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Label of the month: Fachwerk
Label of the month: Fachwerk

レーベルが散乱するベルリンにおいて、3人の友人同士で成り立つこのテクノ開拓部隊は、堅実にリリースを続けているレーベルのひとつとして得に際立った存在だ。

Mike Dehnert は、私の前で首を横に降っている。ついさっきRoman Linddauが、オフレコ希望のある話をしていたところだ。私は今この瞬間、Fachwerk Records(以下Fachwerk)の主要人物である3人全員と同じ場にいることを嬉しく思っている。3人の会話を目の当たりにすれば、ベルリン随一の正体不明くと言われる、このテクノ・レーベルを特徴付けることはそう難しくない。
Dehnertは典型的なドイツのテクノ・プロデューサーである。ほとんど感情を表すことはない。Sascha Rydellは温厚な人柄で、あまり人に強い印象を与えるタイプではないが、完璧なジェントルマンだ。一方、Lindauは冗談好きである。彼は英語が母国語ではないため、出来ればインタビュー中の彼の台詞は引用したくないと思っている。ジャーナリストが陥りがちな失態、つまり20年近くにおよぶ友情で育まれたこのグループのダイナミズムを間違った解釈で伝えてしまう、という事態を避けたいからでもある。

とは言っても、子供時代からの友人同士である3人がここ数年間で成し遂げた業績を見れば、そんな心配はほとんど必要なくなるであろう。2007年以来、この3人組は、良質なテクノが絶えず溢れている都市ベルリンにおいて最も着実な成長を続けたレーベルを築き上げた。Fachwerkの音楽の特徴について、多くの人が「決まりきった手法」といった言葉で表現するのを耳にしたが、私はむしろそれを「一貫性」と呼びたい。レーベルのリリースするものが全て、(控えめに言っても)一流のエレクトロニック・ミュージックだと、人はすぐに飽き飽きしてしまう。しかし、一流のエレクトロニック・ミュージックを生み出すのは、見かけほど簡単なことではない。



Fachwerk



Dehnert、Lindau、Rydellの3人は、Fachwerkの設立前から、どんなものが彼らの意に沿うかを検証するため、色々なアイデアやサウンドを大まかに描きながら音楽を作っていた。Dehnertは、Clone Basement Series、Echocord Colour、Deeply Rooted Houseといったレーベルからリリースしており、3人の中ではテクノ業界において最も名が知られている。しかしそれは単に、今のところフルタイムで音楽に携わっているのが彼だけだからである。LindauとRydellは共に、もっと長い時間音楽に携ってみたい(また違うレーベルからリリースしてみたい)と感じている。ただ、現状ではまだ、彼らの納得のいく方法でやっていくには、仕事を辞めるのに十分な稼ぎが保証できていないというわけだ。

3人にとって、テクノはいつでも情熱を注ぐ最たるものだったが、それだけに夢中になっていたわけではなかった。はじめに彼らを結びつけたものはむしろ、純粋な友情だった。80年代のベルリンで育ったことについてDehnertに尋ねると、彼はこう説明してくれた。「当時、音楽シーンはあまり確立されてなかった。テクノが世の中に受け入れられるには、まだ早すぎたんだ。はじめに友達関係があって、それから僕らは同じような興味だったり、ものの見方を築いていったんだ。スポーツとか、ちょっとの間グラフィティにもハマっていたよ。」が、間もなくして、クラブシーンが面白くなってくる。Walfischや E-Werk、WMF、Bunker、そしてもちろんTresorといったクラブたちである。

当時のクラブを特別なものにしたものは何だったのかと尋ねると、Dehnertはこう答えた「クラブは荒れていたよ。」
「まだ準備が整ってなかった。いつでも建設途中で、未完成のままでね。クラブは、ベルリンの東西統一の後と同じ状態だったんだ。」そしてまた当時のベルリンのクラブは、デトロイトやシカゴ出身のアメリカのDJたち(つまり、昔とは異なるスタイルを持つDJたち)に定期的に会える場所でもあった。たとえば、Claude Youngは当時のベルリンのクラブシーンにかなりのインパクトを与えたし、Blake BaxterとArmand Van Heldenも同様だった。

そんなころ、Dehnertら3人は時折パーティーを開いた。しかしそれは単に、彼らの好きなレコードをかけるための場であって、楽しみ以上の何ものでもなかった。DJをするだけでは十分ではないとDehnertが実感したのは、1999年ごろのことだった。「それで僕は、たくさんのホワイト・レーベルをリリースし始めたんだ。有名になることにはそんなに関心がなくてね。ただ、自分を表現したかっただけなんだ。」と彼は語った。それらの作品のうちのいくつかは、Mumu Labelからのリリースとして聴くことができる。このほかにも、今となっては到底探し切れない程たくさんのリリースがあるはずだ。

当時と変わらず、Dehnertの仕事量は並外れている。LindauとRydellはと言えば、それほどでもない。彼らの作品が日の目を見る前に、スタジオ内での実験的作業に5年以上が費やされた。Rydellが言った。「RomanはひとつのEPを作るのに10年かかるからな!(笑)」これに答えLindauは、「僕がすべき唯一のことは、締め切りを設けることだな。僕は自分に対して、いつまでに終わらせるように!って言ってあげなきゃいけないんだよ。」これを受けて、私がDehnertに「Romanには締め切りが必要なのかな?」と問いかければ、Dehnertは答える。
「ああ。たくさんの締め切りが必要だよ。」



