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コンプレッションを理解する
コンプレッションを理解する

RAのJono Buchananが最も大きな誤解をされている制作プロセスの1つを簡素化する。

このチュートリアルでは、コンプレッサーの使い方を学んでいきます。EQや リバーブと同様、コンプレッサーは世界中のレコーディングスタジオで使われています。コンプレッションというプロセスが何故そこまで広まっているのかについて理解するには、コンプレッサーがどのような作業をする機材なのか、パラメーターが何を意味しているのか、そして個々のサウンドや、サウンドのグループ、そしてミックス全体に対してどのような役目を果たすのかについて理解する必要があります。音楽制作を「科学」の力で支える技術的なプロセスと同じで、今回のチュートリアルの目的も複雑なテクニックを「簡素化する」ことにあります。

コンプレッサーの役目は、インサート先のオーディオファイルまたはインストゥルメントのダイナミック(ボリューム)レンジを、最小音量の部分と最大音量の部分のギャップを効果的に小さくしながら、減少させることにあります。コンプレッサーを長いダイナミックパート、例えばリードボーカルのようなパートに使用する時を想像するのが一番簡単だとは思いますが、各ドラムサウンドのような短いサウンドにもそれぞれダイナミックレンジがあり、最初は大きく、そして徐々に小さくなっていきますので、ダイナミックレンジは大きいと言えます。そしてこのダイナミックレンジは短時間で再生されます。ドラムに対しての使い方については後ほど触れて行きますので、まずはダイナミクスの方向性が決まっていない、長目のパートについて見て行きましょう。

コンプレッサーがどのように機能するのかを理解するには、主要パラメーターをどのように組み合わせればダイナミックレンジを小さくすることができるのかについて学ぶのが良いでしょう。この図では、音が時間の経過とともにゼロから直線状に最大音量に向かって行く様子を表しています。





全てのコンプレッサーに共通している最初のパラメーターはThreshold(スレッショルド)です。ここで設定した値より大きなボリュームの部分でダイナミクスが変化します。Thresholdをこのボリューム変化の中央に設定すると、この値より小さなボリュームは圧縮されませんが、この値より大きなボリュームのダイナミクスは圧縮されます。





Threshold Point(スレッショルド値)より上の部分のオーディオのボリュームがどのように圧縮されるのかは、Ratio(レシオ)を使って設定します。Ratioを2:1に設定すると、Threshold Pointより上の部分はオリジナルのボリュームの半分の比率で上昇していくことになり、4:1に設定すれば、4分の1の比率で上昇することになります。Ratioの分母が大きくなれるほど、圧縮される部分の圧縮率が高くなることが分かります。





ここから分かるのは、サウンドのダイナミックレンジ全体が変化するということです。オリジナルのダイナミックレンジが1だとすると、新しく設定したダイナミックレンジはそれよりも小さくなります。Threshold Pointをボリュームの真ん中付近に設定し、Ratioを2:1にすると、新しく設定されたダイナミックレンジはオリジナルの75%に相当します。同様に4:1にすれば62.5%となります。





右側にこのように圧縮した場合のダイナミックレンジの違いを色分けして表示しました。ここから分かる通り、Thresholdを使用して設定値より上の部分を圧縮し、またRatioを1:1(圧縮されないオリジナルの直線)以上に設定することで、ダイナミックレンジとボリュームは「小さく」なります。しかし、圧縮されていないサウンドよりもサウンドを「大きく」聴かせようという目的でコンプレッサーを使用する場合がよく見られます。果たしてどういうことなのでしょうか? コンプレッサーがボリュームを小さくするものならば、処理されたサウンドはオリジナルより小さく、聴きにくいものになるはずです。

コンプレッサーによってボリュームが「大きくなる」という現象を理解するには、最後のパラメーター、Output Gainについて理解する必要があります。コンプレッサーのプロセスの最後に当たり、ボリュームのレベルを上げて、一番大きなサウンドが鳴る瞬間を、自分の好きな大きさに修正することができます。以下の図では、Outputのレベルをブーストさせることで、(Make-Up Gainと呼ばれます)コンプレッサーがかかった状態の黄色とオレンジの音がオリジナルの音と同じボリュームに修正されています。





