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NAMMショー 2012
NAMMショー 2012

RAのMark Straussが、音楽機材市場で最重要且つ最高のイベントのひとつをレポートする。

ツイッターやフェイスブックで機材メーカーをフォローしている人ならば、ここ数週間彼らの動きがせわしかったことは既に知っているかも知れないが、MoogやArturia、UADなどの機材メーカーが一斉にDJやプロデューサー向けの新製品のプレスリリースを発表した。この猛烈とも言えるPR攻勢の理由は簡単だ。NAMMショーが開かれるためだ。

NAMMショーとは「National Association of Music Merchants」の略称で、この団体が毎年1月にカリフォルニア州アナハイムで開催している見本市のこと。ゲーム業界で言えばE3、電気製品系で言えばCESに相当するものだ。NAMMショーでは業界大手が集結し、ここ1年間(大抵の場合数年間)に渡り何を開発してきたのかを披露する。

NAMMショーはミュージシャンやプロデューサーにとっても楽しみな見本市だ。最新機材やトレンドを追っているプロデューサーたちはNAMMショー本番の数週間前からツイッターやブログを絶えずチェックして何が発表されるのかを心待ちにしているし、高額なスタジオ機材の購入を考えている人たちはNAMMショーでの公式発表を待って、将来的にどのようなアップデートが行われるのかをチェックする。またしばらく機材に触れていなかったという人が現在の機材市場がどうなっているのかを体感するにもNAMMショーは最適の場所と言えるだろう。

過去数年はNAMMショーを自分の情報網を使って追っていただけの私だったが、今年はついに現地へ向かい、NAMMショーの素晴らしさを体感することにした。多くの人で溢れ返っているアナハイム・コンベンションセンターに展示されていた数多くのデモ機から、個人的に最も魅力的だった製品をピックアップし、ここにレポートする。2012年に何が登場するのか、是非チェックしてもらいたい。





シンセサイザー

今年のNAMMショーでは面白いシンセサイザーが多数見受けられた。既に発表されていたが、今回でようやく発売日発表目前までこぎつけたJohn BowenのSolaris や、「美の結晶」ではあるが、未だに製品化までは長い道のりが待っているStefan Schmidtの素晴らしいハンドメイドアナログシンセ のような製品がその中で目立っていたが、個人的に最も面白いと思えたシンセサイザーは3社から発表されたハードウェアアナログシンセサイザー3機種で、どれも求めやすい価格帯に収まっている。




Moog Minitaur

MoogはNAMMショー開催前に新製品の発表を行った最初のメーカーだったが、今回正式発表された製品はベースペダルの名機TaurasのデスクトップバージョンMinitaurだ。本製品は8.5” X 5.25” (約22cm X 13.5cm)のコンパクトサイズで、各ノブに1機能ずつアサインしたシンプルなインターフェイスを持つ。Moogの2オシレーターサウンドを手頃な価格で手に入れたい、そしてVoyagerやPhattyシリーズのような複雑なコントロールが気に入らないという人たちがこぞって購入することになるだろう。Moogの発表によると発売時期は今春で、価格は679ドルが予定されている。




Arturia MINIBrute

ArturiaとMoogのマーケティング部門は無意識にタイミング調整を行ったに違いない。というのは、今回Arturiaも小型アナログシンセMINIBruteを発表したからだ。Arturiaは今年に入るまでほぼソフトウェアシンセだけに偏った製品開発を行ってきており、ハードウェアはあくまでソフトウェアのサポートという位置づけだったため、今回の発表は驚きだ。MINIBruteは全ての機能を手動で操作する完全なアナログシンセであり、今までのArturiaの方向性を覆している。更にMetalizer、Ultrasaw、Brute FactorなどArturia独自のパラメーターも組み込まれているが、このような豊富な機能を組み込んだ上で価格が549ドルに押さえてあることは本当に素晴らしい。4月の発売後にあらゆる小売店で目にすることになることは確実だろう。




Waldorf Pulse 2

Waldorfも今回新製品を発表した。90年代後期に名機として知られたPulseの再開発モデルだ。Pulse 2はオリジナルモデルと同じ3オシレーターを内蔵している他、新たにパラフォニックモードやアルペジエーターが搭載され、サイズもBlofeldと同じコンパクトサイズになった。またモジュレーションマトリクス、プリセット音も取り揃えており、3オシレーターシンセの中では最も数多くの機能を持つシンセとなる。残念ながら今回のNAMMショーに登場したプロトタイプ機は動作しなかったので、実際の音を聴くことはできなかったが、今夏に549ユーロで発売されることが予想されている。






