|
 |
 |
 |
 |
 |
プロデューサー? DJ? Todd Terje
ノルウェー人アーティスト、RAのMatthis Withと語る。
Todd Terjeは、世界各地でのDJ、エディットワーク、そしてコンスタントなリミックスワークから、ここ5年に渡りエレクトリックミュージックシーンにおいて注目を集めてきた一方、オリジナル作品は殆ど発表されることがなかったアーティストが、ここへ来て変化が訪れている。賞賛を集めた「Ragysh」EPが皮切りとなり、10月以降は本人が新しくスタートさせるレーベルOlsenから続々とTerjeのオリジナル作品が届く予定になっている。RAのMattis WithがTerjeのスタジオを訪れ、レーベル、ノルウェーのシーン、そしてタイトなツアースケジュールとプロダクションワークのバランスの難しさについて話を聞いた。
まずはノルウェー流のDJスタイルを説明してもらえるかな。ひっきりなしにかけるレコードが変わっていくスタイルというか。
君の言う通りだよね。ノルウェーではダイナミックなプレイをして、クラウドを惹きつけて躍らせなきゃいけないんだ。ノルウェーはアルコール販売のルールが厳しくて、ベルリンでの5時間のプレイを2時間に凝縮しなければいけないから、クラブは瞬間的にクレイジーになるんだ。それでDJセットも面白い感じになるんだよ。
君は国外でプレイする時も同じスタイルなのかな?
海外でプレイする時はプレイする場所に対応していかなきゃいけない。僕が初めて国外でプレイしたのは6年ほど前のバーミンガムで、僕はノルウェー流の何でもかかるスタイルを披露するつもりだったから、ミックスできる組み合わせかどうかは無視して、サンバやパンク、オールドスクールディスコまで考えられる全てのレコードを持って行った。僕はノルウェーのNomadenyaやDatteraのような、1曲1曲をとにかくかけ続けていくクラブのバイブを海外に持ち込もうと躍起になってたんだ。でも大失敗に終わった。全くクラウドとコミュニケーションが取れなかったんだ。それで最初はきちんとミックスできるんだということをクラウドに見せながら直線的な流れを作って、フロアをウォームアップしなきゃいけないってことを学んだんだ。それができれば後は好きにプレイできる。僕は失敗からそれを学んだんだ。
どうやって様々な都市に自分を合わせていくの?
最近は幅広いレコードを持って行って、どんな状況にも対応できるようにしているよ。まずはスタンダードなハウスをプレイしてクラウドの状態を見極める。最初の30分は詰まらないと感じるかも知れないけど、僕はそれでクラウドが何を求めているのかわかるんだ。別にクラウドに媚びようってわけじゃないんだけど、一緒に楽しむ相手のことを理解する必要はあるよね。
スタイルに拘っているDJとは意見が違うかも知れないけど、DJは来ている人をエンターテインするのも仕事ってことだよね?
その通りだよ! Pål(Mungolian Jetset/DJ Strangefruit)が以前ラジオで「自分のセットでマドンナをかけることに対して全く抵抗はないよ。マドンナはクールだと思うし、DJは結局のところエンターテイナーなんだしさ」って言ってて、僕はハッとしたんだよね。DJ Strangefruitは僕のヒーローだし、しかもアーティスティックだと思えるDJだから、彼がこういうことを言ったのは衝撃的だった。でもこのアティテュードがノルウェーでの僕のキャリアを助けたかな。もしフロアに誰もいなくて、18人の女の子たちがフロアの隅で「何詰まらない音楽かけてるの?」って顔をしてるなら、先にマドンナをかけて彼女たちを躍らせて、その後で自分の好きな音楽をかけたらいいってことさ。
とにかく盛り上げればいいってこと?