ここで重要なのは、破線で示された「失われたボリューム」を見て、オリジナルのダイナミクスレンジがどれだけ失われたのかを確認することです。これはこの部分に相当するオリジナルのダイナミックレンジは圧縮されたバージョンに含まれていないことを意味し、つまり、圧縮されたバージョンのサウンドはそれぞれオリジナルの25%(Ratio 2:1)、と37.5%(Ratio 4:1)の位置からスタートするということになります。よって、レベルがブーストされたということになり、これらの圧縮されたサウンドにおけるボリュームの一番小さいポイントは、オリジナルの「ゼロ」よりも大きなボリュームのため、聴きやすくなるということになります。その一方で、ボリュームの最大ポイントはオリジナルと一緒ですから、ボリュームの「平均値」は圧縮されたサウンドの方がオリジナルよりも「大きく」なります。

次に、より激しい形でのコンプレッションを見て行きましょう。同じようにゼロから最大値へ変化する図を使用しますが、今回はThresholdの値をかなり低い位置に設定し、サウンドが鳴り始めたらすぐにコンプレッサーが起動するような設定にします。またRatioも8:1に設定し、コンプレッションがきつくかかるようにします。





右の矢印を見ると、コンプレッションされたサウンドとオリジナルのサウンドのダイナミックレンジの差が非常に大きいことが分かります。コンプレッションされた方はオリジナルのレンジよりもかなり小さくなっています。これにMake-Up Gainを加えると、「失われたボリューム」の量はかなり大きなものとなります。ボリュームが最大となるポイントはオリジナルの最大となるポイントと一緒となるので、最小となるポイントはかなり持ち上げられることになります。





つまり、このサウンドは常に鳴っているということになります。オリジナルのダイナミックレンジで他のインストゥルメントと並べて鳴らした場合、その最小ポイントはミックス上では他のインストゥルメントにかき消されてしまうということになりますが、このように激しいコンプレッションをすれば、かき消されることなく常に聴こえるということになります。

このような激しいコンプレッションは、「リミッターをかける」ということです。皆さんのお使いになっているDAWにリミッターがついている場合、Threshold Pointより上の部分に対するRatioの値が非常に大きく(∞:1)、結果的にThreshold Pointよりもボリュームが大きくならないような形を取りながら、自動または手動で、ボリュームのブーストができるようになっていることが分かるでしょう。この「フラットなRatioのライン」でダイナミクスを減少させる方法は、特定のミックスには非常に効果的ですが、全てのパートをこのようにダイナミクスを潰してレベルを調整すれば良いのだと考えるのは間違いです。ダイナミクスはミックス内の各パートの自然な流れを生み出す点では非常に重要ですし、もし全てが可能な限り大きいレベルに持ち上げられてしまえば、ミックスのヘッドルーム上で大きな問題を抱えることになってしまいます。

そして、ミックス内の各パートのボリュームがゼロから始まって最大ポイントで終わるという直線的な上昇を描くことはまずありえません。上に記したグラフでは、コンプレッサーが一直線にボリュームが上昇するサウンドに対してどのように機能するかということを示していますが、実際のサウンドの殆どは予想できない形で上下します。特にボーカルは頻繁に「かなり小さな音からかなり大きな音」という形で上下し、ボーカルのフレーズや単音が、ボーカルのパフォーマンスやレコーディングされたレベル、そしてバッキングの動きに合わせて上下します。

ThresholdとRatio、Make-Up Gainがどのように機能するかについては理解して頂けていると思いますので、今度はこのボーカルのようなパートに対してどのようにコンプレッションをしていくのかを見て行きましょう。このような場合は、ボリュームが最大になるポイントを起点にして作業していくのが良いでしょう。ボーカルは小さすぎたり、大きすぎたりするポイントを抱えてしまうことが頻繁にあります。ですので、場所によっては小さすぎて聴きにくかったり、逆に大きすぎてそこが目立ち過ぎたりしてしまうことがあります。ボーカルのコンプレッションで最適な方法は次の通りです。まずThresholdをダイナミックレンジの真ん中辺りに設定し、大きく聴こえる部分を適度に下げるようなRatioに設定します。そして最後に十分なMake-Upゲインを用いて、他の音にかき消されてしまっている小さな部分を持ち上げるようにします。