レコーディング機材

NAMMショーでは毎年高価なレコーディング機材が発表されるが、今年も例外ではなかった。しかし、その中でマニア以外にもアピールできるような優れた機材が2製品あったので、ここに紹介する。




RME Fireface UCX

RMEのブースにはハイエンドのレコーディング用新製品がいくつか用意されていたが、その中で目を引いた製品がこのUCXオーディオインターフェイスだ。UCXとはRMEが誇るHammerfall Audio Coreの最新版で、RMEの誇るUSB/Firewire接続の超低レイテンシーを更に進化させている他、高機能なDSPエンジンが組み込まれているため、レイテンシー負荷をかけることなくリバーブやコンプレッサーのようなエフェクト類を入力信号に追加することが可能だ。また、優れたモニタリング用コントローラーとして機能するAdvanced Remote Controlと呼ばれるブレイクアウトボックスが標準装備されている。




Universal Audio Apollo

今年のUniversal Audioのブースは新製品のデモンストレーションや、それらを使ったライブレコーディングセッションが行われており、非常に優れたブースとなっていた。しかし、一番優れていたのは最新製品のハイエンドオーディオインターフェイスApolloだ。RMEのUCXと同様、ApolloはDSPエフェクトを内蔵しているが、別次元の出来と言えよう。Universal Audioに慣れ親しんでいる人ならば、彼らのトレードマークはDuoやQuadといったDSPブレイクアウトボックス上で機能するUAD Powered Plug-Inだということは知っているはずだが、Apolloにも同じDSPチップが内蔵されており、DAWで処理する前にエフェクトを使用したり、純粋にプラグインとして使用したりすることが可能だ。今回のブースではApolloを経由してProTools上に生バンドの演奏を特別なミキシング作業抜きでライブレコーディングしていく様子を収めたビデオが流れていたが、素晴らしいサウンドクオリティを誇っていた。




AIAIAI TMA-1 Studio

コペンハーゲンに本社があるデザイン会社AIAIAIの今年のブースは好立地とは言えなかったが、彼らのTMA-1 Studioヘッドフォンは大音量が鳴り響くドラム系ブースを越えて辿り着くだけの価値があった。既発製品TMA-1で披露されたシリアスなミニマルデザインというコンセプトをほぼそのまま踏襲している今回のTMA-1 Studioだが、いくつかの部分で改良されている。その中で最も大きな改良点は、ハウジング部が耳を覆う完全密閉型になったため、TMA-1よりも長時間快適に使用することが可能になっているという点だ。






エフェクター

エフェクターも全価格帯に渡って数多くの新製品が発表された。数の多さで言えば、ギターペダル系エフェクターが一番多いように思えたが、スタジオ用、またはライブ用エフェクターにもいくつか面白い製品を見つけることができた。




Korg Mini Kaoss Pad 2

まずは低価格で、コンパクトサイズの機材から紹介しよう。今回Korgは、Kaoss Padのラインアップに超小型の製品を複数追加することを発表した。その中で最も面白い存在はMini Kaoss Padの改良版、Mini Kaoss Pad 2だ。Kaoss Padシリーズのコンセプトを受け継ぎながら、有機発光ダイオード(OLED)スクリーンの搭載、micro SDカードを使用したサンプルプレイバック機能、内蔵マイク、そして新エフェクトの追加と全ての面において改良が加えられている。サイズも非常に小さく、価格も220ドルと安価に設定されているため、5月の発売後は、多くの人が購入することになるだろう。




KOMA Elektronik BD101 / FT201

ベルリンに住むミュージシャンによって立ち上げられた小企業KOMAによって開発されたBD101FT201 は新しいタイプのエフェクターだ。彼らのような小規模の企業がNAMMショーに出展するのは簡単ではなく、今回はモジュラー系機材を中心に取り扱うBig City Musicのブースに飾られているのを発見した。両エフェクターは共に10個のCV/オーディオ入力端子と1つの赤外線モーションコントローラーを備えており、モジュラー系アナログ機材と組み合わせて使用することが可能だ。またFT201にはVactrolの状態変数型フィルターと10ステップシーケンサーが内蔵されている。既にKOMAの自社サイトでは販売が開始されており、価格はBD101が329ユーロ、FT201が349ユーロとなっている。






