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Open Reel Ensemble: パラレルワールドの創出
Open Reel Ensemble: パラレルワールドの創出

新たな音楽手法を探る若き5人組が、オープンリールとテープを通じて見る独自の世界観について語る。

いにしえのオープンリール式録音機を楽器として用い、新たな音楽手法を開拓するユニットOpen Reel Ensemble。ステージに複数台のオープンリールを持ち込む迫力の演奏形態、リールデッキを改造しテープの音質変化を最大限に利用した唯一無二の音像は、2009年の結成時に文化庁メディア芸術祭「学生CGコンテスト インタラクティブ部門」で優秀賞を受賞し、その後わずか3年でスペインのSonar festival、オーストリアのARS Electronicaに招致されるなど、日本のみならず世界からも高い評価を受けたと言えるだろう。

元々美術大学での課題がきっかけで生まれたというこの若きグループは、現在、和田永(Reel, Concept)、佐藤公俊(Reel, DJ)、難波卓己(Reel, Violin)、吉田悠(Reel, Percussion)、吉田匡(Bass)の5人で活動している。先日坂本龍一氏のレーベルcommmonsからリリースされたアルバム『Open Reel Ensemble』には、最古の磁気録音音源であるオーストリア皇帝Franz JosephⅠ世の声、ソニー創業者であり国産初のテープレコーダーを開発した井深大氏の音声に加え、彼等が敬意を表する、アニメ『鉄腕アトム』を担当した音響デザイナーの先駆け的存在、大野松雄氏のスポークンワードも入っている。<音っていうのは本来、非常に不安定なものでしょう。すぐ消えちゃうものだしね。だからそうすると、非常に抽象的なものだったら(音として)出せるかもしれない。で、抽象的なものになると、どんどん進むと、この世にない音になっていく。そうか、この世に“この世ならざる音”ってあるんだな、と思った───>まさに“この世ならざる音”を携えてヨーロッパツアーに臨む彼らに、オープンリールとの出会い、独自の制作手法、コンセプトについて語ってもらった。




皆さんはまだ20代半ばの年齢ですよね。そもそもどういう経緯でオープンリール・テープ/デッキと出会ったのですか。

難波: そもそも最初にデッキを持ってたのは和田君だけだったんですよ。和田君が中学生の時に、知人の方からデッキを何台かまとめてもらったそうで。

オープンリールはすでに生産されていない機材で、いま流通しているのは中古市場のみですよね。

難波: いま全員のトータルで、デッキを20台ぐらい保有していて。

吉田悠: 最近増えたんだよね。

和田: ある方から「贈与します」というメールが来たんです。「捨てるには忍びないので、僕らに渡った方がオープンリールのためだと思い……」と言ってくれて。

難波: 整備もしたんだけど、売ろうと思ったら一台5000円ぐらいにしかならなかったらしくて。たまたま僕らの活動をご存知だったみたいで、「引き取りに来てもらえれば」ということで。そのデッキはすごく状態もよくて、ハードケースもついていて。

吉田悠: お宝だよね。

難波: お宝なのか、部屋を埋め尽くすオバケなのか(笑)。

でも音を放つためにその巨大なリールを回すアクションが、単純に観てカッコいいというか。

和田: 僕らがそもそも本来の使い方を理解してないんです(笑)。最初にオープンリールのデッキを見た瞬間に「あ、これ楽器だ」って誤解したところからこのプロジェクトが始まりました。

難波: 和田君が中学生の時に初めてオープンリールを手にした時も、使い方もわからずにいじってましたね。他のメンバーはその姿を見ていて。

ロックスター的といったら語弊がありますけど、観てると「自分もやってみたい」と思わされるところがありますね。ヒップホップのスクラッチなんかもそうですけど。

和田: その中学生の時も、オープンリールでキュッキュキュッキュこすってたんです(笑)。だからそもそも最初から、録音機というよりも「変な音を出す変な機械」だと思ってたんです。本来の使い方じゃなくて「回転おもしれぇ、やべぇ」みたいな。だからベースの吉田匡なんかは、最初にテープのキュイーンっていう回転を見た時に、それこそピート・タウンゼントが腕を回してギターをかき鳴らしてる姿を連想したみたいですよ。だから単純に、あのメディアが持ってる高揚感も必然というか。あれは音と回転が物理的にシンクロしてるわけですから。僕ら的にも「回してるとアガる」。


