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Label of the month: Fluid Audio
UK発、全体を包み込む至福のハンドクラフトワーク
「アンビエント・エクスペリメンタル音楽が言葉を超える」という、どこかで誰かが言った古いことわざがある。誤解して欲しくないが、これはたわごとである。ナンバーズゲームのようだ。このような繊細ではかない音楽を聴く人は少なく、したがってそれについて紙媒体やネット上で書くライターも少ない。大数の法則から見ると、「言葉を超える」のは「Lester Bangsがこんなくだらないことに割く時間がない」場合だ。
しかしインターネットが普及するにつれ、ニッチな音楽分野の探求も可能になってきている。過去2年間の間、僕はアンビエント、エクスペリメンタル、ニュークラシカルの分野の新しい音楽を見つけるためにFluid Radioをチェックし続けた。すでに僕が知っていて好きなアーティストたちや、全く知らないアーティストたちのインタビューやミックス、映画などに、アルバムやギグのレビューを組み合わせたすばらしいサイトだ。
いまでは8人のライターがこのサイトのために執筆しているが、全体を指揮しているのは元ロンドン在住で、現在はブリストルの郊外に住んでいるDan Crossleyだ。子どものころ、サウンドエンジニアで言えによくレコードを持って帰ってきていた父に影響された音楽の世界にのめり込んで行った彼。そのレコードのことはほとんど覚えていないそうだが、インスピレーションを受け、後に初期のデトロイト・エレクトロのコレクションなどのレコードのバイヤーになっている。
聴いたことのない音楽に柔軟に対応する力を持つCrossleyは、すぐにロンドンのボウ地区にある海賊ラジオ局で働くようになった。そこはエクスペリメンタル・ドラムンベースエクスペリメンタルに特化したラジオ局で、いまの彼が扱っている音楽からはかなりかけ離れているモノだ。しかし、本当に好きな音楽の宣伝のためにどのような手段も使うというアイデアは、2009年のFluid Audioレーベルの立ち上げに結びついた。Fluid Radioがすでにカバーしていたタイプの音楽を専門としたレーベルだ。
エレクトロ音楽の世界でよくある話で、このレーベルは偶然が重なって始まった。まだレーベルを見つけられていない本当にたくさんの音楽素材が彼らのところに送られてきていたのだ。しかしFluid Audioは、ただ単に発表の場を与えるだけではないという点で他のレーベルと異なっている。Crossleyと彼のレーベルパートナーであるJessは、各リリースを特別扱いし、よく200枚限定販売のパーソナルなレコードにするからだ。
「新しいレコードを出す準備をしているときは毎回、精神的に追い込むためにこれが最後のリリースになるんだって誓うんだ。あと僕らはよく早朝に縫ったり、ノリを使ったり、折る作業をしているよ。『Our Fearful Symmetry』の "Hummingbird"をリリースしたとき、ブリストルの港にある古いお店を見つけて、そこに昔の写真のコレクションがたくさなるすてきな部屋を見つけたんだ。ホコリかかった箱の中を2時間見た後、面白い昔のポラロイドのスライドを見つけたんだ。そしてためらうことなく購入した。以前、僕らのところからレコード出したやつが、『このアルバムを聴きながら、60年前ぐらい昔を振り返ると神秘的な感じがする』と以前言っていたんだけど、まさにそれなんだ。オーディオとビジュアルが特別な形でつながると、リスナーに宝物のようなレコードを渡すことができる」とCrossleyは語る。
Fluid Audioの扱う音楽の多くはアンビエント音楽の感情面を重視している。抽象的で無機質な音は少ない。同レーベルがリリースした最初のレコードのタイトルは 『Hope』と名付けられたコンピレーションだった。Guy Andrews が同レーベルでのレコードリリースのために始めたプロジェクトThe Moving Dawn Orchestraだ。「『Hope』を制作している真っ最中に、四季をテーマにしたEPのコンセプトをDanがEメールで送ってきた。彼はドラムを全く使わないモノをほしがっていて、各トラックがだいたい8分ぐらいないといけなかった。彼は自分がどういうモノが欲しいかしっかりと分かっていたけど、クリエイティブ面では完全に僕の自由にさせてくれた。ジャケットのアートワークに関しては、いつも彼のセンスを信じていて、『決まったら教えて』みたいな感じなんだ。彼はそのジャケットのために1ヵ月ぐら旅に出たんだ。手作りのCDケースから写真、バッジ、ステッカーなど、レコードに含まれるすべてを文字通り仕切ってくれた。プロモ用のコピーが家に届くまで、なにもチェックしていなかったんだけど、本当にびっくりしたよ」とAndrewsは言う。
家族的な雰囲気を持つレーベルは多いが、Fluid Audioのアーティストたちはみんな、Crossleyとの仕事について本当にたくさん語ってくれる。同レーベルが最初の数リリースで成し遂げることができた音楽とアートの共存的な関係がよく見えてくる。「レコードをリリースする際にいくつかの問題があったが、Fluid Audioは完璧に対処してくれた。ほとんどのレーベルは時間と予算の節約のためにありきたりなジャケットデザインをするけど、彼らは決してそういうことはしなかったし、話題にも上がらなかった。いつもどうやったら最もかっこよく見えるかだけに焦点を当てていたんだ。疲れたら休憩も取っていたし、ストレスや焦りみたいなものもなかった。延々と続くプロセスだったけれど、目的意識がはっきりとしていた」とCharles SageとTim Diagramの共同プロジェクトHussienは言う。
目的達成への決意の強さがFluid Audioの魅力だ。漠然とした
ウェブサイト
からCrossleyの制作する美しいアートワークまで、すべてがある美学に基づい行われている。パーソナルに見えて、感じられて、Twitterが人気を博すデジタル世界にはない手作りのアート作品は希有の存在だ。
その結果、Fluid Audioは絶賛を浴びるが、Resident Advisorのようなウェブサイトと同じ様にバランスを取るのが難しくなってきている。「できるだけFluid AudioとFluid Radioのラジオステーションを引き離すようにしている。このレーベルをこのウェブサイト上で宣伝し過ぎないためにね。もちろん、新しいリリースを発表したり、ときどき所属アーティストのことを書いたりもするけど、全体的にこのウェブサイト上ではFluid Audioの存在をできるだけ目立たせたくない」とCrossleyは語る。
しかし、多くの人にとって、これら2つは引き離すことのできない存在だ。それでもいい。「Fluid Audioがなぜそんなに特別かというと、ウェブサイトやレーベル、ラジオステーションといったサポートしてくれる環境が整っているからなんだ。音楽のプレスやレーベルの多くは排他的だけど、Fluid AudioとFluid Radioはみんなをサポートしてくれる。すべてのリリースに耳を通してくれるし、もちろんひいきしているアーティストもいると思うけど、新人にも平等の機会が与えられているんだ。あと、エクスペリメンタル音楽を扱うところはたくさんあるけど、このレーベルほど熱心ではない。知っている人ならみんな好きなレーベルさ」とSage とDiagramは語る。
Fluid Audio Mix
Download: RA Label of the Month 1103 Mix: Fluid Audio
(right click + save target as)
Filesize: 77.9 MB
Length: 00:32:26
Words /
Todd L. Burns
Translation /
Hidetaka Furuya
Published / Monday, 28 March 2011
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