いや、そうじゃないよ。実際Pålも言葉通りを意味したわけじゃないと思うし。僕はDJという役割はエンターテイナーとアーティストの中間だと思ってる。もしエンターテイナーに徹して2曲かけることができれば、自分のセットを好きな方向へ持っていける可能性が凄く大きくなるってこと。最初から内向的な曲をかけ続けていくのではなくてね。
「”Ragysh”をリリースするつもりは
全くなかったんだ」
じゃあ今度はプロデューサーとしてのTodd Terjeについて話してもらおうかな。音楽を作り始めたきっかけは?
全てはコンピュータから始まったんだ。僕の友達がModtrackerっていう音楽ソフトを見せてくれたのが最初かな。そのソフトは4チャンネルしかなくて、インストールしていたPC 386のメモリは1メガバイトだけだった。当時の僕は2 UnlimitedやScooterを聴いてたんだ。だからこのソフトに初めて触れた時に僕が作りたかったのは、彼らのような音楽だったんだ。で、僕はその友達からソフトのコピーをもらって、すぐに”Mastermind”って名前のトラックを作ったんだ。
ははは!
最悪の曲だったね。4チャンネルしかなかったから、最初はキックだけで1チャンネル使おうと思ったんだけど、すぐにトラック数が足りなくなって、ハイハットとキックを同じチャンネルに入れなきゃならなくなった。次のトラックはシンセパッドのサンプルを入れた。僕がソフト上でシンセを弾いてたらすぐにCPUパワーを使い切っちゃってただろうね。そして単音が鳴るベースラインのチャンネルがあったんだけど、リズムに対してずれて鳴るように設定しちゃってた。振り返ってみると凄くプリミティブだったと思うけど、シーケンサーの基本を学ぶことができた。僕はこうやって13歳からシーケンサーに触れてきたから、今は例えばリムショットを鳴らしたいタイミングで鳴らせるし、プログラミングも簡単にできるね。
僕の次にリリースされるトラックは凄くパーカッシブなんだけど、こういった昔の経験が間違いなく僕を助けてくれたよ。僕が音楽にはまったのはリズムからだったし、今後はもっとリズムを重視したトラックを作りたいんだ。僕はProdigyみたいな音楽からはまっていったんだけど、彼らのビートが昔のファンクのサンプルだなんて全然知らなかった。僕は打ち込みだとばかり思っていたから、彼らがそうやって複雑なビートを作っていたことを知って凄く驚いたんだ。それで自分もModtrackerを使って同じことをやろうとしたんだよ。
じゃあ、今後はProdigy的なアプローチも聴けるのかな?
いやいや、Prodigyそのままみたいなトラックはありえないよ。でも4つ打ち以外のトラックはあり得るね。キックを使った面白いアプローチは他にもあるからね。
“Ragysh”に関して面白いストーリーがあるって聞いたんだけど、このトラックがどうやって始まってどういう経緯でリリースされることになったか教えてくれる?
2年前にスタートしたんだ。当時の僕はArgyの”Love Dose”のLucianoリミックスを繰り返し聴いてた。あのトラックを好きだった理由は、トラックを通してキープされているグルーブだった。また、同じ時期にFedde Le Grandの”Put Your Hands Up for Detroit”もリリースされたんだけど、このトラックにも同じようなグルーブが感じられた。1つのリズムパターンで成り立っているシンプルなトラックに凄く興味を持ったんだ。”Love Dose”の方は実際よくかけたしね。東京でBPM105でかけた時があったんだけど、かけた瞬間からパーティーが始まった感じになったのを憶えているよ。あの曲はピッチを-20にすると最高なんだ。
話が長くなったけど、とにかく僕のアイディアはリフ1つで成り立つトラックを作るということだった。凄くシンプルな奴をね。クールなビートがあれば、リフは自然についてくるものなんだ。だからTom Tom Clubと Salsoul Orchestraのサンプルを使って8小節のグルーブを組み上げたんだけど、それを聴き直したのは2年ほど経ってからだった。それである雨の日に、この日は多分他の作業を進めておくべき日だったんだけど、適当にトランシーなシンセを組み込んだんだ。
僕は”Ragysh”みたいなトラックを作る時はあんまり気分が乗らないんだよ。楽しいんだけど、複雑な作業が必要なわけじゃないからね。でもとにかく最後まで終わらせてプレイしてみることにした。プレイしてみるとリアクションは凄く良かった。それでGerd(Janson。Running Back Recordのオーナー)が僕のDJセットを聴いて、「これは何?」って訊いてきた。Gerdは何か聴けるトラックがないかどうか、トラックが完成してるかどうかは関係なくいつも僕に訊いてくるんだ。それで、”Ragysh”を聴いた彼は凄く興味を持ってくれて、リリースしたいと言ってくれた。僕はリリースすることは全く考えてなかったんだけど、彼が凄く熱心に口説くものだから、リリースすることにした。だからGerdがいなければこのトラックは日の目を見ることはなかっただろうね。
たまに2人のTerjeが君の中で戦っていると感じる時があるんだ。1人はDJとしての君、そしてもう1人はプロデューサーとしての君。どうやってこの両者のバランスを取っているのかな?
