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Deeper shades of Melbourne
Deeper shades of Melbourne

Tornado Wallace, Mic Newmanをはじめとするアーティスト達が住み、現在最も活気づくハウス・ミュージック・シーンが存在する都市、メルボルン。RAのTyson Wrayが街の現在を探る

デトロイトとテクノは永遠に関連づけられるだろう。そしてそれはシカゴとハウスにも言える。しかし、メルボルンは、世界的なエレクトロニックシーンの中で圧倒的な存在感を放ったことは一度もない。90年代初頭にはテクノに包まれたこの街だが、ここ20年間で一気にブレイクビートや、ニューディスコ、ミニマル、そしてドラムンベースが存在を露にしている。

言うまでもなくこれは良い事であり、悪いことでもある。しかし、Tornado WallaceやMic Newmanに聞けば、前者だと答えるだろう。メルボルンには熱心なナイトクラブ、リスクを恐れないプロモーター、インディペンデント・ラジオ局といったサポーター達の存在がシーンの形成に重要な役割を果たしているようだ。では、この街に無いものとは何であろうか?その答えとして、この街には、昔から受け継がれてきたシーンがない事、が言えるだろう。

メルボルンは今、それを生み出す成長過程にあると言える。今回インタビューに協力してもらったアーティストの殆どが、メルボルンのシーンを一言で説明することを躊躇した。しかし、皆が皆、モダン・ディープ・ハウスとディスコに、何かしらの関わりがあることには同意してくれた。それがメルボルンのシーンに今存在しているものなのかもしれない。そしてそれは、世界中から見てもこのジャンルが現時点で最も繁栄している土地の一つにメルボルンが挙げられるということだ。

今回我々は、地元、国際的にも新しい旋風を巻き起こしているDJやプロデューサー達に話を伺うと同時に、何故メルボルンがここまでエキサイティングなシーンを今生み出しているのかを洞察した。
-- Todd L. Burns



Tornado Wallace

Tornado Wallace

Lewie DayことTornado Wallanceは、間違いなくメルボルン在住アーティストの中で最も成功しているであろうプロデューサーの1人だ。サンプリングを多用したハウス・サウンドに胸に響くような低いベースラインが加わった、時折アニメ「シンプソンズ」をテーマにしたタイトルが見受けられる彼の作品は、Delusions of Grandeurや、Instruments of Rapture、そしてSleazy Beats Recordingsといったレーベルからリリースされている他、Andrew Weatherallや、Motor City Drum Ensemble、Tim SweeneyがDJバッグの中に入れている。

ここ数年にはヨーロッパー・ツアーも増え、まさに大使としての役割を担っている彼だが、メルボルンのアンダーグラウンド・クラブ・シーンで必要不可欠な存在でもある。月一で開催されるパーティーC Gradeの主催や、地元のプロモーター・エージェンシーAnimals Dancingの経営を通して、Lewieはこの街のもつ快活で広がりのあるクラブシーンがいかに大切であるか、そして言うまでもないことだが、シーンが地元のプロデューサーたちに与えるインパクトを実感しているという。「自分が数時間前に作った曲をフロアで流して、観客が盛り上がっている姿を見ると元気づけられるよ。大都市に比べて、メルボルンのように人口の少ない街にいると、最高な時間を過ごしやすいと思うんだ。1つのジャンルをサポートするには充分の人数がいないからね。だから毎週末全く違ったジャンルに遭遇する。それがとても大切だと思うんだ。“正しい”サウンドとは存在しないであろうことを実感するし、様々なジャンルにトライできるんだ。」

「メルボルンには、プロデューサーたちの良いコミュニティーが存在している。街自体が小さい事が理由だとは思わない。メルボルンのハウス・プロデューサー達とコラボレーションを行いたい、と言ってくる海外のアーティストに多く出会って不思議に思っていたんだけれど、メルボルンのプロデューサーはそれぞれ自分らしいプロダクションを作っているからだと思うんだ。僕の好きな音楽は、スタイルは異なれど、殆ど地元の作品なんだ。一見地味なこの街からは、素晴らしい音楽を作るプロデューサーがどんどん増えてきているのを感じるよ。」





The Francis Inferno Orchestra

The Francis Inferno Orchestra

「メルボルンのシーンが世界的に注目されている事にピンと来ないなんだ。」と言うのは、Griffin James。若干21才のGriffinは、メルボルンの多くの若手アーティストに特徴されるようなアーティストの1人だ。Under The Shade、Wolf Music、Voyeurhythm、そしてKolour Recordingsからのリリース経歴を持つ彼は、 Iron Curtis、Jacques Renault、そしてSoul Clapといったアーティスト達からも賞賛されている。

