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Mr Scruff:純イギリスな存在
Mr Scruff:純イギリスな存在

紅茶とパイとアニメーション:全てはUKが誇る音楽家の一部

傍から見るAndy Carthyは典型的なイギリス人だ。独特で奇妙なユーモアセンス、紅茶とパイへの執着、そしてオールジャンルにまたがるDJプレイ。これらの特徴は、イギリス人の説明以外の何物でもないだろう。Mr Scruffとして活動するAndy Carthyのこのような個性は、UKの重要レーベルであるNinja Tuneへ素晴らしい音楽を提供し、また素晴らしいDJプレイをワールドワイドに提供し続けている。彼はその音楽性と才能から、長時間のプレイを要求する数少ないDJの1人だが、特筆すべきはその要求を実際に世界各地で実現させているという事実だろう。今年イタリアのミラノで行われるElita Festivalでのプレイを前に、彼のマンチェスター気質、そして最高の紅茶の淹れ方について話を聞いた。

あなたについては正直どこから話を始めればいいのかわかりません。というのも、あなたのウェブサイト上に掲載されているバイオグラフィーはかなり広範囲に渡っていますから。ということで、まずは何故にここまで広範囲なバイオグラフィーにしようと思ったのですか? という質問から始めましょうか。

長年に渡って何回もインタビューを受けてきて、同じ質問ばかりされているってことに気が付いたんだよ。以前は他人が書いた古いプレスリリースがあったんだけど、そこにはMadonnaがアルバム『Keep It Unreal』を気に入ったって書いてあった。だからインタビューでは必ず「マドンナに気に入られていることをどう思いますか?」って訊かれたんだ。そこに気付いた俺は、プレスリリースを書き直して、自分に関することをあらかじめ大量に載せておくことにしたってわけさ。未だにウェブサイトを読まないジャーナリストもいるけど、俺の方からしっかりとした答えを先に用意しておけば、インタビュー自体が俺にとってもっと面白いものになるだろうって思ったんだよ。インタビューが未知の領域に進むというか、少なくとももっと面白くなって、あっちこっちに話題が飛ぶような会話になるんじゃないかってね。

Legends: Mancunian radio man Stu Allan and Carl Cox
バイオグラフィーは凄く興味深かったです。というのも、あなたを含む特定のDJたちはこのような文章を書くことに注力しているように思えるんです。あなたがバイオグラフィー内で影響を受けたと触れているGreg Wilsonもあなたのようなタイプですよね。

そうだね。俺とGregの違いは、俺が人名とそのリンクなのに対して、Gregはその人物にインタビューを行うってところかな。彼の方がジャーナリストとして素質は断然あると思う。彼がDJとしてピークを迎えていた80年代初期に、俺は音楽を知って、ミックスを知って、DJするってことを知ったっていう時差を考えると面白いね。彼からは彼のラジオと、そして彼に影響を受けた人たちを通じて直接的、間接的に影響も受けた。80年代にラジオに沢山出演していたStu Allanっていう人物がいるんだけど、彼は自分でラジオ番組を持つ前はGreg Wilsonのパーティーに良く出かけていたんだ。そして彼のラジオ番組は5年間に渡って、マンチェスターでブラックミュージックに傾倒している人たちにとってのバイブル的な役割を果たしたんだ。

Gregの影響は大きかったよ。彼が何に直接関わってきたのかという正確な経歴を読んだことが俺のウェブサイトでの表現方法に繋がったと思う。俺にとっても、そしてGregにとっても、「インタビューしてくれて嬉しく思う。今まで沢山のことをやってきたけど、自分がここにいる理由、そして自分がやっていることに対してこのようなアプローチを取っている理由は、国際的に十分な評価を受けていない彼らのようなDJを聴いて育ったからだ」ってことを伝えることが大事なんだと思う。

あなたは自分がマンチェスターのDJだと感じますか? それともあなたのDJスタイルが「マンチェスター」を表現しているのでしょうか?

俺に影響を与えた音楽の大半はマンチェスターから生まれたものだったし、影響を受けたDJもマンチェスター出身だった。というよりも俺に大きな影響を与え、知識を授けてくれたのはマンチェスターのローカルラジオだった。そういうラジオ番組はマンチェスターが生んだものだったけれど、そういう時代だったというのも大きいね。当時は今ほど細分化が進んでなかった。80年代は全てが「ダンスミュージック」だった。80年代後半まで、大抵のDJは音楽についての幅広い知識を持っていたんだ。というのは、当時は例えば1週間でソウルが3枚、ハウスが5枚、ヒップホップが7枚位しかリリースされないような感じだったからね。逆に今は本当に沢山の音楽があるから、例え1つのジャンルに特定したとしても全てのリリースを追うことは不可能だと思う。

あとは当時の音楽の紹介のされかたも影響したと思う。ラジオDJは音楽の話をしてくれたから、その音楽の歴史について今よりも多くを学ぶことができた。DJたちはゲストを招いて、自分たちが聴いて育ったレコードを紹介したり、それがどこでかかっていたかなんかを話してくれたりした。






ラジオはどう変わったと思いますか?

