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The fight for Osaka
The fight for Osaka

ここ最近行われているクラブへの取り締まりをきっかけに、かつて活気づいていた街が再編を遂げようとしている。

土曜日の深夜、かつてクラバーたちで賑わっていた大阪アメリカ村は、もはやゴーストタウンのように静まりかえっている。最近Twitter等で話題になっているので、ご存知の方も多いかもしれないが、今大阪のクラブシーンが風営法の摘発により危機的状況におかれている。一連の摘発劇が始まったのは2010年12月、アメリカ村にあるClub AzureとDonflex loungeの2店舗が「無許可のままクラブ営業を行い客にダンスをさせた」として摘発され、経営者が風営法違反の容疑で逮捕された。2011年に入っても大阪府警保安課、地元の南警察署、大阪市消防局、および大阪市環境局による立入り検査は続き、2月にはJoule、そして3月にはLunar ClubTriangleが摘発された。その後も定期的に立入り検査や是正指導が行われており、2011年12月現在までで20軒以上のクラブやライブハウスに摘発や厳重注意が入っている。

風俗法によって取り締まりを受けたクラブのひとつJoule
そもそも風営法とはどのような法律なのだろうか?正式名称「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」通称「風営法」または「風俗営業法」は第二次世界大戦後間もない1948年に制定された法律である。敗戦後、欧米文化の流入が盛んになったことで乱れはじめた風紀を正す目的で制定されたこの法律によって、深夜における営業が規制されるようになった。またクラブの原型とも言えるキャバレーやダンスホールが売春行為の温床になっていたことから、これらの営業形態も風営法の対象となったと言われている。当時はダンスも風紀を乱す可能性があるものと見なされていたため、店内でダンスをすること自体も規制されるようになった。

なお、風営法に規定される業態にも様々な種類があり、一般的に「クラブ」と呼ばれるダンスを伴う店を経営するためには、「風俗営業」の中の接待飲食等営業、法2条1項3号「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」の許可を得る必要がある。そしてクラブを営業するために必要な風俗営業の許可を取得するには、人的要件、場所的要件、構造的要件の3つのハードルをクリアしなければならない。風営法に詳しい行政書士の雨堤孝一先生のブログ「風営法のハテナ」によると、1番ハードなのは、3番目の構造的要件だと言う。こちらは「客室の床面積は1室につき66平方メートル以上あり、その客室床面積の5分の1以上がダンスのスペースが必要」、「客室の内部に見通しを妨げる様な設備(1メートルを超える衝立、椅子、テーブル、装飾等)を設けないこと」「客室内の明るさを5ルクス以上にする事」など細かな規定が定められており、許可を得るためにはこれらの条件をクリアしなければいけない。つまり、フロア面積の小さな小箱と言われるクラブは、風営法許可の申請すら出来ないのである。しかし上記の3つを全てクリアしても、ビルのオーナー(不動産の所有者)が風俗営業の承諾をしてくれなければ、申請をすることが出来ないのだ。風俗営業許可を取得したクラブがビルに入ることで他のテナントに迷惑がかかり、不動産としての価値が下がる可能性が高いことから、首を縦に振ってくれないオーナーも多い。また申請をするためには、店内の改装を余儀なくされる店も多く、風営法の許可を得るためにはかなりの時間、費用、そして労力が必要とされる。

しかも風営法の許可を取ると、夜中の12時(地域によっては例外的に午前1時)には店を閉めなくてはいけない。一番客足が増える深夜に営業が出来ないのが最大のネックということで、風営法許可の代わりに24時間アルコールを提供出来る「深夜酒類提供飲食店営業」として申請し、朝まで営業をしているクラブが殆どである。なお、現在の法律では、深夜酒類提供飲食店で踊ること、また時間帯に関係なく風営法の許可を取っていない会場で踊ることは「違法」ではあるが、警察も「特に問題がない限り」は見てみぬ振りをしているというのが現状だ。



