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Toshiya Kawasaki: The world of Mule Musiq
Toshiya Kawasaki: The world of Mule Musiq

RAが日本で最も尊敬されるレーベルの1つであるMule Musiqの、その裏に潜むボスに貴重なインタビューを行った。

Lawrence、DJ Koze、Jus-Ed、Optimo、Minilogue、DJ Sprinkles、Henrik Schwarz、そしてThe Revenge。彼らの共通点とは一体なんであろうか?それはToshiya Kawasakiによって2000年代に設立された日本のレーベル、Mule Musiqだ。姉妹レーベルのMule ElectronicやEndless Flightも含め、そのカタログに並ぶ海外勢のラインナップだけでダンス系フェスが成立しそうなほどのメンツがそろっている。KawasakiのA&R力がその主な理由と言っていいだろう。国内でビックになることにフォーカスを置くレーベルが多い中、国外に注目しながらも国内へも視野を向ける彼の姿勢こそが、このレーベルが世界的に成功している要因として挙げられるだろう。

しかし、Muleが世界中でハウス/テクノ・レーベルとして知られる一方、それを主宰するKawasakiの存在はあまり多く語られていない。ファッション業界に務めた経験を持つ彼が、DJとして国外において定期的に活動し始めたのはここ最近のことだ。今回、Yusuke Kawamuraがこのレーベルのボスを訪れ、レーベルの起源、そしてなぜ彼がこれほど質の高い音楽を何年にもわたって維持しているのか話を訊いた。



Mule


まずレーベルの設立はいつになるんでしょうか?

レーベルそのものは2004年です。もともとMule Musiqは、それ以前にブッキングエージェントとしてはじまっているんです。それは11年前の2001年ですね。レーベルとしては2004年に1枚目(Dublee『Echo Euphoria』、リリースはMule Electronic)をリリースしたのですが、国内のセールスは思った様にはいかなくて…さらにワールドワイドのディストリビューションのセットアップにすごく時間がかかって。はじめの1年はそんなにレーベルとしては活動がなかったんです。

ブッキングをやっているなかで、レーベルもやってみたいと思ったんですか?それともレーベルをやるという明確な目標があったんですか?

もともとは洋服の仕事をしていて、あまりにも忙しかったので最後の1年は幾つかの会社とバイヤーだけの契約にしてもらったんです。でもパーティは毎月やってて、レーベルをやってみたいと思ってはいたんですけど、その仕事の目の前のことで一杯一杯で。不況の煽りもあって、洋服の仕事も契約満了とともに終わり、そのときにまた同じ洋服の仕事を新たに続けようという感じではなくて。そこで、そこまで元手がなくはじめられることと考えたら、招聘業務かなと。

その頃は、まだヨーロッパのアーティストがここまで頻繁に日本に来ているような状況ではなかったので、もしかすると仕事になるのかなと思いました。あとはKompaktの存在ですね。Kompaktの音を聴いて「こういう新しい音楽があるんだ」と思って。その頃、Michael Mayerがヨーロッパで有名になってきた頃で、でも日本ではまだあまり知られていないような状況だったんです。それで彼のミックスCDがリリースされた段階でディストリビューターの人に「呼びたいんだけど、とっかかり作ってくれない?」ってお願いして、そこからメールでやりとりしはじめたのが2001年ぐらいですね。

はじめから「世界展開が視野にあった」という感覚だったんですね。

働いてたアパレル会社も、もともとパリが母体だったので、「日本で」というか言ってしまえば「東京で」というテリトリーは成り立たないんじゃないかと思っていました。それはアパレルの段階からそう思っていましたし。

個人的にはMule Musiqというレーベルの最初の印象としては札幌のKuniyukiさんの作品というイメージが非常に強かったんですけど。

レーベルとしてのMule MusiqはKuniyukiの作品をリリースするために作ったレーベルだったんです。Mule Electronicのほうがレーベルとしては先なんですけど。Kuniyukiさんと知り合ったのは14年くらい前。Degoの2000Blackのコンピがリリースされた時で、後は彼が友達へのプレゼントとしてリミックスしたAnanda Projectの"Cascade of Colour"をみんなが持っててみたいな時期でした。とにかく「こんなすごい人が日本にいるんだ」と思って。それこそ、そのはじめて会ったときからレーベル始めるまで、ひたすらリリースしたいと口説いて。で、まずは1枚のシングルから始まって、順調に売れて、それでアルバムへという流れで。



"極論、売れなくても構わないので、やはりCDとして出す価値のあるものであるかということ"




なみに、それぞれのレーベルのコンセプトをと思うんですが、Mule Musiqは、Kuniyukiさんの音が象徴的ですが、生音であるとかディスコ的なものとかそういう感覚があって、Mule Electronicはテクノ、エレクトロニックなディープ・ハウス寄りというのがイメージとしてあると思うんですが。さらにEndless Flightがあって。

もうね、Mule Electronic辞めちゃったんです。

え!そうなんですか?