確かにそうだね。2人の僕が戦っているのは間違いない。でも僕はプロデューサーとしての自分を伸ばしたいと思っているんだ。時間がなくて試せていないけど、やってみたいことが沢山ある。特にリズムに関する新しいアイディアだね。リズムはまだアイディアが出尽くしたわけじゃないんだ。勿論ブロークンビーツやダブステップは新しいリズムと言えるかも知れないけど、僕は興味ないから。僕が次にやりたいことは新しいリズムの探求なんだ。
ただ、簡単なことじゃないよね。スタジオに入ってる時は奇妙で面白いトラックを作るけど、DJをしている時は最小公倍数のトラックをかけて、フロアを作っていかなきゃいけない。奇妙で面白いトラックや、アーティストとしての自分の視点で良い作品だと思えるトラックを作っている時は、それがフロア映えするかどうかというのは一切分からないんだ。たまに自分のこういったトラックを全てかけることができる僕の理想のディスコがあればいいのにって思う時があるよ。でもDJする時はもっとインパクトの強いトラックをかけなきゃいけないっていうことは理解してるよ。
「自分をのめり込ませたり、自分を引き出したり、自分を目覚めさせたりするようなサウンドやグルーブを自分の音楽に詰め込むことは
重要だと思う。」
2人のTerjeがお互いに邪魔をしているって感じる時はある?
今の話がそういう風に聴こえたかも知れないけど、DJとしての自分は、プロデューサーとしての自分がトラックを仕上げにかかっている時に凄く助けになるんだ。トラックはシンプルであればあるほど上手く機能するという観点で判断をする時にね。今僕は凄く細かいトラックを作っていて、もう本当に緻密な作業を繰り返しているんだけど、この作業の段階でDJとしての自分をもっと反映させれば、作業はもっと早くに終わるだろうね。トラックのアレンジは無限にできちゃうから、フロアのことを考えるのはこの点で非常に便利なんだ。でも、今はプロデューサーとしての自分にもっと自由を与えて色々試している段階だね。
2人のTerjeを完全に分けようとは思わない?