「オープンリールを、より幅広いジャンルの
ポピュラーな音楽に落とし込むことに
興味がありましたね」



バンドを最初に始めた2人である和田さんと佐藤さんは美大で一緒だったと聞いていますが、メディア・アート的な着想の面白さ、あるいはテープによる音響実験にはとどまっていませんね。あくまでビートやグルーヴにも意識的な「バンド」だという点が、Open Reel Ensembleの真のオリジナリティだと感じました。

和田: メンバー各々思っていることはあると思うんですけど、テープを使ってバンドを始めるという時に、いわゆるミュジーク・コンクレート(フランス発祥の現代音楽。録音技術によって音響を再構成する手法)の実験性みたいなところは僕にとっては予想内なところがあって。むしろオープンリールを、より幅広いジャンルのポピュラーな音楽に落とし込むことに興味がありましたね。

吉田悠: オープンリールを録音機材ではなく、楽器だと思って始めてしまってるがゆえに、どうしても「奏法」という発想になりますね。オープンリールの物理的な機構から奏法を考えて、いかにして、自分のやりたいタイミングで目的の音を出すかという。それをいかにリズムに結びつけるか、というのはアンサンブル、セッションの発想ですね。

和田: オープンリールの「奏法」って、手で触ることによって音が再生されるという点で、打楽器に近いんです。人類が最初に見つけた楽器は打楽器だとも言われていますが、僕らもまずアンサンブルでリズムを合わせて、カッチリ合った時の気持ちよさを楽しみたいというのがまずありました。





このプロジェクト以前の音楽経験というのは?

和田: (佐藤氏を除いた)この4人で高校の時にバンドをやってました。

難波: 今も活動してる「蒸気青月楽団」なんですけどね。いわゆるギターがいて、ベースがいて、というバンドですが、いろいろゲストを迎えてやるスタイルです。メンバーを固定せずに、アメーバ的にメンバーを入れ替えながら。佐藤君に入ってもらうこともあります。

佐藤さんはDJとしても活動されてますよね。

佐藤: そうですね。僕は元々ヒップホップやジャズなどのブラックミュージックも聴いていて、クラブカルチャーから入って。高校に入ってすぐに、それまで貯めてたお年玉でDJセットを買ったんですよ。そこからDJだったり、あと高校の時に聞いたHIFANAが衝撃的で、曲を作ることに興味を持ち始めて。美大へ入ってからは実験的な音楽も作りつつ、いわゆるダンスミュージックを作っていたらこのプロジェクトに引き込まれたという感じです。

和田: もちろん音楽家としてやっていくつもりではいたのですが、Open Reel Ensembleに関しては、メディア・アート的なプロジェクトでもありました。今回のアルバムでも、DVDの映像はこの吉田兄弟が中心となって、自分達で録りおろしたんです。音楽を軸にしつつも、それぞれ音楽以外にも持ってるものがあり、さまざまな視点が混ざり合ってるのがまた面白いなと。その辺も、他のバンドとちょっと違うところかもしれないですね。

オープンリール・デッキを4台使ってバンドをやるということ自体が相当オリジナルというか、突飛なアイディアですよね。このスタイルはイケる、っていう確信めいたものは最初からあったんですか?

和田: 単純にみんなの好奇心なんですよ。本当に遊び心というか。オープンリールで、プロジェクトとしてできるだけやってみよう、みたいな。それの過程での達成感みたいなのはありましたけどね。ライブをやって、オープンリールいじってお客さんが沸いてるのを体感して「おもしろい!」みたいな。

吉田悠: あんた常々「こんなの絶対ヤバイっしょ!」とか言いながら練習してんじゃん(笑)。

難波: 「オープンリール毎日見ても飽きないわー」とか言ってるんですよ(笑)。

吉田悠: 実は確信を持って、ヤバいと思ってやってるんですよ。

Open Reel Ensembleのサウンドの作り方のプロセスを解説していただけますか。

和田: わかりやすい例でいうと、一回普通にトラックを作るんですね。それをオープンリールで録って、2分の1の速度で、ものすごく遅く再生してみます。そうすると、時間が引き延ばされたように感じられますよね。そのトラックの上に、今度は普通の時間軸でドラムを載せてみたり。逆に、すごくゆっくり楽器を演奏して、それを録音して早回しで再生したり、ということもします。そうやって作った音をレイヤーで重ねることで、いろんな再生速度で流れてるものが重なって曲になったり、っていうやり方があります。