ねじれたディスコ・サウンドやきらめくシンセ音を構築中のGriffinだが、多くの地元コミュニティーも、アーティスト達同様に成長過程にいるのだと言う。「昨年の夏、ヨーロッパへ小旅行に赴き、色々な街で素晴らしい人々と会った後にここに戻ってきて、メルボルン(オーストラリア全般的に言えることだと思うけど)は、ここへ来た事のない人にとって、本当に未知数な場所なんだと感じたよ。ヨーロッパから飛行機で24時間ほどで行けてしまうメルボルンは、土地、シーン的にもとても小さいけれど、どんどん進化し始めていることにここ数年で気が付いたんだ」

しかし、海外がメルボルンに与える影響は未だ強いようだ。「メルボルンに比べると、ロンドンやベルリンといったクレイジーな街には芸術や音楽が活きているし、文化と音楽が歴史的に密接な関係にあると実感した。大変なこともあるようだけれど、それはどこも同じだよね。例えばメルボルンは福祉国家の街なんだ。ベルリンの Club der Visionaereみたいな場所は絶対に生まれないだろうね。オープンする前に労働安全法の問題で潰れてしまうと思う。でも、そんな状況でも出来る事をやろうという人がいるから、この街はとても素晴らしいと思うんだ。」







The Tortoise

Torquhil Andersonが3rd Strike Recordsから発表した2011年のデビューEPは、VakulaとErdbeerschnitzelからも支持され、その後もDirt Crewや、Kolourの姉妹レーベルUndertonesから彼の才能を発揮した作品が世に発表された。メルボルンの多くのプロデューサー同様、様々なヨーロッパ発のレーベルと契約をしている彼だが、彼にとってこれは自然な事に他ならないようだ。「自分がファンであるレーベルに音源を送って、彼らがなんて言うか待つのは、とにかくぞくぞくしたよ。」と彼は言う。「他の人が気に入ってくれて、さらにヴァイナルをプレスする価値が僕の音楽にあるのか、いわばテストするようなものだよね。」

また、街の中のシーンという点で、どのような事がきっかけでメルボルンが注目され始めたのか、彼は見当がつかなかったという。「何故この街でハウス・シーンが盛り上がっているのか、ハウス・プロデューサーが次々に登場しているのか理由が分からないんだ。でも、ここ数年で色々なコミュニティーが出来ているのは確かだね。今まで知らなかったプロデューサー達と知り合って、意見交換をすることが凄い楽しいよ。」
最近は、ほぼ毎週海外からアクトが来て、誰を見ようかという甘やかされた環境にいるんだ。新しいアイデアを生み出す情熱家たちや、音楽をプッシュしていきたいと思う人がいる限り、そういった熱意がオーディエンスにもシーンにも伝わると思うよ。」





Weekend Express

Weekend Express

90年代から音楽制作を開始していたDaniel OoiがWeekend Express名義でシカゴのStill Music傘下のサブレーベルStilove4musicからデビューを果たし、リリースを行い始めたのは2011年と、ここ最近の事だ。Wolf MusicとQuintessentialsからリリースも控えていると訊けば、彼がプロダクションに対して深い理解を持つアーティストだという事が想像つくであろう。アトモスフェリックなリズムを持つ彼の作品は、レーベルだけでなく、Deetronや、Al Kent、そして6th Borough Projectからも注目されている。

彼は、メルボルンのプロデューサーたちが徐々に注目を集め始めている事を指摘しながらも、プロモーションのマーケットを提供している様々な分野にも敬意を払っている。「俺たちが注目を集めることができた理由の1つに、この街のプロデューサー達のモチベーションを上げてくれるような様々な音楽シーンや、中核となるプロモーター、クラブオーナー、サポーターの存在が大きいと思う。The OperativesAnimals DancingStable Music や、Bamboo Musikによる地元のイベント。 New GuernicaRevolver UpstairsThe Mercat Basementといったクラブ。Triple RRRのようなラジオ・ステーションやサイトもあるし、Melbourne Deepcastのポッドキャストは、素晴らしいアクトや音楽を生み出し、地元のダンスミュージックコミュニティーに関わる人たちをインスパイアさせている、この街のハウス・シーンをサポートしている存在なんだ。」







