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MS Stubnitz in pictures
MS Stubnitz in pictures

Bloc 2012フェスティバルでの特別なショウのいくつかは、漁船を改造したユニークなヴェニューMS Stubnitzで行われる。RAのHolly Dickerがその内部を探検してみた。

このMS Stubnitzという、およそカルチャー・センターには見えない2,542トンの元漁船は過去20年ものあいだ、その船室を利用した多様なアート・イベントを開催してきた。ほぼボランティアで運営されているStubnitzクルーはそのプロジェクト同様、流動的なメンバーで構成され、1回の週末かぎりのヘルパーもいれば、長年のあいだ在籍しているスタッフもいる。今年の終わり頃までには、およそ100人以上のスタッフがこのプロジェクトに関わったことになる計算だといい、プロジェクトは活発なアート活動のための基盤となっているのだ。

これまでコペンハーゲンやアムステルダム、ハンブルグにも赴いてきたMS Stubnitzはこの7月にはBloc 2012のヴェニューのひとつとして初めてロンドンへ登場する。今回、RAのHolly DickerはこのMS Stubnitzの船長を務めるUrs Blaser("Blo"の愛称で知られる)を訪ね、この複雑かつ冒険的なプロジェクトの実態を探った。





歴史

Stubnitzは1964年に旧東ドイツの4大船舶建造所のひとつであるVolkswerft Stralsundにて建造された。この80メートル級の船体を持つ船は、バルチック海で漁業を行う小型船舶によって構成される漁団のメインとなる船として造られたのだ。内部には4つの冷蔵室を持ち、1,400トンもの収容力を持つとともに、60名の船員が船上生活を送るためのキャビンが30室も備えられていた。Stubnitz以下49の漁船船団は往時の旧東ドイツにおける漁業を根幹から支え続けたが、東西冷戦の集結にともなう東西ドイツ統合によりその船舶は売却されることとなった。







生きたアート・スペース

Stubnitzの歴史にUrs BlaserことBloが関わりはじめるのはこのあたりからだ。Bloはそれ以前も10年近くにわたってハノマグ(訳注:かつてメルセデス・ベンツが製造していた商用トラック/バン)を改造した「移動式メディア戦略ユニット」をヨーロッパ各地で走らせていた。彼はこうした移動式のオーディオ・ヴィジュアル・イベントを各地で展示することによって「フィジカルなネットワーク」と文化交流の基礎を作り上げようとしていたのだ。この船の存在を知った彼は、彼が展開してきた活動をより大きな規模で実践するためにはこれこそ格好の舞台だと確信した。2年間にもおよぶ資金集めと交渉、前オーナーへの売り込みなどを経て、彼はついにStubnitzを手に入れ、彼はその船を「最も古く、醜い兄弟」と称した。

それからさらに2年の改造工程を経て、Stubnitzは新たに生まれ変わった。かつて荷室だった空間は2つのコンサートホールに取って代わり、各種ライブやエレクトロニック・ミュージックのライブ、展覧会、パフォーマンス、マルチメディア・イベントへ対応可能なスペースとなった。ラウンジ・エリアやバーは船尾部を利用して造られ、甲板も野外ライブスペースとして活用されることとなった。「最初の2年は、そりゃもう度重なるトラブルの連続だったよ」とBloは回想する。サウンド・エンジニアやアーティストたちに船舶知識が備わっているはずもないのだがら、さもありなんといったところだ。「とにもかくにも試行錯誤の連続でね。えらく効率の悪いやり方を選んじまった、ってわけさ。」

イベントの開催を重ねながら、Stubnitzではその船内にあるA/V設備(とはいえ、ぼろぼろの機材と年代物のコンピューター・モニターだけだが)を使ってその活動をドキュメントとして記録し続けている。レギュラーのレジオ放送は別として、船内で行われるあらゆるイベントは記録およびアーカイブ化され、その蓄積は今や膨大な量となっているそうだ。

この船の二面性を表すように、そのクルーは主に船舶スタッフとイベントスタッフの2つに分けられる。とはいえ、その2つのスタッフ間における業務の境界線はごく曖昧なものだ。たとえば、このプロジェクトの特性として、カルチャー面でここに関わろうとするスタッフはどこかしら船舶業務にも興味を持ちはじめるものだし、その逆もまたしかりなのだ。したがって、この船での生活と労働のダイナミクスは実にユニークなものになる。伝統的に厳然たる階級が存在する船舶運営の世界とアート的な自由主義がブレンドされることによって、ゴスやモヒカン、つなぎ姿の船員などが奇妙にミックスされた混成集団が出来上がったのだ。








パーティ・タイム

1994年サンクト・ペテルスベルクへの処女航海以来、Stubnitzは15もの港に寄港し、北ヨーロッパ10カ国を巡ってきた。なかでもアムステルダム、コペンハーゲン、ハンブルグはStubnitzの定期的な寄港地であり、そこでは定期的なものも特別なものも含めたイベントが開催される。移動式かつ非常にニュートラルな性質を持つヴェニューとして、Stubnitzはあらゆるシーンやジャンルに対して自由な存在でありつつ、そのすべてに開かれた存在でもありつづけているのだ。

Stubnitzが持つカラフルなキャリアを裏付けるように、そこにはいくつものハイライトがある。2005年、ニューカッスルのVersion festivalではAutechreとMonolakeがここでプレイし、コペンハーゲンのジャズ・フェスティバルでは10日間にわたって30ものコンサートが開催された。アムスではRicardo VillalobosとRichie Hawtinがこの船上でバック2バック・セットを披露した。ここに挙げたのはBloの個人的なお気に入りでしかないが、これだけでもこのプロジェクトが内包する音楽的柔軟性が窺い知れようというものだ。しかし、その過去20年にもおよぶ実績や継続性にも関わらず、その未来は非常に不安定なものなのだそうだ。Blo本人にもその将来はわからないのだという。「もともと、明確な目的があるプロジェクトというわけでもないので、運営は毎月ギリギリの状態でやってるようなものなんだ。20年間ずっとそんな感じさ。ほんと、根無し草のようなプロジェクトさ。」




Words / Holly Dicker
Translation / Kohei Terazono
Published / Wednesday, 20 June 2012


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