MIDI機器

コントローラー系機材で未だにMIDI規格が1人勝ちを収めているのは別に驚くべきことではないが、今年のNAMMショーでもその動向に大きな変化はなかった。宇宙船に組み込まれたMIDIピアノや2つに折れるキーボードが発表され、ショルダーキーボードがやや復活の兆しを見せるなど、奇妙な動きも多少見られたが、全体的にはポータブル用/スタジオ用ともにMIDIコントローラーは例年通りの製品群と言えた。




Akai MAX49

今年のAKAIはiZotopeとのパートナーシップの締結、そしてコンピューターベースのMPCシリーズの新シリーズを発表し、力強いスタートを切った。中でも一番興味をそそられるのは新しいMIDIキーボードMAX49だろう。これは既発のキーボードをリニューアルしたもので、感度が向上した(実際にデモ機を操作したが、その操作性は素晴らしかった)パッドが組み込まれている。しかし、MAX49の非常にユニークな特徴はトリガーとゲートが可能なCV出力を備えていることで、これによってアナログ機材をキーボードと内蔵シーケンサーで操作することが可能になっている。




Keith McMillen QuNeo

SoftStep、そして12ステップフットコントローラーの開発者Keith McMillenは新たにドラムパッドコントローラーQuNeoを発表した。インターフェイスには何も表記されておらず、またパッド、フェーダー、ボタンのレイアウトもスタンダードなため、一見しただけではあまり特別な印象を受けないが、内部には数多くの機能が備わっている。QuNeoの各パッドはベロシティ情報やX-Y位置情報に対応しており、マルチタッチ対応のエンコーダー類は市販されている大半のタイムコード・ヴァイナルよりも高い精度を持っているとされている(デモ機実演者談)。データはドライバ不要のMIDI送信、またはOSCモードに切り替えて他のアプリケーションを介さない直接送信が可能となっている他、全てのコントロール部にはマルチカラーLEDが内蔵されている。そして価格は199ドルとお得だ。






DJ機器

DJ機器の発表が予想されていた全てのメーカーが予想を裏切らずに新製品を発表したが、今年はかなりの数のメーカーがデジタルDJの世界に新規参入し、どのブースを訪れても次から次へとジョグホイール付きのコントローラーが目に飛び込んできた。その中からオモチャ的な製品と中国製のコピー製品を取り除くと、DJ機器の今年のビッグニュースになりそうな優れた製品がいくつか残った。




Numark 4TRAK

今年のNumarkのブースの中に置かれていた新製品の中で目を引いた存在は、Traktor用コントローラーのハイエンドモデル4TRAK だ。LEDリングイルミネーションを備えた高解像度ジョグホイール(3600ティック/回転)、そして高精度の4チャンネルミックスを可能にする14ビットMIDI対応の多数のノブ/ボタンが備わっている。しかし特筆すべきはFX Kommand Consoleと呼ばれる12個のノブだ(写真上部)。この12個のノブを使用すればTraktor内のフィルターやエフェクト類にダイレクトにアクセスすることが可能だ。またサウンドカードを内蔵しており、ラインインプット4系統、RCAターンテーブルインプット2系統、マイクインプット2系統、それにバランスアウトプット1系統とかなりの入出力数を誇る。3月に市場価格1099ドル(メーカー希望小売価格1499ドル)で発売されることが予想されている。




Allen & Heath Xone:DB2 / Xone:K2

Allen & Heathのブースでは、通常のミキサーのラインアップの他に、2つの新製品が登場していた。そのうちの1つ、Xone:DB2に関しては、既に昨年9月に発表されていたため知っている人もいるだろう。これは強力なデジタルエフェクトを内蔵したDB4に内蔵されているチャンネルごとのループ機能を取り除き、エフェクト数を4から2へ減らしたこと(今回の発表ではバスチャンネルへのルーティングが可能になっていた)で低価格を実現させている。K2はNative InstrumentsのTraktor Kontrol 1からインスピレーションを受けた新製品で、同じフォームファクターとサイズになっている。K2とTraktor Kontrol 1との最大の違いはUSB接続のサウンドカードとして単体使用ができるという点で、素晴らしい機能と言えよう。

Words / Mark Strauss
Translation / Tokuto Denda
Published / Tuesday, 31 January 2012


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