったのではないですか?
最初に彼らから連絡が来た時は断ったんだ。デジタルリリースだけだから、あまり興味がなかった。エゴイストな意見を言わせてもらうと、僕は自分の作品はフィジカルな形でリリースしたい。棚に飾りたいんだ。でもMonadシリーズの他の作品が気に入ってね。素晴らしいアーティストによって素晴らしい作品が作られていた。だから魅力的に感じて最終的に引き受けた。Stroboscopic Artefactsでのリリースは、『Or』のテクノの要素と繋がっているから自然な形で生まれたよ。デジタルフォーマットだったから、僕は「デジタル」からなるべく離れるようにした。アナログマシンとアナログシンセだけを使って制作したから、ダーティーで荒々しい感じが多少あると思う。最終的にデジタルになると分かっていたから、そのコントラストを楽しんだよ。
あなたはテクノファンだったのですか?
僕はテクノを聴いて育っていない。10代の頃はロックバンドに夢中で、Nine Inch Nailsなんかを聴いていた。11年前にベルリンへ来てからテクノに出会ったんだ。
ダンスするのは好きですか?
僕は素晴らしいサウンドのクラブが持つ、人を惹きこむパワーが好きだ。他にはない経験ができる。クラブは独自のルールが用いられているパラレルワールドのような社会だと思っている。クラブという社会が存在しているのは重要なことだと思う。一般社会の中にはまず見つけることができないものだからね。一般社会はCCTVなどで全てがコントロールされている。クラブのように人が集まる場所は他にはないと思う。
クラブシーンには他に適用できるような政治的な側面が備わっていると思いますか?
そう思うよ。レイブカルチャーのエネルギーは政治的な反抗精神と深く結びついていると言える。クラブへ行くということはもはや政治的行動と言ってもいいだろう。何かを実現するための行動なんだ。間違いなくクラブの中心にはこの精神が根付いていると思う。深く結びついているんだ。
「レイブカルチャーのエネルギーは、
政治的な反抗精神と深く結びついている」
先日行われたGEMAに対するデモもその一環ですよね。行きましたか?
行ったよ。
行こうと思った理由は何でしょう?
アーティストとして、GEMAのような団体に収入を頼る必要はないと感じているんだ。ラジオで何がプレイされたのかを統計的に算出する意味不明なブラックボックスに頼るよりも、自分のギグやレコードの売り上げから直接収入を得る方がいい。自分のことは自分でコントロールしたいんだ。僕はドイツのレーベルに所属しているから、レーベルとしてはGEMAを避けることはできない。でも僕個人はGEMAではなくて、SACEMというフランスの同じような団体に所属している。こっちも別に良くはないよ。でもレーベルを介すると僕はGEMAに関係しているということになるから面白い話だ。僕は将来的にはGEMAやSACEMのような団体にコントロールされないようにしたいけれど、音楽業界の成り立ちを考えると、可能かどうかさえ分からないね。
ここ数年全てが急速に変化しているので、このような団体は音楽の消費方法の変化についていけていないのではという印象があります。
彼等は全く別のシステムで成り立っているから、今の音楽がどのようにプレイされているのか、どのように制作されているのかとは全く関係ない位置にいる。彼らはクラブでどのような種類の音楽がプレイされているのか理解していないだろうね。
Words /
Todd L. Burns
Translation /
Tokuto Denda
Published / Monday, 23 July 2012
Photo credits /
Header + Other -
Christian Olofsson
Live -
Fran Holguin
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