Mic Newman

10年のキャリアを持つハウス・プロデューサーMic Newmanは、メルボルンのシーンを語る上で欠かせない人物だ。Freerange、Tsubasa、そしてLet's Play House( Fantastic Man 名義で)からのリリースを通して、Jamie Jones、Steve Bugや、Gilles Petersonから賞賛されている。この猛者は、広い視点で街の歴史を見ている。「小さいけれど、とても良質なアンダーグラウンド・シーンがここには在る。音楽を第一に考えている人ばかりで、金儲けという視点はあまりないんだ。音楽的には、ディープ・ハウス以外にも色々なジャンルが存在していて、オーストラリアの中でもメルボルンはカルチャーの中心都市と言われているくらい、多様性に富んだ場所だよ。ここ数年を通してとても素晴らしい音楽が登場していることもあるけれど、素晴らしいプロモーター達が、より多くのパーティーをより興味深いベニューで行なっているんだ。同じ事がオーディエンス、地元のDJたち、プレス、そしてChristian Vance といったアーティスト達にも言えることだけど、こうした存在がメルボルンのシーンの発展の鍵となっている。」

「ポスト・ミニマルと、ハウス・ミュージックの現状や、ディスコのリバイバルという波が関係しているとも思う。メルボルンでは特に、新しい旋風としてお客さんに人気なサウンドなんだ。ここ最近、音楽的ジャンルの境目が区別しずらくなっているよね。より多くのDJたちが、様々なジャンルを独自の見解で取捨選択して、自分なりのスタイルを生み出している。地元の若いDJが、4時間のヴァイナル・セットでソウル、ディスコ、ハウスに、デトロイト・テクノを混ぜるなんてことは珍しくなくなってしまったんだ。」





Melbourne Deepcast

The Melbourne Deepcast

Melbourne Deepcastは、 Andy Hart とMyles Macの産物だ。2人は、それぞれのシーンでベテランDJとして活躍し、Andyは敏腕プロデューサーとしても活躍していた。そんな2人が2009年に始めたこのプロジェクトは、当初ポッドキャストとして始動し、“メルボルンからのクオリティー・ハウス・ミュージックを中心に届ける”ことを目的にしたオンライン・ハブにまで変化してきた。現在はレコード・レーベルとして運営されているDeepcastだが、メルボルン・サウンドを世に届けるという一番大切な目的は、始動して以来変わっていない。ウェブサイトは、今回紹介したアーティスト達にも脚光を与え、この土地で何か特別な事が起きつつあると実感させてくれた存在だ。

「Melbourne Deepcastは、ポッドキャストとして始動したものだった。それからすぐに、1つに制限したくなくなったんだ。」とMylesは言う。「レコード・レーベルの立ち上げから、インタビューやニュースまでも共有できるサイトにまでなり、最終的にはパーティーまで開くことになったんだ。俺たちのサイトでは、メルボルンでの面白いイベント情報や、新しいコンテンツ、親交のある海外アーティストたちの情報まで見られるようになっている。」

印象的な名前でもあるDeepcastは、"メルボルン・ディープ・ハウス"の名を広めるのに大役を果たした存在だ。「見栄えとしてもメルボルンという名前を入れることが、非常に大切だった。」とMylesは言う。「メルボルンとディープな音楽を連想してもらいたかったんだ。素晴らしい音楽と、それが発祥した土地とを関連づける事が多いと思うんだ。だからブランドとしてメルボルンという土地名を使うことにしっくり来たんだよ。今年は、Melbourne Deepcastと深い関係を持つアーティスト達や、オーストラリア国内のアーティストの作品をもっとリリースする予定だよ。海外の友人の作品もね。メルボルン、オーストラリアという制限ばかりつけて、同じようなテイストを持ち尊敬もしている海外のアーティストを拒否するなんて馬鹿げているだろう。」

また、メルボルンのシーンの今後について、Mylesはとても前向きな意見を持っているようだ。「数年前ならリスキーすぎたけれど、今では新しいプロモーター達がお金を出して海外のアーティストを招聘したパーティーを開いている。より多くの人が音楽に興味を持ち始めた証拠だと思うし、とても誇りに思っているよ。」

Words / Tyson Wray
Translation / Yukari Takanose
Published / Monday, 07 May 2012

Photo credits /
Tornado Wallace - Sophia Whitfield
Mic Newman - Stephen McManis


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