音楽には様々な種類があるため、どの設定がベストなのかということは言えません。ボーカルのレコーディングレベル、そしてミックスにおけるスペース(余裕)の確保の問題などもあるため、デフォルトの設定というものは存在しません。ですので、プリセットメニューから設定を呼び出す場合は十分に注意して使用してください。何故なら、プリセットでは皆さんのトラックに何が必要なのかを判断することができないからです。プリセットよりも、自分で設定した方が良い結果を生みだすことができるでしょう。

より包括的なコンプレッサーには、AttackやRelease、Knee Levelなどのパラメーターが備わっています。これらを使用することで、「いかに自然な」コンプレッションにするかを設定することができます。上のグラフでは、Threshold Pointでボリュームがかなり急激に変化をしていることが確認でき、オリジナルからコンプレッションされたサウンドへと明らかに変化しています。このポイントをKnee(体のヒザ)と呼びます。急激な角度になったり(椅子に座っている時のヒザの角度を想像してみてください)、なだらかな角度(足を伸ばした時のヒザの角度を想像してみてください)になったりします。コンプレッサーでは、このような状態をそれぞれ「Hard Knee」、「Soft Knee」と呼びます。Soft Kneeでは瞬間的にボリュームをオリジナルの「コンプレッションされていない直線」に沿わせ、その後以下の図のように設定されたRatioの角度に沿って変化します。





AttackとReleaseはサウンドがThreshold Pointを超えた時にどれ位早くコンプレッションの設定を適用するか(Attack)、また音量が下がる時にどの位早く元のオリジナルの音に戻すのか(Release)という時間を設定します。これらの設定によってかなり激しい変化を生み出します。

例えば、Attack(音の立ち上がり)とDecay(音の減衰)の早いキックがあり、音が立ち上がってから消えるまでの時間が500msだったとします。このキックのDecay部分にコンプレッサーをかけることで、音の持続時間を長くしようとします。こうすることで、自然に音が消えるように聴こえるようになります。この時コンプレッサーはこの部分のサウンドのボリュームが落ちないように、持ち上げようとします。しかしThresholdとRatioだけではこの結果を生みだすことはできません。サウンドに対してすぐコンプレッションがかかり、結果的にサウンドのアタック部分、そしてそれに続くディケイの部分にも同様にコンプレッションがかかってしまうからです。しかし、Attackのタイムを長く設定することで、キックの立ち上がりはコンプレッションがかからず、コンプレッサー上で設定したパラメーターはその設定タイムより後の部分で機能するため、ここで求められている結果を生むことにできるようになります。

Attackのタイムを100msに設定すると、サウンドの立ち上がり部分にはコンプレッションがかかりませんが、後ろの400msの部分に対してはコンプレッサーの設定に従ってダイナミクスが変化します。


ここでそのサンプルを聴くことができます。Ratioの値が大きく、Threshold Pointが低く設定されているキックです。Attackのタイムは自動で変化させています。スタート時のAttackのタイムは1msに設定されていますから、サウンド全体に対してコンプレッションがかかっていますが、Attackのタイムが長くなるにつれ、サウンドのディケイ部分だけにコンプレッションがかかるようになります。

プロデューサーたちはこのようにして各ドラムサウンドに対して様々なコンプレッサーの設定を行い、自分だけのドラムサウンドを作り出しているのです。最良の結果を生みだすには、ドラムサウンドごとにチャンネルを用意する必要があります。キックとスネアが一緒にされているチャンネルではなく、キックだけのチャンネルにコンプレッサーをかけた方が良いのです。簡単に言えば、コンプレッサーは2つのサウンドに対してではなく、1つのサウンドに対して機能するということなのです。