一種のポリリズム的な。

難波: あるいは、例えば普通のキーの「ドレミファソラシド」を使いたい時には、まず1オクターブ上で、しかも半分の速度で「ドレミファソラシド」を弾いてみます。それを録って倍速で再生した「ドレミファソラシド」っていうのは、メロディとしては普通の「ドレミファソラシド」でも、音色だったり雰囲気が変わるんですね。それをどうやって使うのか、みたいなところです。それは1曲ごとに違いますけどね。例えば僕らがアルバムを作っていたとき屋敷豪太さん(元mute beat)にドラムを叩いてもらったんですが、その時も倍速で叩いてもらいました。キックやスネアの音も高めで叩いてもらって、それを1/2のスピードで再生したんです。後でこうしようって思ったら、録る時はこのぐらいの高さ、このぐらいのスピード、と、後で落とし込む時のことを最初に考えて音をつくります。







佐藤: いちばんわかりやすいのは、再生速度を変えることでの音色の変化だと思います。例えばトレモロ効果みたいなのも、楽器を弾く時に普通にトレモロをかけるのではなく、まず楽器の音をオープンリールに録って、再生しながらテープを触ることで、ヨヨヨヨってゆがませることができるんですよ。そうすることによって、オープンリールのヒスノイズも含めて、空間丸ごとゆがめているような音色の変化ができます。この手法はメロディであったり、リズムトラックや、スネアの微妙なサステインにも使います。もっと顕著にいえば、グリッドに沿って打ち込んだ普通のリズムでも、オープンリールを揺らすことによって、クオンタイズにカチッとはまったものがどんどんズレていくんです。そうやって録音してるものをゆがめたり…また僕らは、録音しながらゆがめるっていうこともやるんですよ。つまりゆがめた時だけズレて、ゆがみがなくなった時に普通のクオンタイズに合うっていう録音ができます。

和田: ゆがめた瞬間だけなんだよね。

佐藤: そうそう。そういう意味での時間の変化、再生速度の変化っていうのが、オープンリールによる制作手法のわかりやすい例かと思います。

難波: オープンリール・デッキってヘッドが3つあって、再生のヘッドと録音のヘッドが離れてるんです。なので録音した音がそのまま、わずかコンマ数秒で遅れてまた再生されるんですよね。そのわずかな間に手でゆがめることで、録音しながら音をゆがめられるという。

佐藤: あと顕著なのはリバーブですよね。リバーブをたっぷりかけて録音した音をオープンリールでゆがめることで、元の音だけじゃなく、リバーブの空間ごとゆがめられるんです。

和田: テープというメディアの不確定性というか、人間の手で触ることによって…コンピュータのシミュレーションとはやっぱり違うんですね。倍音なんか特に。音色の感覚も、これぞテープ、という。そのメディアが持ってる音色、それ自体をプレイするというか。空気感もプレイする、みたいな。

吉田悠: MIDIとかで作った音にも、テープを通すことでヒスノイズや揺れが加わりますし。それプラス、さっき「オープンリールを楽器として演奏」って言いましたけど、演奏って1回しかできないんですよ。楽譜通りにギター弾いても、弦の触り具合とかで毎回全く同じ演奏にはならないように、録音しながらテープにズレ、ゆがみを加えるのも、厳密に言えば1回しかできない。そういう生楽器に近い感覚で録音し直してるんですよね。

和田: まさに不安定性だね。瞬間、瞬間。刹那的だね。

難波さんが「後で落とし込む時のことを最初に考えてから音をつくる」とおっしゃいましたけど、曲の完成形のイメージは、音を出し始めた時点からできているんですか。

難波: イメージはありますが、まあ、やりながらですね。

佐藤: 最初にいくつか音を出して作ってる時点で、何らかの風景が見えてくるんですね。逆にいえば、その風景が見えてこないうちは進まないですね。

風景が見えてきたら、そこに向かって進んでいくようなイメージなんでしょうか。

佐藤: そうですね。見えてくるキッカケはそこで鳴ってる音色だったりとか……例えばシンセの音ひとつでも、リールでゆがめたり別の音を足していくうちに見えてくる風景もあったりして。オープンリールで曲をつくるっていうのは、その風景をできるだけ明瞭にしていく作業なのかなっていうように僕は思ってます。

和田: 僕ら、「磁力の響きをプレイする」ってよく言ってるんですけど、いろんなメディアがあって、すごく便利なメディアもあって、その中であえてオープンリールを使うのは、テクスチュアとして選んでいるという感覚があります。例えば絵を描くにしても、画用紙に描くのか/トレーシングペーパーに描くのか、水彩で描くか/ペンで描くか、というような意味で。テープという、ある時代のメディアが持っているテクスチュア感、音色に惹かれているんですね。その音色を聴いた時に、まさに風景を自ら選び取ってる感覚はあります。

