いや、まあそのアイデアもまったくなかったというわけじゃないけどな。ダ・ヴィンチが人体の研究に基づいて完成させた視覚芸術の概念については知ってるだろ?人体にはある一定の決められた比率というものが存在していて、それは人体を構成する細胞レベルのスケールにもあてはめられる・・・ってやつさ。その1 x 1.6の比率は黄金比と呼ばれているよな。俺のミックスでも、一個の音の長さからトラック全体の長さにいたるまで、すべての音楽の調和がその黄金比に基づいて決定されているんだ。
ベートーヴェンやリヒャルト・ワーグナーを例にとってみても、彼らはまずその黄金比について学んで、そこからはじめて彼ら自身のイノベーションを成し遂げていったと思うんだ。「曲が6割進んだところにクライマックスを設定するかわりに、あえて7割進んだところに持ってきたらどうだろう?」って具合にね。ワーグナーの『The Flight of the Valkyries(ヴァルキューレの騎行)』っていう5時間にも及ぶオペラがあるだろ。この作品のなかでワーグナーがやっているのはまさに黄金比の忠実な適用なのさ。こうした黄金比に忠実な作品の作り方こそが「ロマン的」と呼ばれるものの本質だと思うね。まずルールを隅々まで完全に研究し尽くしてこそ、自分なりのやり方ってもんが見つかるんだ。
Ron TrentやJoe Claussellのレコードがニューヨークでは昔から愛されてきてるし、長い年月を積み重ねて培われてきたカルチャーや個性ってもんがこの街にはあるんだ。ニューヨークの伝統、といったところかな。いま俺はずっとニューヨークに住んでいるわけじゃないから、現在その伝統がどんな状態にあるかまでは分からないんだけどね。両親に会うために田舎へ帰ったりするときにはニューヨークを離れるだろ?そういう時こそニューヨークの独特さを実感するんだ。いまはベルリンにいるけど、俺は結局近い将来はまたニューヨークに戻るんだろうなと思ってるし。俺個人について言えば、Ron TrentとGiant Stepレーベルはほんとうに大きなインパクトだった。もちろん、Ronがやってたレーベル、Prescriptionもね。彼みたいなアーティストは、ジャズの伝統における知性的な面を浮き彫りにしていると思う。アメリカ独自のアフリカン-アメリカン音楽のね。
うーん、たしかにそうかもね。でも、俺は自分のやっていることをみんなに認識してほしいんだ。そのために相応の時間もかけ、学習と実験を繰り返している。俺がやってみたいのは、Trentemollerがやってるようなスタジアム級のヴェニューで自分の音楽を鳴らしてみたいってこと。ヴェニューは大きければ大きいほどいい。別に、Jean Michel Jarreみたいに街全体を使うやり方を志向するってわけじゃないけど、自分自身のやり方を貫き通していった先の未来にそれに見合う成功があればいいなとは思う。あくまでも、パーソナルで自然体のライフスタイルのままでね。あと、自分でライブセットを組みたいとも思ってる。実現するのはまだこれから5年先ぐらいだろうけどね。それをみんなに見てもらいたいよね。