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Andrew Weatherall: BPM120のアウタースペース
Andrew Weatherall: BPM120のアウタースペース

UNIT 8周年アニヴァーサリー・パーティでのプレイに先駆け、アンダーグラウンド・シーンの帝王が新たな音楽の可能性について語る。


4月に3枚組ミックスCD『Masterpiece』をリリースしたAndrew Weatherall。DJ、プロデューサーとして、20年以上のキャリアを誇る彼は、いま何度目かの絶頂期を迎えている。アシッド・ハウスの伝説的なパーティでプレイをはじめ、プロデューサとしてもHappy Mondays「Hallelujah」のリミックスを皮切りに、Primal Scream「Loaded」と『Screamadelica』という世紀の名作を手がけたのち、Sabres Of Paradise、Two Lone Swordsmen、そして、ソロへと表現形態と音楽性を進化。ダンス・ミュージックのフロンティアを常に切り開きながら、ロックンロールの伝統やスピリットとも向き合ってきた彼は、歩んできた音楽の豊潤な個人史を3枚のミックスCDに凝縮しながら、BPM120を切る催眠的なグルーヴに新たな音楽の可能性を見出し、その活動がにわかに活発化している。2012年には前述のミックスCDリリースのほか、新レーベル、Bird Scarerの設立と2009年の『A Pox On The Pioneers』に続くニュー・アルバムの制作を行いながら、今週7月6日(金)には代官山UNIT 8周年アニヴァーサリー・パーティに登場する。ロングセットでのプレイを目前に控えた彼の最新インタビューをここにお届けしよう。





オリンピックを目前に控え、ロンドンの街はかなり再開発が進んでいるようですが、変わりゆくロンドンでの音楽生活はいかがですか?

俺は全くオリンピックに興味がないんだ。スポーツ全般に関してもね。というか、オリンピックと音楽シーンは全く関係ないんじゃないかな。唯一考えられるとしたら、渋滞がひどくなるだろうから、クラブに行くのが大変になるかもっていうことくらいかな。イギリス人っていうのは、常に悲観的だから、オリンピックはきっと失敗するだろうと思っていて、こういう大きな行事が実際に成功するとみんな驚くんだ。ただ、それはアンチ・オリンピックっていうことではなく、典型的なイギリス人の意見って意味だよ。あとはタクシーに乗った時、運転手から渋滞で商売に影響が出るっていう文句を聞かされ続けてきたことが影響しているのかもね。俺は自分の生活にどう影響が出るのかだけを心配しているワガママな人間だからさ(笑)、上手い答えが出来なくて申し訳ないね。

はははは。いかにもあなたらしい答えですね。そんななか、4月にリリースされたミックスCD『Masterpiece』の反応はいかがですか?

どうなんだろうね。きっとネット上には「最悪のCD」とか「ウェザオール最低」って書かれているんだろうけど、俺はあまりインターネットを使わないから、ネガティブな意見を見なくて済んでるよ。ただ、『Masterpiece』なんてタイトルでCDを出したら面倒な事になるに決まってるよね。議論を引き起こしやすいタイトルだ。自分を非難の対象として差し出してるようなもんだよ。あと商業的だと考えられてるMinistry of Soundからのリリースということも話題になってるみたいだね。どうやら、俺がMinistry of Soundのような商業的な企業と仕事をしたっていうことに不平を言ってる人たちもいるようだけど、俺としてはいかにもやりそうなことだけをやっていたくないし、みんなに驚いてもらいたいんだ。コマーシャルなことをやってショックだと思われたり、怒りさえ感じてもらえるくらいのほうがいい。それに実際のところ、コマーシャルなのはレーベルだけ、ミックスそのものはコマーシャルではないし、ついこのあいだもフランスでDJしたんだけど、沢山集まってくれた18~25くらいの若いクラウドの反応から判断するにリアクションも悪くはないよ。今回のミックスCDにはThe HorrorsやWooden Shjipsといったバンドのリミックスも収録しているから、ダンス・ミュージック・ファンだけでなく、インディー・ロック・ファンだったり、幅広い層が興味を持ってくれてるみたいだ。



Andy Weatherall Masterpiece



今回の3枚組のミックスCDは2010年から始まったパーティ「A Love from Outer Space」での一夜がコンセプトになっています。このパーティの相棒であるSean JohnstonはレーベルSabres Of Paradiseから作品リリースもある元Flash Factionということで、旧知の間柄だと思うんですけど、あなたから見て、彼はどんなDJですか?