取り締まりにより、現在 Studio Partita (名村造船跡地) はダンス関連イベントへのスペース貸し出しを中止してしまった。




では何故今になって大阪、特にアメリカ村を中心にこのような厳しい取締りが行われているのだろうか?3月に摘発されたアメリカ村のLunar Clubの元オーナーであり、現在もDJ/オーガナイザーとして活躍中のShine氏はこう語る。「何でこんな急に、それもアメリカ村限定で?という気持ちは正直あります。ただ警察から理由を聞いて納得せざるを得なかったんですよね。もともと歓楽街として栄えていた東心斎橋と違い、アメリカ村を中心とする西心斎橋は人が住む地域だったそうです。それが服屋の革命が起き、古着屋が出来始め、クラブも増え、そして気がつけば夜の街となった。ここ4、5年で夜の治安が悪くなり、その原因とされてるのがクラブなんです。一部の音楽ジャンル・ムーブメントがまた流行り始め、一晩で何百人、時には何千人もの人が街に集まるようになったことで、店内での喧嘩や、違法薬物の蔓延、それに外で騒ぐ人も増えて来た。クラブも店の中でトラブルが起きた時に、お客を外に出しちゃう事で終わらせようとするんですよね。実際、僕らもそうしてました。そして店の外で喧嘩が続き、最終的に取り返しの着かない事件にまで発展したケースもあるんです。多分それが今回の摘発の一番の理由だと思います。住民からのずっと出ていた苦情が溜まりに溜まって、今回やっと警察が動き出したんじゃないでしょうか。」

また自身のブログではこうも語っている。「(今回の摘発は)アメリカ村のクラブが原因で、被害を被っている人々が存在するからです。僕らがクラブで騒いで踊って遊ぶことで、「被害を受けている人」がいるのです。」また彼によると、警察は以前からクラブに向け注意はしていたという。「昨年10月にアメリカ村のクラブに向けて一斉に警告を発令した後、その2ヶ月後から始まった摘発劇場でした。僕らクラブ経営者がその10月の時点で警察の警告を真摯に受け止めて、風営法の許可申請と、アメ村クラブシーン全体の営業時間の大幅な改正を一斉に仕掛けるべきだったのです。」

事実、2011年1月20日に開催された、大阪市長、大阪府警察本部長、南歓楽街環境浄化推進協議会会長たちによる「ミナミ活性化協議会代表者会議」の報告結果でもアメリカ村のクラブ対策に関して以下のように記されている。「地元の人々は、クラブの深夜の騒音等で迷惑以上に本当に困っている状況であります。また、 去年は、クラブの客同士で喧嘩から発展して、傷害致死事件が発生しています。こうしたクラブ営業については、風営法違反というような状況もありまして、去年12月に2店舗摘発いたしました。こうした違法な営業につきましては、今年も厳しく取り締まっていきたいと思っています。」



「摘発スタートから約1年が経とうとしている今、やっと大阪のクラブシーンが
少しずつ動き始めた。」




では、他のクラブはこの事についてどのように受け止めているのだろうか。アメリカ村で深夜営業を行うクラブやバー、飲食店など約15店舗のオーナーやマネージャーによって結成された組合のA氏によると、今年の4月頃からアメリカ村の住民やビルのオーナーたちとのミーティングを定期的に設けており、地域住民に迷惑を掛けない営業を目指した活動も行っているという。A氏はこう話す。「具体的には、店の周りの掃除、深夜の街のパトロール、店内外のセキュリティー強化、顔写真付きID提示の徹底など行っています。皆さんも遊びにくる時には顔写真付きIDを忘れないようにお願いします。」また今後についてはこう語る。「風営法の許可を取れる店はちゃんと許可を取り、法で定められた午前1時にクローズするということを徹底すべきです。」

この時代遅れとも言える風営法だが、実は今回のような摘発は日本以外の場所でも行われて来ている。クラブカルチャーの発祥の地とも言えるイギリスでは、1994年に「反復するビート(repetitive beats)」を集団で聴くことを規制し、レイヴを禁止するクリミナル・ジャスティス・アクトが成立した。ガラージュやディープハウスで有名なNYでも、ジュリアーニ政権時代には「街の浄化運動」としてマンハッタンにあるナイトクラブが軒並みクローズに追いやられた。またサンフランシスコやLAではカリフォルニアの州法で午前2時から午前6時までの間酒類の販売が禁止されているため、必然的にクラブも2時でクローズする。アルコールの販売を2時でストップし、朝まで営業しているクラブも中にはあるが、ほとんどのクラブは深夜早いうちに営業を終えている。今年の4月にTrentemollerのライブを見にサンフランシスコのクラブに遊びに行ったのだが、23時に会場に到着するとすでにチケットはソールドアウト。門前払いされている人たちが数多くいる中、私たちは日本から遊びに来た事を告げ、なとか中に入れてもらう事に成功したのだが、23時過ぎにも関わらず500人は軽く入るであろうフロアが超満員だったのが非常に印象的だった。サンフランシスコでシーンが確立したように、 日本でも23時にピークを持ってくることも可能ではないだろうか。

