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Breaking through: Midland
Breaking through: Midland

リーズ出身の素朴なDJ/プロデューサーは、テンポやジャンルといったことをあまり重要視することなく、ただ求めるがままに。RAのKristan J CarlyがMidlandについて語る。

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昨今、ハウス、テクノ、ダブステップはこれまでになく強い結びつきを見せているとは言うものの、Midlandほど本当の意味で偏りのない作品をリリースしているプロデューサーはそうはいない。彼の音楽は、Washed Out、Stateless、そしてCaribouのリミックスにまで及び、ジャンルはハウス、ガラージ、そしてもっと低音域のものにまでまたがる(時には、これらが同じEPに収録されていることもある)。そしてSashaやBrain といったDJ陣にプレイされ、賞賛を受けている。
作品例を挙げていくと全体の統一感はなくなってくるのだが、あることがはっきりした。Midlandが未だに、彼をとりまくエレクトロニック・ワールドを深く探検しているとうことが。彼には予定表も、絶対に守らなくてはならない信条もない。ただ、自分がいいと思う音楽を作っているだけなのだ。「曲を作るときは、何の計画も立てないんだ。『Sashaが僕の曲をかけてるから、ちょっと彼が好きそうな曲でも作ってみるか』なんていうふうに考えるのは簡単だろうけどね。」彼の古くからの友達であり、Hessle Audioの主宰であるRamadanmanとシェアしている家でソファに腰掛けながら、彼は説明する。「でも、僕はそういうふうには考えないんだ。僕にとって音楽を作るっていうのは、その曲がカッコよく聴こえるところに辿り着くっていう行為なんだ。何かモノになってるような感じがしたとしても、胸に迫ってくる、あの、鳥肌が立つような感じがなければ、行くべきところに辿り着いたとは言えないんだよね。それから、時間を置くことがすごく重要なんだ。曲を送る前にしばらく寝かせることで、違う状況下で聴くことが出来るから。時間が経ってもまだいい感じに聴こえるか、っていうことをね。」

Midlandが過去に様々な道を辿ってきたことを聞けば、その結果彼がこうした広範囲におよぶ音楽的観点を持っていることは驚きではない。子供時代に東アフリカ(父親がエンジニアとして働いていたため)に住んでいた彼は、夜通しでサファリ砂漠へ旅に出かけるときのサウンドトラックとして、AbbaやThe Beatles、ELO、Beach Boysや、そのほか「心に訴えかける強いエモーショナルな要素があって、きちんとした骨組みのある音楽。僕はそういうものが好きなんだ」という類のものを聴いて育った。しかし、13歳ごろにイギリスの寄宿学校に戻るとすぐに、Led Zeppelinからブライトン・ビーチのFatboy Slimに至るまで、あらゆるアーティストの音楽を聴くようになった。彼の若く感受性の強い耳は、兄弟(Agiusの場合、5人である)からの受け売りのProdigyやハウスやテクノのテープなどから一連の影響を受けた。

こうしたテープで聴いた音楽の中で、大学へ行くために寄宿学校を離れたAgiusの注目を引いたのはドラムンベースだった。そうして彼は、Apt Pupil(1998年のアメリカ映画のタイトルで、"出来の良い生徒"という意味。邦題『ゴールデンボーイ』)というあだ名で呼ばれながらその後の12ヶ月を過ごしたが、Frequency FMのレギュラーラジオ番組と「気に入っている5曲くらいの作品たち」によって、リーズの音楽シーンでなんとか自分の地位を確立することに成功した。