Seanとは20年前から知り合いなんだ。いい友達でもしばらく連絡を取り合わないことって、あったりすると思うんだけど、彼もそんな友達の一人だったんだ。彼とは何年も会ってなかったんだけど、数年前に再会して、まるで空白の時間が無かったかのように昔と同じ感覚に戻ったんだ。そこから、また頻繁にやりとりするようになって、俺がイギリス国内でギグに行くときに車を運転してくれるようになったんだけど、その道中で彼がかけていた音楽にスローなものが多くて、そこから一緒にやるパーティのアイディアが固まっていったんだ。彼自身も10年以上音楽を作ってきた人間で、今はHardway Brothersというユニットで作品をリリースしているし、DJとしても本当に最高なんだよ。普段、俺はバック・トゥ・バックでプレイすることはないんだけど、一緒に出来る数少ないDJがイヴァン・スマッグとSeanなんだ。アップテンポのテクノ寄りなサウンドをプレイする時はイヴァンと、「A Love From Outer Space」のようなサウンドはSeanと馬が合うんだよ。こと、ショーンに関しては、音楽嗜好とスタイルが共有出来ていると思うね。

そして、いまお話に出てきた通り、「A Love from Outer Space」はスローな音楽、もっと具体的にいうとBMP120以下のトラックをプレイするというコンセプトのもと、平日木曜日に100~120人規模のクラブ、The Dropでパーティを始めたそうですね。

さっきも言ったように、パーティをスタートした頃に俺がSeanと聴いていた音楽、自分が好きで買っていた音楽はどれも100BPMから110, 115BPMあたりの遅いピッチのものがほとんどだったんだけど、そうしたトラックはどこのクラブでもプレイされていなかった。でも、俺はいつも自分の客を過小評価する傾向があって、「こういう新しくてスローな音楽が好きなのは俺だけだろうし、500人とか1000人のような大きなハコでやってもうまくいかないかもしれない」って思って、小さいクラブで始めることにしたんだ。それに小規模なクラブには、そういう箱ならではの親密感があるし、もともとDJを始めたのも100人から300人規模のクラブだったこともあって、DJプレイする時はクラウドの目が見えるほうがいいんだ。やっぱり、自分が最もホームと感じるのはそういう規模なんだよ。でも、DJに限らず、好きなバンドを200人規模のクラブで聴くのと、2万人規模のスタジアムで聴くのとどっちがいい?と言われたら大抵の人は小規模な会場で聴きたいって言うだろ? DJにしてもそれは同じさ。俺はいつでも小さいベニューのほうが好きなんだ。雰囲気があって、繊細なプレイやじらすようなプレイも可能だし、クラウドやサウンドを発展させていくことも出来る。だから、小規模なクラブで新しいパーティを始めることは自分にとって自然なことだったんだ。

そのパーティーで2年に渡って発展させてきたBPM120を上限とするプレイスタイルを、あなたは"Hypno-beat”と呼んでいるそうですね。

はははは。この2年、いろんな所でDJをすると、プレイが終わった後に「素晴らしかったけど、あれは何と言うジャンルなの?」って訊かれることが多くて「何て呼べばいいのかわからない」って答えていたんだ。でも、ある時、インタビューで「こういうサウンドは何っていうんですか?」って訊かれてパニックになった時に、頭のなかに"Hypno-beat”って言葉が浮かんだんだよ。俺がクラブに行き始めた頃、その当時かかっていたダンス・ミュージックはBPMが115から120だったし、そうした初期のエレクトロニック・ミュージックやアシッドハウス、ニュー・ビートは"Hypno-beat”と呼ばれていたりもしたんだよね。だから、咄嗟にそう口にしたんだ。

では、あなたが生み出した単語ではないんですね?