佐藤: 曲を作っていくうちにどんどん「選ばされてる」っていう感じになっていくんですよね。そこにある必然の音、、そこにあるべき音っていうのをどんどん探していく方向というか。そこで鳴っている音をどう僕らが汲み取るか、どう探し当てるか、という作り方になっていきます。最後の方になっていくほど。

難波: ただどうしても、この音はリールから鳴ってるっていうイメージもあるんだよね。そうなってくるとやっぱり、どういう風にリールで再生して、どういう風に落とし込むか、っていうことを考えたりして。

イメージって個人的なものだと思うんですけど、メンバー間で共有できるものなんですか。

難波: ある程度。

和田: うん、ある程度。それぞれが分担で曲を作るんですけど、どこかでその世界観というかイメージは共有できてるのかな。

そのイメージ、風景っていうのは具体的なビジュアルなんですか。例えば映画的であったりとか。

一同: 結構具体的。

和田: 映画とか小説が皆好きなんで。

吉田悠: おおもとの大まかなイメージはすごく共有できるんだけど、そこから先は音楽というものの感じ方が人それぞれ違うように、それぞれのカラーが出てくるのだと思います。

佐藤: ある意味、その風景を共有できるのが多分ここに揃った5人だという感じですね。

吉田匡さんは唯一の別の楽器、ベーシストの立場から見てどうですか。

吉田匡: テープだけで構築した曲や、コンセプト重視の曲が並んでる中で、僕が参加したのはちょっとセッション風味というか、生楽器が入ってる曲です。皆がオープンリールを楽器としてやってるっていうのは、僕から見ると、ギタリストが4人いるようなものなんですよね。一斉に皆がブレイクして、次にキュイーンって来た瞬間でグインってベースを入れるみたいな、セッションの感覚で弾けるんですよ。それでガッと合った時の高揚感っていうのは、まさにバンドの高揚感と同じもので。

吉田悠: ライブでは僕がパーカッションを叩く曲もあるんですけど、ライブパフォーマンスをそれなりに回数重ねてからのアルバムリリースということもあって、その場で録音して、その場で演奏して、セッションして、という「その場感」がけっこう強いんですよ。リズムセクションに関しては、オープンリールの皆がバンドとして息を合わせてやってるから「ベースも必要だし、パーカスも必要だよね」みたいな感じになるし。

吉田匡: うちらの中ではオープンリールとベース、パーカッションが楽器として同等なんだよ、というのがお客さんにも何となく伝わればいいかな、と思ってやってます。

曲作りにも最初の段階から参加しているわけですか?

吉田匡: そうですね。もちろんある程度ループが組み上がったり、何となくキーが決まらないとやっぱり乗っていけないですけど。

そういう音楽のつくり方は、集まって音を出していく中で形になっていった方法論なんですか。

一同: 完全にそうです。

難波: だって師匠とかいるわけないですし。教本なんかもちろんないし。

和田: でも師匠じゃないけど、今回のアルバムに参加してもらった大野松雄さんなんかは、オープンリールをキュッキュッってやることでアトムの足音を作ったという…。


「僕らの活動や存在自体が
時間軸のエラーみたいなものです」



アルバムでサンプリングされている、大野松雄氏によるスポークン・ワード「──音っていうのは本来、非常に不安定なものでしょう。すぐ消えちゃうものだしね。だからそうすると、非常に抽象的なものだったら(音として)出せるかもしれないで、抽象的なものになると、どんどん進むと、この世にない音になっていく。そうか、この世に“この世ならざる音”ってあるんだな、と思った──」は、Open Reel Ensembleというバンド、またアルバムの内容とものすごくシンクロしたものだと思うんですよね。あの言葉っていうのは、インタビューを通じて計らずも出てきた言葉なわけですか。

難波: そうです。僕らにとっても、言葉のひとつひとつに、ものすごく重みがあったんですよね。僕らが大野さんから何かを継承してるというわけではないですけど、歴史をずっと遡ったところでオープンリールを使って音響をやってた偉大な先人という部分で、どの言葉を切り取っても響くというか。「昔はこういう奏法があったんだよ」みたいなことをその場で教えていただいたり。当時は当たり前だったことでも、オープンリールの歴史が一旦途絶えてしまっている僕らにとっては、全く情報がなかったので。