だが、じっとしていることのできないMidlandは、またすぐに別の分岐点に差しかかった。彼は大学を1年間休学していたのだが、その間に「はっきり言うと、一ヶ月間音楽から距離を取るために」、iPodを家に置いてスペイン横断旅行に出た。旅から戻るとすぐに、それまでのドラムンベース熱は冷め、また別な音楽領域の中をさまよい歩いた。「単に、4つ打ちで、BPM140以下のものを何でも聴いてたんだ。Moderatのアルバムは、この変換期にすごく重要な意味を持ってたよ。それから僕はRamadanmanとつるむようになって(彼の仲間内の家で、2009年の夏の終わりごろに)、一緒に『Your Words Matter』を作ったんだ。僕はあの曲の速度がいつでも好きで...」と言ってから、彼はひと呼吸置いた。「なんていうか、ただ、すごくしっくりくるんだよね。」Will Saulがこの曲を気に入り、2010年4月に彼のレーベルであるAus からリリースされた。
この非常に重要なトラックのタイトルは、8年間学校の室内合唱団で歌っていたMidlandにとっては大きな意味を持つものである。「再構成された合唱音楽を歌っているとき、8つの違うパートの声は全部紡ぎ合わされて、お互いを補完し合うんだ。無伴奏でテナーのパートを歌ってると、もう...、ただ、すっっごくディープで、その感じが大好きなんだよ」白熱してこう語った後、他のアーティストのための楽曲制作から映画音楽制作に至るまで、彼の中で温めているほかのたくさんのプロジェクトについての話に移った。「ほかの人のクリエイティブなヴィジョンを人生に取り込もうとしてみるのが好きなんだ」


しかし、今のところ彼は、自分自身のための音楽を作っている。その結果、耳にすることのできる彼の楽曲にはすべて(チルウェイヴのヴァイブ、ガラージのスキップ、もしくはハウスのソウル)多少のきめの粗さが伴っている。「サウンドを探しているとき、ちょっとパチパチいう感じの音に引かれるんだ。ときどき、サウンドカードからテープ・デッキに録音して、それからまた別のテープ・デッキに録音してコンピューターに戻したりするんだけど、そうすると音がぼやけた感じになるんだ。こうすることで、聴いてる人の脳内だとか、本人でも気づいていない記憶内のある部分に入り込もうとトライしてるんだよ。






もしかしたら、隣の部屋に暮らす男、Ramadanmanは何をやっているんだろうと不思議に思う人がいるかも知れないが、その気持ちはMidlandも同じようである。「David(Ramadanman)みたいなヤツと一緒に住んでたら、しまいには、『僕は精一杯努力してるんだろうか?十分に探求してるんだろうか?』なんて気持ちになっちゃうんだけど、それからこう気づくのさ。彼には彼なりのやり方があるんだって。僕は、彼とは違った僕自身のことをするのに満足してるし、自分の好きなことをやってるってことが何より大事なことなんだよ。なんて言うと、ロマンチックな感じに聞こえるだろ?でも、明るい時代ばかりじゃなかったよ。大学で歴史の単位を取得し終わった後、決意を迫られたんだ。「現実的な社会でちゃんとした仕事に就くか、地下の世界で音楽の仕事に就く(可能性に賭ける)か?それで、音楽に集中するために安定した仕事には就かないことにしたんだけど、僕は(リーズにあるクラブの)Wireで朝の5時まで夜勤をこなして、なんかちょっとゾンビみたいな感じで暮らしてた。年中、『(曲を)作らなきゃ、作らなきゃ』って思い続けてたら、疲れ果てちゃってね。一日中制作にかかりきりになってて、それから夜通しクラブに働きに行ってたんだ。僕はもう参っちゃってて、朝の3時にトイレ掃除をしたり、飲んだくれの後始末をしてるようなときなんかは、なんでこんなことをしてるのか、自分に思い出させなきゃならなかったもんだよ。」

彼の質素なベッドルーム・スタジオ(質の良いモニターと、借り物のマイク、Paul Woolfordから譲り受けたミディコントローラー、Reasonとマックが完備されている)でMidlandの今気に入っている曲や作りかけの曲を一緒に聴いていた時、彼の音楽には根本的にストーリー性が欠けているようであると、再び話題の中心となった。「僕のインスピレーションは、突飛で、最新のものなんだよ。」彼は、Sei Es Drumのあるレコードのビートを次第にしきりと指で刻みながら、こう思案した。「作っている作品に完全に夢中になっちゃって、どういうものが出来上がるかは分からないんだ。要は、乗れるグルーヴを探すってことなんだよ。もし、部屋で音楽を作りながら自分がダンスしてたら、みんながフロアでその曲を聴いて踊ってくれるってことが分かるのさ。」

Translation / Rieko Matsui
Published / Friday, 28 January 2011

Photo credits /
Header and headshot - Dom Agius
Midland street view - David Kennedy


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