違うよ。昔使われていて、最近復活した言葉って感じかな。あれこれ考えて、”コズミック・ディスコ”がいいのかなとも思ったりもしたんだけど、確かに俺はディスコ・リエディットもかけるし、最近のプレイにコズミック・ディスコの要素もあるものの、全体としてはそこまでの比率を占めてないから、どうもしっくりこなくて。で、まぁ、どうしても名前をつけなきゃならないのなら、俺の知ってる初期のエレクトロニック・ミュージックやアシッドハウスなんかを指す言葉のほうがしっくり来るかなと思ったんだ。いや、本当はそういうジャンル名を使いたくはないよ。何と呼んでいいのかわからないのなら、どんな名前もつけたくはないんだけどさ。

名前ということでいえば、ミックスCDのタイトルにもなっている「A Love from Outer Space」は、80年代から90年代初期に活動していたイギリスのグループ、AR Kaneの同名曲から取られていますよね。さらに今回のミックスCDの最初と最後には、そのAR Kaneの「A Love From Outer Space」とあなたとThimothy J. Fairplayの新たなユニットであるAsphodells名義で製作したカヴァー・ヴァージョンが収録されています。この曲とタイトル、AR Kaneというアーティストの特殊性についてはどのように思われていますか?

確かに、AR Kaneの「A Love From Outer Space」は80年代にオリジナルが出たときから、ポストパンク、ディスコ、エレクトロニック・ミュージックといった俺が好きないろんな要素を持ち合わせているところが気に入っていたんだ。もちろん、「A Love From Outer Space」というパーティの名前もこの曲からもらったし、カバーバージョンもいつか作りたいとずっと思っていた。そして、このパーティをテーマにしたミックスCDをリリースすることに決めてから、最初にこの曲のカバーバージョン、最後にオリジナルを使うことは、自分にとってとても理にかなっていると純粋に感じたんだよ。





今回のミックスCDをリリースする一方で、SoundCloudにはあなたのライヴ・ミックスがいくつもアップされています。また、BBC 6 MusicやXOYO showといったラジオやポッド・キャストでもあなたの選曲を楽しむことが出来ますよね。タダで音楽が聴けてしまう今という時代の活動スタンスについてどうお考えですか?

ミックスCDのセールスに関してはよく分からないけど、DJとしては怠け者でいられなくなったのは確かだね。いまの時代、プレイが録音されて、Mixcloudやsoundcloudにアップされたら、聴く人も当然いるわけだから、クラブでプレイするときに毎回同じ事は出来ないって思うのは当然のことだし、いいことだと思うよ。というのも、かつての俺は、普段、スタジオに籠もっていて、思うようにDJの準備が出来ない事が多かったから、仮にいいDJセットが出来たら、それをちょっと変えて、しばらく引っ張っていたんだけど、今はそれが出来なくなった。思わず秘密を話してしまったけど、でも、これはいいことなんだよ。他のDJはどうかわからない……いや、たぶんみんなも同じ事を考えてると思うんだけど、DJはもう怠けていられないし、俺の場合、20年間、俺を追っかけてきてくれたファンでさえもギグごとに違うセットで臨んでいることを分かってもらえるはずだよ。うん、今の俺は間違いなく勤勉なDJだね(笑)。





そうしたDJ活動を精力的に行う一方で、現在、制作中というアルバムは「A Love from Outer Space」での経験がなんらかの形で反映されているんでしょうか?