考えたことがないとは言えないけど、自分のアルバムでは2人の自分をミックスさせたいね。ビートをミックスして、ブレイクを入れて、ビートがまた戻ってくるというだけじゃないTodd Terjeを見せたいと思ってるし、これはそんなに難しいことじゃないから。リスナーがオープンな気持ちで聴いてくれる可能性もあるから、1つの名義で発表するのが大事かなと感じているんだ。リスナーが今まで聴いたことがなかったような音楽、例えばWeather Reportとか聴き始めるきっかけになるかもしれないしね。僕がジャズフュージョンを作ってるって意味じゃないから誤解しないで欲しいけど、僕のトラックにWeather Reportやちょっと変わったノルウェーのジャズの影響があるとして、”Eurodans”を好きな子がそのトラックを気に入ったとしたら、その子はWeather Reportを聴き始めるかもしれないよね。もしそういう結果が生まれたら、自分は何かを成し遂げたんだってかなりしっかりと実感できるだろうな。
DJとしてのもう1つの役割、教育者としてのTodd Terjeだね。
その通り。僕はいつも自分が面白いと思う音楽や、ルーツを届けようとしているんだ。決して大っぴらにやるわけじゃないけど。僕は長年に渡ってWally Badarouの音楽に影響を受けているんだ。彼の音楽は間違いなくダンスフロアで機能する音楽だと思う。あとはJam & Spoonの”Stella”だね。僕の音楽にはこの曲のコードがいくつか使われているよ。僕は自分を色々な方向に向けることで、リスナーのみんながそれを気に入るかどうかをチェックしているんだ。これはある種の教育かもしれないよね。勿論”Stella”はビッグヒットだったからみんな知っていると思うけど。要するに、昔のレコードをまた聴いたり、聴いたことのないレコードを聴いたりしてみようってことなんだ。

ジャズの話が出たけど、君は自分の全作品の中で、Bjørn Torskeのリミックスが特にお気に入りみたいだね。
そうなんだ。あのトラックがこの先僕がやりたい方向なんだよ。
自分のやりたい方向というのは、具体的にはどんな感じ?
ちょっと変わったドラムトラックってところかな。感覚的にはジャジーでスペーシーな感じ。Jon EbersonがMoose Looseと最初にやったレコードみたいで、ジャズファンクすぎない音楽ってところかな。
自分の音楽にユーモアを入れることは重要?
自分をのめり込ませたり、自分を引き出したり、自分を目覚めさせたりするようなサウンドやグルーブを自分の音楽に詰め込むことは重要だと思う。それがフロアで機能することに繋がるかはわからないけど、僕の内面には意味のあることなんだ。でもそうじゃない時もある。何度も言うようだけど、持つバイブや流れを壊すことなく、凄く実験的なリズムをダンスミュージックに持ち込むことはできると思うんだ。さっき言ったBjørn Torskeのリミックスはプレイすると凄く目立つんだけど、ミニマルなトラックの間にうまくはまるんだよ。
今後の予定について教えてくれる?
Joakim HauglanとSmalltown Supersoundと一緒にOlsenっていうレーベルを始めるよ。音楽、アートワーク、レコードのプレスという意味では僕のレーベルだけど、Smalltown Supersoundの力を借りていくことになる。最初のリリースは僕の作品で、「It’s the Arps」EPというタイトルだ。このタイトルは僕の大好きなMonty Pysonのスケッチ(寸劇)からきてるんだけど、誰も知らないみたい。イギリス人ですらわかってないみたいなんだ! このEPの全ての音はARP2600の音だよ。
他の機材を使って同じことをやろうっていうアイディアもある。ここ最近は機材を沢山買っていて、全部の機材ごとにリリースしてもいいんじゃないかって思ってるよ。ARPはほとんど全てのサウンドを作れるんだ。でもARPにさえ限界がある。ハイピッチなサウンドの作成という面でね。だから他の機材で同じことをしようとしても、ARPほど良いものにはならないかも知れないな。「ドラムマシンとTB303だけ」みたいに機材で考えちゃうと、ただ限界について考えるだけになっちゃうから。
そういう機材を限定するという方法は自分をクリエイティブにしてくれるの?
そうだね。だってどうやってキックの音を作ればいいんだろうってところから始まるからね。最近はサンプルパックやサウンドが沢山あるから、沢山の人がメモリースティックに300個のキックのサウンドを入れて持ち歩いているような状況だよね。だから機材を限定すると、どこからトラックを作り始めたらいいのか分かりづらくなるんだ。このEPはARPの持つ限界を探っていくっていうことに尽きるんだけど、その作業の途中でいつもだったら絶対に出会うことがなかったような独特のサウンドに出会うことができたよ。
|
|
|
|
|
|
Published / Monday, 26 September 2011
Photo credits /
All except DJing - Christian Lycke
|
|
|
|
|
 |
 |

Features
|
|
|