俺は8歳位の時にJohn Peelの番組を聴いていたんだ。でも、それは「よし、今まで聴いたことが無い音楽をかけてくれる専門番組を聴くぞ!」って感じではなくて、ただラジオを聴いていたっていう話だよ。今はもしラジオをオンにしても、眠くなるだけだろうな。殆どのラジオ局は当たり障りが無さすぎる。メジャーな音楽をかける番組は勿論そうだし、専門番組もそのジャンルの中で安全策を取るんだ。たとえ最新かつ話題の楽曲をかけたとしても、自分たちが安心できる範疇から外に飛び出ることはないだろうね。当たり前のことだけど、俺のように音楽に対して幅広いアプローチを取る人間は、当時の専門番組のDJの影響が無かったら今存在していなかっただろうな。というのは、俺のインスピレーションは、そういったDJたちがラジオ番組で、その音楽がどこから来たのかを説明しつつ、最新の音楽も紹介してくれていたというところに多くを担っているからなんだ。ああいう番組やDJが視野を広げてくれる。

だから、みんな多大な影響を与えてくれた10代の頃を懐かしがる。でも当然戻ることはできない。俺が言いたいのは、俺の音楽性は当時に多くを担っているけど、俺は今でも10歳や15歳の頃と同じ位新しい音楽にときめくよってことさ。

今は何を手掛けているのでしょう?

次のアルバムを仕上げようとしているところさ。結構時間がかかっているんだ。

今回はどのようなアプローチなんですか?

アルバムに関しては、基本的に沢山の曲を同時進行で制作していって、数が揃ったらそれを通して聴いていく。「このアルバムにはこの音を使おう、いやあの音を使おう」って考えるんじゃなくて、全体がどこに向かっているのかを見極めるんだ。だから曲自体は自然の成り行きに任せる感じだね。今度のアルバムはミドルテンポの4つ打ちが多いけど、ブレイクビーツなんかも相変わらず入っている。あと以前よりもシンセを多く使っているかな。ドラムに関してはラフなヒップホップの感じをキープするのが凄く大事だと思っているんだ。それ以外の部分に関しては基本的になんでもありだね。

以前よりもシンセを使っているというのは興味深いですね。

俺はループものというか、プログラムされた音楽の安定感は大好きだよ。でもミスや、人間的な感覚も好きだから、結局人間と機械の中間点を探している感じだね。それはサンプルをいじって探していく時もあれば、正確なタイミングをそんなに気にしないでシンセを弾きまくって探していく時もある。結局のところ俺にとっては、自分の領域を広げて、自分の取り組んでいるものを前に進めていくってことが重要なんだ。最近はサンプルの使用許可が下りなかったり、使用にかなりの金額を求められたりするから、サンプルの使用が難しくなってきたしね。

現在のサンプルの使用許可やライセンスの状況は異常だと思います。あなたのウェブサイトには、Jurassic 5のアカペラを1分間使用したら、1万ドルの支払いを要求されて途方に暮れたと書かれていましたね。

そうなんだ。でもその話はどちらかというとMix CDの方の問題だ。ダウンロードが台頭してきて、Mix CDの状況はサンプル使用と同じ位問題になってきているんだ。「使用許可は出すけれど、シングルとしてのダウンロードは許可できない」と言うアーティストもいる。でもMix CDのライセンスにしろ、楽曲用のサンプルの使用許可にしろ、どっちもそれぞれ厄介だよ。ダウンロードに関しては多くのレーベルが自分たちの音楽を保護しようとしている。でも俺がMix CDに誰かの楽曲を入れるとしたら、それはその楽曲の売り上げを下げるよりもその楽曲をアピールする方が近いと思うんだ。音楽を取り巻く今の状況に対して、彼らは過剰に保護の方向へ傾いている。まるで5年、10年前の音楽のビジネスモデルと何も状況が変わっていないかのような振る舞いだ。

俺自身は今の状況を楽しんでいるよ。何故なら今までのルールが全て関係なくなっているからさ。心配して保護の方向に動いている人たちや、より欲深くなっている人たちもいるけど、結局露出が減るわけだから、自分たちのキャリアやレーベルに対しては不利に働くと思う。変な感じさ。結局これはゲームなのさ。まぁ、色んな人が色々な考え方を持っているのは分かるけど、先見性を持った考え方をしている人たちもいると思うね。

あなたは自分で茶葉の販売を始めましたね。元々は会場の物販コーナーで紅茶を販売していたことが発端ですが、何故紅茶を販売することを思いついたのですか?