そうだね。アルバムはパーティ「A Love From Outer Space」を意識した内容になっているよ。そして、この作品はリスニングとしての側面ももちろんあるけど、パーティでかけられるようなサウンドを念頭に置いているね。すでに8曲くらいが出来上がっているんだけど、テンポも合わせてあって最初は105BPMくらいからスタートして、曲を追うごとに、115bpmくらいまで上がっていくんだ。そして、いま作っている残りの2曲は、BPM118から120BPMくらいになると思う。そのなかにはボーカルが入っている曲もあれば、インストルメンタルもあるよ。ミックスCDに収録されているThe Asphodellsの2曲も全く同じバージョンではないかもしれないけど、何らかの形でアルバムに入るだろうね。

そのThe Asphodellsの相棒でもあり、近年のコラボレーターでもあるTimothy J. Fairplayについて教えてください。

彼は俺のスタジオのエンジニアなんだ。かつては、Battantというユニットで音楽を作っていて、フランスのレーベルKill The DJから作品をリリースしていたギタリストだ。俺は地下にスタジオをいくつかを持っていて、そのうちの1つで彼が音楽を作っていたこともあって、前のエンジニアが去ったときにTimothyが俺のエンジニアになったんだ。彼は俺がどんな音楽が好きでどういうサウンドを求めているのかを知っていたから、俺のエンジニアになったのも自然の流れだった。そして、彼は俺がリミックス作業をする際のエンジニアでもあり、プログラマーでもある。The Ashphodellsでは一緒に曲も書くしね。そして、とても才能があるだけでなく、威張りもせず、つきあいやすい人間だから、非常に仕事がしやすいんだよ。彼と仕事をするようになってから、ここ数年で音楽的に最も積極的になっていると思うね。

さらに、あなたはこの春に新レーベル、Bird Scarerをスタートさせました。Timothy J. Fairplayがその第一弾アーティストとして作品をリリースしたばかりのこのレーベルは、2001年から現在まで運営されているレーベル、Rotters Golf Clubとどのような棲み分けがなされているんでしょう?

Bird Scarerは300枚のヴァイナルのみをリリースするというコンセプトのレーベルだから、自分一人でやることにしたんだ。Rotters Golf Clubにはスケジュール管理もPRも必要だから、何人かのスタッフを雇っているんだけど、Bird Scarerで各タイトルの収支がプラスマイナスゼロになるような300枚レコードを出すためだけに誰かを雇うわけにはいかないし、金にならない仕事をRotters Golf Clubのスタッフにやらせるわけにもいかないよ。だから、2つのレーベルをきっちり分けることにしたんだ。逆にBird Scarerの身軽なスタンスであれば、いいデモをもらって世に出したいと思ったときに1ヶ月後には出せるしね。

DJ、プロデューサーとして、さらにレーベル・オーナーとして、長らくキャリアを積み重ねてきて、2012年の今、ご自分の音楽人生についてどんな感慨をお持ちですか?

若い頃はメディアなどで騒がれ知名度が上がることで、その期待に応えたり「俺はこういうことをやってるんだ」という意思表示をしないといけないと感じていた。キャリアの始めの頃はやっぱり怖かったからね。Primal Screamの「Loaded」のおかげでかなり早いスピードで名前が売れたことで、突然シーンの最前線に押し出されて、細かい分析をされたり、「すごいレコードだ」「天才だ」と賞賛されたりもした。その6ヶ月前はただのレコードコレクター少年という感じだったから、あの時期は辛かったよ。俺が必死になって読んでいた雑誌に自分の名前がトップで載るようになってしまったんだからね。でも、そのうち、ほかの人にスポットライトが当たり始めて、ここから先、ようやく自分の好きな音楽やDJだけをやっていればいいという状況になったことで、ようやくほっと出来たんだ。そして、ある程度の年齢になって、バックカタログ(ディスコグラフィ)もいい感じに見えるようになってきたし、自分の仕事にも満足するようになった。背伸びしたり大げさに見せたりすることなく、俺は今年で49歳になったというわけさ。

Words / Yu Onoda
Translation / Eriko Hase
Published / Wednesday, 04 July 2012

Photo credits /
Header - Dvlx
Holding record - The Blues Kitchen
Smoking - Joshua Gordon


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