他の多くのエフェクトと同様、コンプレッサーにはその名前通りの機能の他に、パラメーターを変わった形で使用することで、他の効果を得ることもできます。コンプレッションは、その機能全体が使用されることはまずありません。個々のサウンドのコンプレッションがかかった状態とオリジナルの状態の両方が同一のミックスで聴けるということはまずなく、1つのトラックの中でコンプレッションの使用前、使用後という形で聴くことはありえないのです。一方、リバーブのレベルの変化はトラックを通じて定期的に用いられますし、ディレイは特定のフレーズやサウンドを際立たせるためにトラック内でオン/オフされます。

しかし、コンプレッションを使用した処理方法の中には、コンプレッション本来の透過性を逆に使った、上記のリバーブやディレイの使用方法のような「あからさま」なものがあります。その最良の例が、サイドチェーン・コンプレッションで、これはダンスミュージックの様々なジャンルで使用されているテクニックです。通常は、コンプレッサーをミックスのアウトプットチャンネルにインサートすることで、ミックス全体にダイナミックレンジの調整を行います。しかし、トラックの自然なダイナミクスの動きに対してコンプレッサーを反応させるのではなく、サイドチェインチャンネルを経由して別のインプットをコンプレッサーのトリガーとして使用するのです。こうすることで、コンプレッサーはそのサイドチェインチャンネルのインプットソースのタイミングでサウンドにコンプレッションをかけることになります。サイドチェインのトリガーにはどのサウンドを使用しても構いませんが、一番よく使われているのはキックです。これをトリガーに使用することで、キックが鳴るたびにコンプレッサーがかかり(もしこのコンプレッサーをアウトプットチャンネルで使っている場合は、ミックス全体に影響することを忘れないようにしてください)、そのサウンドのレベルが明らかに下がります。このテクニックはEric Prydzの”Call On Me”で使用されていますが、その他にも数多くのトラックで使用されており、スムースではない激しいコンプレッションを故意に生み出しています。この使用前、使用後のサンプルを聴いて、どのような効果が生まれているのか聴いてみましょう。

コンプレッションがかかっていないミックス




サイドチェインのコンプレッサーを使用したミックス




その他のコンプレッションの使用方法は、ボーカルのトラックにAUX経由で接続されたリバーブの後にコンプレッサーを繋ぐ方法です。これはボーカルへの影響を抑えながらリバーブタイムを長く維持したい場合に効果的です。このクリップではボーカルが綺麗にリバーブの上で聴こえているのが理解できると思います。

コンプレッサーをリバーブの後にかけて、リードボーカルのサウンドをコンプレッサーのサイドチェインのトリガーに使用することで、リードボーカルのフレーズが鳴るたびにリバーブレベルが下がり、フレーズが終わるごとにレベルが上がります。これによってボーカルのフレーズ間のリバーブタイムが長くなり、ボーカルのフレーズ時にはリバーブタイムが短くなります。

これでコンプレッサーの使用方法については理解できたと思います。コンプレッサーを名前通りの使用方法で用いたり、またはダイナミクスをクリエイティブな方法で使用したりしてみましょう。最後に1つアドバイスをしておきます。コンプレッサーはダイナミックレンジを小さくするための素晴らしいツールですが、コンプレッサーを使うだけで、特にボーカルのようなパートに対し、最初から最後まで綺麗にバランスが取れたスムースなダイナミクスを得ることができると考えるのは間違いです。DAWにボリュームのオートメーションツールが備わっているのは、コンプレッションと併用して、トラック全体の最適なレベルバランスを得るために必要だからなのです。ミックスの中で突出してしまっているような部分があるとしたら、コンプレッションの設定が間違っているからだと思わないようにしましょう。コンプレッションがトラックのほぼ全体に渡って上手くかかっているのであれば、それは正しいと言うことです。あとはボリュームのオートメーションを使って、問題の個所を修正しましょう。


Translation / Tokuto Denda
Published / Thursday, 17 May 2012

Photo credits /
Header - Dominic Alves


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