今年の2月に。それは、ここ最近テクノというか無機質な感じの音楽を聴かなくなったというのが一番で、無理して続けて行く事に意味はないかなと。Endless Flightは、いまの姿勢としては例えば同じ様にディスコっぽい曲があっても、ギターや鍵盤とか自分で弾いたりとか演奏の要素がある曲、言ってみればマンパワーのある曲はMule Musiqからリリースして。サンプリング・ベースのものはEndless Flightという感覚で出してますね。

個人的には、Endless Flightは初期にOptimoのミックスCDを出したりとか、DJミュージックをテーマにしているというか、言ってしまえばミュージシャンとかよりもエデットとかそういう感覚のものかなと思ってたんですけど。あながちそのイメージもいまの話を聞いてるとすごく離れてるわけではなさそうですね。

そういうところはあるかもしれませんね。Endless Flightは、本当にパっと聴いて良ければ簡単に出来てる音楽でもかまわないかなというか、悪い意味じゃなくてそこに“ソウル”が無くても良いかなという部分があります。

これまでレーベルを継続する上で最も大変だったのは?

やっぱり金銭面でしょうか。まず、それまで僕がいたファッション・ビジネスと、音楽ビジネスだと金銭感覚がまったく違って。まず売れ方が違うというか。この前、Chateau FlightのGilbertと夏にパリで会った時に話してたら、「ピーナッツ売ってるみたいな感覚だ」って言ってましたね。昔みたいに何千枚売れるような時代だったら良いんだろうけど、500枚とかそういう状況で。

ダウンロードなんて1曲数百で本当に駄菓子の値段ですよね。

本当。そうなんです。お金についての苦労は初期ですね。レーベル始めるまでに割と結構な値段を出して買うようなレアなジャズのレコードとかを集めてたんですけど、それをかなりの枚数売りましたね。2004年のはじめの1年の運転資金はそれでした。お金を出して買えるものは、いつかお金があるときに買えるかなと思って...便利な時代だし。



Mule


運営していて、転換期と思えるような時期ってありましたか?

まず、一番始めはSly MongooseのRub'n Tagのリミックス“Snakes and Ladder”がヒットしたことでしょうか。あの曲でMule Musiqを知ったという人も多いと思いますね。避けているわけではないんですけど、日本のシーンとはあえて距離を置きたかったというところが少しあって。自分も知らなかった人を積極的に見出して、リミックスを入れるなりしてライセンスリリースするというのは立ち位置として良いかなと。それだと相手側も興味を持ってくれるかもしれませんし。

海外へのパイプ役みたいなところですかね。

はい。それはそれでおもしろいかなと思っていて。まずはそれがひとつ目の転機です。あとはDJ KozeとかLawrenceがラインナップに加わった辺り。ここ最近ではDJ Sprinklesのアルバム『Midtown 120 Blues』が2009年のRAのナンバーワンになったこと…一応、自分の心情としてなにかを始めるのであれば一番を目指そうというのがあったので、ひとつ一番になれたというのは転機かもしれませんね。しかも、あれだけポップなアルバムでも無ければ、テーリさん(Terre Thaemlitz)自体がそのときいわゆる“時の人”でも無かったはずで、そして一般的に知名度の高いアーティストでは無いにも関わらず。なのにRAの様にきちんと音楽をピックアップしているメディアが評価をしてくれたというのは、「やってきてよかったな」って思いましたね。

さきほどの、日本人と海外のパイプ役みたいな話なんですけど、前に日本人のアーティストを集めたコンピ『The Definitive Japanese Scene Vol 1』を出されていたじゃないですか? そういうのを海外に紹介しようみたいなところはあったんですか?

たぶん、そうですね。そうだと思います。まだシーン全体もセールスも含めて良かったのと、ちょっとおこがましいですけど、そういう役割を担っても良いのかなと思った部分があって。そういう人が他にいなかったので、出来るのであればフックアップを、と思った部分はありましたね。

あとは国内外、リミックスも含めて、旬のアーティストをいち早く起用している印象があるんですが、どういうところからはじまるんですか?

僕から声をかけるのは基本的にほとんどリミックスのみですね。あとはアーティストの友だちの友だちとか。以前、海外のインタヴューでも“テレフォンショッキング”って言っていたんですけど、まさにその感じに近いですね。リミックスをやってもらったら「オリジナルも出せる?」って広がっていくこともありますし。そういう感じですね。ただし、大量のデモは来ますけどね。量が多いので全ては聞けませんが。

すばらしいアーティスト・アルバムもたくさん出されていますが、出す基準みたいなものはあるんですか?