吉田悠: 大野さんの話を聞く限り、当時はそれしかなかったからオープンリールを使っていたということです。でも大野さんも「遊び心」が忘れられなかったという。「すでに存在する音に興味はない」みたいなことを『アトムの足音が聞こえる』の映画の中でもおっしゃってましたけど。当時オープンリールを使うこと自体は当たり前なんだけど、普通じゃつまんないから、常に遊んでいたいみたいな気持ちがあったらしくて。「この世にない音を探し求めて」みたいなことをおっしゃってましたね。




和田: 僕らもまさにそうなんですよね。

佐藤: 遊び心というか、「人を驚かしてやろう」みたいな。好奇心であったり。

日本国内だけでなく、ヨーロッパでもたびたびライブを行ってますね。さっき「音楽をつくる過程で浮かぶイメージ、風景」という話が出ましたが、そういうヴィジョンにも結びつくような、好きな土地・文化ってあるんですか。

和田: 僕はアフリカのロックとか好きでよく聴いてるんですけど、土着の音楽と西洋から来たものがミックスして、混血音楽みたいになってるものが好きなんですね。アフリカに限らずインドだったり、インドネシアの、やたら回転数を早くしたような音楽とか。西洋の文化・テクノロジーと土着的なものの混血で変な文化が生まれちゃった、みたいな。オープンリール自体も、一旦廃れたメディアが混血で変な文化になったような感覚ですね。

佐藤: 僕はエジプトと、中国の九龍城。宇宙やSFが好きなんですけど、中でもエジプトの宇宙観、中国のサイバーパンク感が。エジプトの多神教の文化だったり……サン・ラーとか好きなんですけど、あれも結局エジプトだったり(エジプトの太陽神ラー)。あと中国の雑多な、猥雑感……。『ブレードランナー』や『ニューロマンサー』みたいなサイバーパンクな風景は浮かんできますね。

吉田匡: ベトナムでライブやってみたいですね。

難波: 僕はマヤ文明とか意識していて。暦とか、すごい昔なのに緻密に計算が合ってるところとか。何時になると陽射しが蛇の形になって、その時に儀式すると扉が開いて、みたいな。そういうイメージで作った曲もあるんですよ。

和田: なんかこう、ダンスもそうですけど、身体的なものや土着的なものとテクノロジーとが結びついてる地域ってありますよね。メディアの進化がいきなり一段階飛んじゃってるような……インドに行った時も、拡声器でやたらでっかく唄ってる人がいたりするんですよ。「電気=魔術、魔法」みたいなところがありますよね。何かを拡大することに神秘的なスピリットを感じてるというか。

難波: 拡大することによって、しかも電気の力によって(笑)、自分にパワーを与えるみたいな世界観って面白いな、と思いますね。


過去のライブではDJ KentaroさんやAfraさんとコラボレートしたり、またSonarやARS Electronicaのようなエレクトロニック・フェスティバルにも出演してますよね。ライブをやってみたい場所はありますか。

和田: 地面に振動スピーカーを置いて、その上でとか(笑)。野外はやりたいですね。

難波: あと、お寺とか。奈良とか京都の、何千年もあるようなお寺……そういうお寺って「赤」のイメージがあって、で、オープンリールって「青」のイメージなんですよね。青がキレイに映えるんですよ。




和田: 伝統とテクノロジー(笑)

吉田悠: ある文化の特徴が際立って見えるような場所にオープンリールを持ち込んで、その文化を犯すみたいなことがやりたいんですよ。その結果生まれる世界が見たいですね。

佐藤: 軍艦島でやりたいな。

一同: いいね!

和田: あとは、オープンリールを集められるだけ集めてオーケストラやりたいですね。

難波: 僕らの活動自体が、僕らの中の空想みたいなところがあるんです。

吉田悠: 僕らのアルバムで、19世紀のオーストリアの皇帝であるフランツ・ヨーゼフⅠ世が1900年のパリ万博で自分の声を吹き込んだという、現存最古の録音物からサンプリングしてるんですよ。その行為も、僕らに至るまでの録音機の歴史をゆがめているようで……というのも空想、思い込みですけど(笑)。

難波: 過去と未来がグチャグチャになってて。

佐藤: 歴史ごとテープ・エディットしているような。

和田: オープンリール・テープの生産は2008年に全世界的に終了して、僕らはその翌年にオOpen Reel Ensembleを始めたんです。なので僕らの活動や存在自体が、時間軸のエラーみたいなものです。パラレルワールドで活動しているような感覚ですね。

Published / Thursday, 06 September 2012

Photo credits /
Illustrations - Artless
Blue,Purple Reels - Yuya Furukawa
Ei Wada - Takeshi Horinouchi


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