昨年3月で閉店してしまったDJ Shineが所属するクラブLunar
最近の大阪では 日曜日の16時頃から23時までのアフタヌーンパーティーが定着しつつある。11月末にはPendulumShackletonDVS1、そしてAOKI takamasa率いるPROGRESSIVE FOrMのショーケースが日曜日の夕方に開催されるという異例のケースもあった。1時や2時頃からクラブに繰り出し、朝まで遊ぶスタイルにすっかり慣れてしまった身体やマインドをいきなりシフトするのは正直難しい。しかし90年代は24時までに終わるクラブも少なくなく、著者自身も当時大阪クラブシーンの先駆けとも言える難波QOOや”ウメクゥ”の愛称で知られるNITECAFE QOOなどで、終電まで踊って帰るという遊び方をしていたのを覚えている。この時間帯に戻すのは時間も忍耐も必要となるだろう。ただ徐々に日曜日の夕方に遊ぶことに抵抗が無くなって来ているように、ピークタイムを早めることはけして不可能ではないのだろうか。

現在オンライン署名サイト「署名TV」では、「風営法におけるクラブ(ナイトクラブ、ダンスクラブ)の取扱の改善を求める署名」と題された署名活動が行われており、すでに2.2万人を超える署名が集まっている。実際、長年風営法の対象であった社交ダンスも、映画「Shall we ダンス?」の大ヒットや愛好家たちによる熱心な署名活動の成果が実り、1998年にダンススクール(一定の資格を持つインストラクターが教授する教室のみ)の風営法適用除外が実現した。なお、風営法改定を求める嘆願書には3万人の署名簿を添えて提出したとのことだが、それ以外にも文部省認可の公益法人日本ボールルームダンス連盟(JBDF)や、ダンスに理解の深い国会議員の組織「ダンススポーツ推進議員連盟」の協力もあって改定が実現したと言われている。一連の薬物騒動や、騒音、喧嘩など、お世辞にも良いイメージが持たれていないクラブが風営法適用除外を求めるには、3万人以上の署名を集めることが必要不可欠だろう。

風営法による取締りは、今や大阪のみならず近隣の京都や、名古屋、福岡にまで飛び火している。過去にも全国各地で風営法違反による摘発は行われて来たが、ここまで長期に渡る摘発は今回が初めてである。大阪での取締りの実績が出来た今、この波に続く警察も続々と出てくるだろう。署名活動も重要だが、今一番必要なのは意識改革。今までの自分たちの行動を振り返り、節度のある遊び方を心がけると共に、「クラブで朝まで踊る」という既成概念に捕われず、新しい「遊び場」を作って行くことが大切なのではないだろうか。

摘発スタートから約1年が経とうとしている今、やっと大阪のクラブシーンが少しずつ動き始めた。先述したアフタヌーンパーティーを筆頭に、レストランにサウンドシステムを持ち込んだホームパーティー的なイベントや、事前に招待状をもらった人だけが入れる招待制パーティー、場所を公開しないシークレットパーティーなど、DJやオーガナイザーたちが試行錯誤を繰り返し、自分たちの作り上げて来たシーンを守ろうと必死に頑張っている。本来クラブ文化はアンダーグラウンドな遊びであり、著者がクラブに行き始めた頃は、インターネットが今ほど普及していなかったということもあり、クラブミュージック専門のレコードショップやパーティーで次のイベントの情報を手に入れることが当たり前だった。中には日にちしか書かれておらず、イベント当日に初めて場所が分かるパーティーも少なく無かった。それがいつしかテレビや映画でクラブが登場することが増え、アンダーグラウンドな存在であったクラブ文化が、オーバーグラウンドな遊びへとシフトしていった。また、DJ機材が進化し、DJブースのあるバーが増えたことでDJを始めたり、パーティーをオーガナイズすることのハードルが低くなったことも事実だ。

今回の風営法の一件により、質の高いDJや革新的なオーガナイザーだけがシーンに残っていくことだろう。 飽和状態となってしまったクラブシーンを一掃するには、ある意味良い機会だったのではないだろうか。けして非合法なことを推奨しようとしている訳ではない。ただ「時代に合わない」という理由で風営法の改定を求めるよりも前に出来ることはまだまだあると信じている。また深夜街で騒ぐ知人がいれば、注意する勇気も必要だ。すべては自分たちの遊び場を自分たちの手で守るために。

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※ご指摘があったため、記事の一部を修正しました


Words / Terumi Tsuji
Published / Wednesday, 18 January 2012

Photo credits /
Header - Kohei Ishikawa
Joule Nightclub - industar
Studio Partita - Karl Baron
Osaka Street - Ayanami_No03


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