基準はやはりある程度シングルが成功していることと、ミュージシャンとしてもそうだし、人として一緒に仕事ができるかどうかっていうのはすごく大事ですね。シングルはまだ簡単というか、そこまで考えてないというか。アルバムはレーベルを象徴するものにもなるので。極論、売れなくても構わないので、やはりCDとして出す価値のあるものであることというのはあります。「アルバムを出すまで来たんだ」という達成感と成長感があるような人のみアルバムは出したいなと思っていて。



Mule vinyl, cds
stefan marx skateboard


あとMule Musiqってヴィジュアル・イメージに主張のあるレーベルという感覚があるんですが。

単純にやっぱり僕がファッション業界の出身なのでヴィジュアルは大切にしているんだと思います。そういえば、音楽をやっている人のなかには、Mule Musiqって“ファッション的”に見えるのかもしれなく、あんまり良いイメージがないという人もいると思うんです。でも、ファッション業界にいた人間からすればファッションって、仕事としてすごくハードで、ファッション的であり続けるというのは簡単ではないので、揶揄するように“ファッション的”と使うのであれば、その人たちはもっとファッションに関して知った方が良いんじゃないかなと思うくらいカチンと来ることがありますね。あと、やっぱりレコード屋さんで観て、パッとかわいくなかったら手に取らないじゃないですか?ヒットしている作品とか、残っているものってなんだかんだ実はジャケットが良かったりすると思います。

顔があるというところですね。

と、思うんですよね。もちろん、それが過剰になりすぎないように、主張性があって洒落たものでありたいなと思うんですけど。すごくディコラティヴなものは好きではないですね。環境にも悪いし。

あとマテリアルなパッケージというところで、ずっとアナログも継続して出されているわけですけど、アナログの見通しというか、風前の灯火のCDとは逆に、むしろアナログは少量ながら残っていくみたいな話もあるじゃないですか?

僕もそう思いたいですね。やっぱりこの1年半で、セールスって劇的に変わって。Mule Electronicは売れたり売れなかったりで、Mule Musiqはセールス的に安定して何とか売れていたんですけど、この1年半で良い物を作ってもあまり数字に反映されないというか。例えば、5年前だったら「著名なアーティストのリミックスを入れれば、これぐらいは売れるだろう」みたいなことを考えたら、実際は10%くらい下みたいな数字だったんですけど、いまはそういうのがまったく読めないですね。

そういう状況だから、有名な人に多額のアドヴァンスを払って12インチを作るとか、たまには良いですけど、それよりも無名の新人を発掘することに全神経を傾けようと思っていて。本来、インディペンデント・レーベルってそういうものだと思いますし。ある程度やってきて、著名な人の曲もたまにはリリースするのも良いかなというのが、3~4年前の感覚だったんですけど。でも、それはMule Musiqとしては大して身になっていないという感覚があって。それよりは新しい人をリリースして、多くは売れなくても聴いてくれている人は聴いているような状況になってくれれば、アーティストにとっても良いし、レーベルも「レーベルをやっている感」が出てくるので、そっちの方が自分には向いてるかなと。



"理想は全盛期のPlayhouse...
それが自分の目標かな"




理想とするレーベルはどこですか?

理想は全盛期の〈PLAYHOUSE〉です。僕はレーベルのA&Rとして、いちばん尊敬するのがATAなんですけど、あの人を超えるA&Rはひとりもいないと思ってます。それくらい凄いと思っています。音楽を選ぶセンス、DJもすごいのはもちろん、人としての器もすごいから、Ricardo VillalobosやIsoléeという人たちがリリースしていると思うんですよ。それこそ、彼らはゼロからスターになっていったと思うので。初期の〈WARP〉とかは別ですけど、2000年代前後とかだと〈PLAYHOUSE〉になるかなと思ってます。それが自分の目標かなという。

今後、Muleの括りでやってみたいことは?

近しい人には全員よく言ってることなんですけど、もしスポンサーが見つかれば、Mule Musiqのレストランをやってみたいです。今の僕の頭のなかのほとんどは食に関することと、ワインのことです(笑)。

新しく、クリエイティヴな感覚とするとそこかなと。

と言うよりは新しいことにチャレンジしたいですね。いま12年目なので。もちろん続けていこうとは思ってるんですけど。新しいことにチャレンジしないと…それが音楽にも良く作用するのかなと思ってて。そんな気もします。


Translation / Sophie Knight
Published / Tuesday, 26 June 2012

Photo credits /
Yukari Takanose


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