1994年頃にManumissionがスタートして、俺はそこでオールナイトでプレイしていた。当時は奇妙なキャバレー風のラウンジが上にあって、俺はありとあらゆる音楽を他のDJたちと一緒にプレイしていたんだ。それである朝の5時位に、バーの奴が俺に紅茶を淹れてくれた。最高だって思ったよ。Northern Soulのパーティーでもそういう感じがあった。彼らにとってアルコールはあまり重要じゃなかったんだ。重要だったのはダンスするってことだったから、フードもあったし、温かいドリンク類もあった。夜中の2~3時位にバーに行って紅茶が飲めることが分かると、凄く興奮を覚えたんだ。

自分のパーティーをスタートさせたのは1999年だったけど、基本的には他のパーティーで面白いと思えたものを持ち込もうとしたんだ。凄く基本的な部分だよ。例えば照明が好きじゃないから照明を無くすとか、素晴らしい音が欲しいから素晴らしいサウンドシステムを使用するとか、選曲の幅で驚きたいから全ジャンルをかけるとか、踊る時にスペースが欲しいから混み過ぎないようにするとか、クラブで紅茶を飲むのが好きだから紅茶を販売するとかさ。ダンスするのには向いていないようなスペースがあったから、そこは座ってゆっくりできる場所にしたりもしたよ(そうすることで、ダンスフロアで座ったり話したりする人が減る)。

みんな俺が他のパーティーで紅茶を出された時と同じリアクションをしていたから、良かったんだと思う。気に食わない人もいたけど、いずれにせよ意外性という意味でみんなを笑顔にできたわけだから良かった。笑わせるっていうのも大事な要素だった。紅茶の販売はかなり面白いアイディアだったからね。VIPエリアとは真逆のアイディアさ。

ウェブサイトには正しい紅茶の淹れ方の説明がありますが、ティーバッグをスプーンに乗せるというのはどういう意味があるのでしょう?

最高の紅茶の淹れ方は、ティーポットに紅茶の葉をちゃんと入れる方法。次に良いのがティーポットにティーバッグを入れる方法。でも俺を含む殆どの人が、洗い物が面倒だからマグカップにティーバッグを直接入れちゃう。手早い作業だし、みんな無意識にそうしている。そこで俺は、俺と同じ紅茶中毒の友人からこのティースプーンの方法を教えてもらったんだ。この淹れ方以外でやろうとすると、色々な条件に左右されて上手くいったりいかなかったりする。だからしっかりとした淹れ方を自分で1つ持っておくのがいいんだ。誰でも自分なりの淹れ方があるだろうし、そこにすごく拘っている人もいる。でも大事なのは自分の淹れ方があるということなんだ。それが不変性に繋がっていって、良質な紅茶に繋がっていくんだと思う。


最近お気に入りの紅茶の種類は何ですか?

わからないな。最近は… 朝だとイングリッシュブレックファストかアッサムだね。午後だと何でもいいな。その時の気分によるよ。ミントティーだったり緑茶だったり、ジャスミンだったりね。一番好きなレコードを選べって言われるのと同じだよ。毎朝頭の中で違った曲をハミングしながら起きるんだけど、その曲は大抵の場合前日に聴いていたものだから、要するに気分によるんだ。自分がどう感じているのか、そして外の天気がどうかによる。俺にとってお茶はかなり実用的なものさ。自分の気分をどうしたいかで変える。カフェインをちょっと多くしたいのか、それとももっとヘルシーなお茶を飲みたいのかってね。どのレコードを聴こうかなって思うのと一緒さ。そのレコードを聴くってことはそこから何かを得たいわけだろ。まぁでも基本的には濃い目のブラックティーが好きだね。

今はどんな種類のお茶を開発中ですか? 以前チーズ&オニオン味を試したことがあると言っていましたね。

言ったね。まぁそれは完全に俺の想像の話なんだけどね。俺のユーモアの多くは、モンティ・パイソン的な馬鹿馬鹿しいものなんだよ。俺は紅茶会社を経営していて、その紅茶も素晴らしい味だけれど、俺は馬鹿でもあるんだ。別にしかめっ面をしたり、恭しい感じになったりする必要はないんだよ。音楽も一緒さ。面白いことをして、みんなと繋がっていくということなんだ。多くの人は紅茶のビジネスを凄く真面目に捉えていて、長時間に渡るテイスティングをしたりする。別にそれはそれでOKなんだけど、俺のやり方じゃないんだな。紅茶は俺にとっては面白い存在なんだ。真面目になったり、お高くとまったりすることなく、良いものを手に入れることができる世界だからね。

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Translation / Tokuto Denda
Published / Monday, 09 April 2012

Photo credits /
Radio Station - Afk GmbH
Tea tent outside - Adam Rhoades
Tea tent inside - brainflakes


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