Fachwerk




しかし、その長い待ち時間にも意義があった。Lindauは、お世辞にも十分な数のリリース実績があるとは言えないにも関わらず、Len FakiとBen KlockによるBerghainの過去2枚のミックスCDに彼の楽曲が収録されている。Lindauのテクノのトラックには、Len FakiとBen Klock、いずれのタイプのセットにもきちんとハマるような、独特のハウスのバウンス感が染み込んでいる。さらに、Lindauは常に何か面白いことを試みている。得てして、その音楽がリスナーに対してどう作用するかということばかりに重点を置きがちなシーンにおいて、彼のトラックにはいつも、斬新なサウンドやアイデアやメロディーが見られる。ごく普通のダブテクノ("Fluide")やガチャガチャしたインダストリアルテクノ("Can't Fix")でさえ、彼の手にかかればちょっと風変わりなものに聴こえる。Ryndellについても同じことが言える。2009年にリリースしたLindauとのスプリット盤に収録されている"Unhasty"は、不安を煽るような、予測の出来ないダブテクノで、聴いていると、最初の段階でこの曲を素晴らしいものにしているところへ連れ込まれそうになる。"Cette Nuitãのステレオ音場の真ん中はまるでその中をトラックでドライブできそうな程、とてもがらんどうな感じがする。

このような共同運営レーベルの多くでは決め事は全員一致でなされるものだが、この3人について言えば、意見が食い違うことはほとんどない。3人のテクノのテイストは非常に似通っているので、レーベルに合うものがあれば全員がただそうと分かるのだ。だから正確に言えば、このレーベルには、「レーベルの音」と言えるようなものない。"Fachwerk"とはドイツ語で、建築用語で「木骨組みの建物」という意味の言葉である。Dehnertはこう説明する。「基本の構造だけがあって、その基本構造の間には自由な空間がある場所のことなんだ。レーベルにも同じことが言えると思ってる。基本はテクノとハウスで、その間は自由なんだ。」

この自由度により、レーベルのサウンドには幅広い多様性がもたらされるわけだが、ベルリンでの彼らの本拠地であるTresorやBerghain、Arenaといったクラブからは、彼らのDJに見られるダーク感がしばしば求められるようになっていった。DehnertはTresorのレジデントDJである。Fachwerkは数ヶ月前のArenaでの開催に引き続き、今月また、有名なテクノのクラブでレーベル・ナイトを開催する。TresorとBerghainの違いについて質問すると、Dehnertはまるで以前にも同じ質問を受けたことがあるかのように即答した。「それは住所だよ。」Fachwerkはしばしば、Berghain向きのサウンドだというふうに言われることもある。Berghainは3人が愛するクラブである。しかし、彼らはこれだけは皆に知っておいてもらいたいと願っている。彼らはほかの誰かに属するものではなく、彼ら自身の宇宙があるのだということを。

こうした思いの一環として、3人は今年、Fachwerkをこれまでになく色々な場面に引っぱり出すつもりでいる。LindauとRydellのDJの今後のツアー日程を見ると、そのすべてが"Fachwerk レーベルナイト"と題されており、Fachwerkが来る3ヶ月の間にミュンヘン、オスロ、コペンハーゲン、スイスに旅することがわかる。今年後半にはDehnertもまた、今年前半に"Delsin"からリリース予定の最新のフル・レングスアルバムのリリースツアーの一環として、ツアーを行う予定だ。

Delsinからリリースする理由を聞くと、逆にDehnertから「なぜいけないんだい?」と聞かれてしまった。我々の会話の中で、何度も繰り返されるテーマである。Fachwerkでは、物事はただ自然な流れで展開していくようだ。壮大なプランというものはなく、予定表もない。ミッションもない。"MD2"からのリリースが150枚しか世に送り出されなかった理由についてDehnertに尋ねると、はっきりとした回答はなかった。ただ、「フォーマットは問題じゃないんだ。」と答えただけだった。「問題なのは、音楽性なんだ。」と。



Fachwerk

Fachwerk Mix
今月のレーベル・ショウケースは、Fachwerkの3人の主要人物のうちのひとり、Sascha Rydellによるmixだ。Rydellは、このレーベルが提供しうる、テクノにおけるすべての異なる手法を関連づけ、ゆっくりとmixをスタートしている。そして、Fachwerkの最も高揚感のある作品のひとつ、Roman Lindauの「Sonnerie」で締めくくっている。

Download: RA Label of the Month 1101 Mix: Fachwerk
(right click + save target as)
Filesize: 76.8 MB
Length: 01:04:00


Tracklist
01. Intro
02. Sascha Rydell - Unreleased
03. Roman Lindau - Raumgestaltung
04. Mike Dehnert - Umlaut 2
05. Mike Dehnert - MD
06. Sascha Rydell - A Plus Tard
07. Mike Dehnert - Unreleased
08. Roman Lindau - Simplicity
09. Mike Dehnert - The March
10. Sascha Rydell - Unreleased
11. Mike Dehnert - Unreleased
12. Roman Lindau - Contraste EP
13. Mike Dehnert - Unreleased
14. Mike Dehnert - Take Me To
15. Roman Lindau - Contraste EP
16. Mike Dehnert - Unreleased
17. Roman Lindau - Sonnerie


Translation / Rieko Matsui
Published / Tuesday, 04 January 2011


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